危険な香り
「ちょっと聞いてよ。シュネーったらあたしにケルヴィン様の相手させるのよ! 疲れちゃったわ」
「え?! 雅志、わたしという人がありながらあんな男と一晩中楽しんだっていうの? 酷い……」
「違うわ! 誤解よ! ただ、シュネーの馬鹿がうっかりあたしのアドレス教えたって言うから……」
「……何? この茶番」
「あ、シュネー! 先に飲んでるわよ」
「……姉さん、それはいいんだけど。雅志、この間の事まだ怒ってんの? 奢ったら許してくれるって言うから奢ったのに!」
「別にあんたに怒ってはないわよ。ただ、ケルヴィン様が意外としつこくて……本当にあんたの事分かってないのよね?」
「うん。でなかったら南、南ってノロケ言わないでしょ」
「それ、実は分かってて言ってたとかはないの?」
「ロージャン様、どういう事?」
「覚えてるか反応を見ていた可能性だってあるじゃない?」
「ちょっと! あんた普通の反応してたわよね! 顔は!? 引きつってなかった!?」
「いや。休憩の度に南、南言われてたら私じゃなくても誰だって引きつるわよ。一緒に着いて来てた新人さんはあれだけ元カノにお熱じゃって辞めちゃったわよ」
「ちょっと、今時失恋したからって辞めるまでするの!! バッカじゃないの?!……じゃあ、ケルヴィン様がって線は薄いのかしら??」
「シュネーの隣に引っ越して来たのは? 偶然?」
「偶然じゃなくちゃ怖いわよ」
「私もそれはちょっと無理。それに私だって気付いてるなら今の会社の方とか、休みの日とかもっとぐいぐい来るんじゃない? 忘れ物取りに行くまでそんなの全くなかったし」
「でも、仕事決まってからすぐに引っ越しってケルヴィン様面倒臭くなかったのかしらね?」
「知らないわよ」
「でも、この子の隣が空いてるかなんてすぐに分かる訳ないから隣が空くのを待ってたって事は?」
「いや、待って! だとしたら私家までつけられてたって事!? ストーカーじゃないの!! というか、仕事終わったら雅志と飲みに行ったりしてたのに?」
「ねえ、雅志と付き合ってるって思い込んで、でも、シュネーの事諦めきれなくて隣に越して来たとか」
「やだ。なにそれ怖い。というか、雅志と付き合うとかないわ」
「そっか、つまらないわね雅志」
「そうね。あたしだってあんたと付き合うだなんてあり得ないわ。吐き気がしちゃう」
「ほら、雅志には姉さんだっているんだし。……って待ちなさいよ。吐き気するような見た目してないわよ!」
「うるさいわね。そういう意味じゃないわよ。あ、でも、そういや、あたしあんたが仕事辞めてすぐにさ、前使ってた店でケルヴィン様見たじゃん。で、向こうがあたしら見てた時あったじゃない。そんとき恋人だと思われたとかは?」
「あの時って姉さんいた?」
「多分居なかったはずよ」
「居たら殴りに行ってたと思うし。今世のあいつの顔も知らないわ」
「なるほど……んで、あたしたちがどっかで付き合ってないって分かったからアタックしてきたと。あんたどっかでボロ出したとかしてないの」
「してないよ!」
「本当に? 元同僚とかに合コン行こうとか誘われたりとか、新しい会社にいい人居ないか聞かれたりとかしてたのを聞かれたとかはないの?」
「忘れ物取りに行っただけだし、そんな話したかな?」
「じゃあ、ちょっと探り入れてみる?」
「……私はパス。関わりたくない」
「わたしは気になるかな。もしまだシュネーにまとわりつくつもりなら徹底的にいびり倒してやる」
「姉さん」
「じゃあ、ロージャン様も気になってるようだしあたしも気になるから探り入れるわ」
「……私にも結果だけ教えて」
「やっぱり気になるんじゃない!」
「ストーカーだったらどうすんのよ! 気にならない方がおかしいわよ!!」
「それもそうね。ストーカーかどうかだけ教えるわ」
「わたしには途中経過もお願いするわ」
「お姉さん、スティンガーちょうだい!」
「あら、じゃあ、あたしにも。ロージャン様は?」
「一応もらっとこうかな」
「じゃあ、スティンガー三人前」




