色褪せぬ恋
「そういやさ、あんた姉さんと喧嘩した事あんの?」
「何よ藪から棒に」
「いっつもイチャイチャしてくるから居心地悪いのよ」
「婚活うまくいってないのね。可哀想に」
「うるさいわね。で、どうなのよ」
「あった……と思うけど、どうだったかしら?」
「……ないのか。つまんないの」
「いや、あったわ!」
「どっちよ! はやく言いなさいよ!」
「忘れてただけじゃないの。うるさいわね」
「ごめん。で、なんで喧嘩したのよ」
「あれは、確か前世でまだお互いをそんなに分かってなかった頃」
「何、そんなに前なの?」
「文句あるなら言わないわよ」
「ごめんって」
「軽いわね。まあ、いいわ。あの頃はあたしって遊んでたのもあって、ロージャン様と結婚する前に別れた男がしつこく言い寄って来たの」
「なんかそれ聞いたような」
「あんたの話とちょっと似てるからじゃない? 今ならストーカーで捕まえてもらえそうだけど、前世じゃそんな法律なんてなかったからしばらくロージャン様のところに身を潜めてたの」
「なるほどストーカーか。言われたらなんか納得したわ。え、じゃあ。前世で同棲してたの?!」
「そうよ。といっても数ヶ月だけね。その時にちょっとだけよ」
「ふーん。あ、お姉さん、ジンライムちょうだい」
「何よ。聞かないつもりなの? あんたから聞いたくせに」
「聞くけど、飲みたいのよ。それにあんたたちの喧嘩って言ったら多分、たまごに何かけるかとかそんなささいな事なんじゃないの?」
「そんなささいな事でも一緒に暮らすんだったら気になるのよ。それもそうね。お姉さん、あたしにも同じの」
「あんたも飲むんじゃない」
「いいじゃないの。でも、何だっけ……ああ、ささいな事じゃなかったのよ。ロージャン様がシャツに口紅付けて来たの」
「嘘!?」
「そんなに驚かないでよ。ほら、お姉さんびっくりしちゃってるじゃないの。いいから座って黙って聞いてなさい」
「いや、だって、まさか、あの堅物の兄さんが……浮気?」
「だとあたしも思って軽く探り入れたんだけど、ロージャン様ったらとぼけてんのか素なのか何ともなさそうな顔してくるのよ。だから、あたしはこの人に本当に愛されてるのか、分かんなくなっちゃってね。あ、お姉さん同じのおかわり」
「ちょっと気になるところで止めないでよ」
「いいじゃない。ほら、あんたも空っぽよ。何か頼んだら?」
「あ、ええ、お姉さん、私も同じの」
「それで、いじけちゃって。ロージャン様のところ出て行こうとしてね。出て行く時に運悪くロージャン様と出会っちゃって出て行く出て行かないの大喧嘩になっちゃって」
「へぇ。その口紅なんだったの? 誰かがあんたと兄さんがくっつくの嫌がってわざと付けたとか?」
「……なんで分かるのよ。嫌みな女ね」
「たまたま当たっただけなのにひどい言いようね……あんたの名前で飲み食いしてやろうかしら」
「あら、そうだったの。ごめんなさい。だから、やめて?」
「いたい、いたい! 肩、肩離してよ!」
「あら、ごめんなさい。つい、うっかり」
「うっかりじゃないわよ! あんた自分が男だって事忘れてんの?!」
「……」
「いたっ! 殴ったわね!」
「いいこと、次それ言うなら殴るだけじゃすまさないわよ!」
「はい、すみません」
「分かればよろしい。フフ それにしてもあの時のロージャン様は見ものだったわ」
「そうなの?」
「ええ、身に覚えのない事で怒られるわ、口紅付けた奴がロージャン様の政敵の手下だったからそこから大騒ぎでね」
「ん? え、今、サラッと凄い事言わなかった?」
「そう? 気のせいじゃない? あの頃なら、ままある事だったでしょ」
「いや、早々なかったから! 何、あんたたちの恋から大事件に発展してんのよ」
「だからかもね。ロージャン様に今も惹かれる訳」
「何いい話風にまとめてんのよ。大騒ぎの内容詳しく教えなさいよ」
「やあよ。もうちょっと余韻に浸らせてよ」
「中途半端に言われたら気になって仕方ないでしょうが」
「もう、嫌だわ。あんたと居たらいつまでも余韻に浸れないわ。お姉さん、お会計。あたし帰ってロージャン様とあの頃の思い出話するから邪魔しに来ないでね」




