機知
「はぁ……」
「どうしたのため息なんかついて」
「今日さ、前の職場に行ったのよ」
「何しに?」
「忘れ物が見つかったとかで」
「そんなの郵送でもさせればいいじゃない」
「私もそう思ったんだけど、あっちの方に行く用事があったからつい行っちゃったのよ」
「それでため息つくなんて馬鹿じゃない。行くって言ったのなら自業自得でしょ」
「そうなんだけどさ、いざ、行ってからあいつがいる事思い出しちゃったのよ」
「ほんと馬鹿ね」
「……言い返せないのがムカつく」
「で、会ったの?」
「会ったの! 着いた時は居なかったからラッキー♪ って思いながら中入ってさっさと帰ろうとしたら、帰り際に奴が来て……今度飲みに行きませんか言われたわ」
「それで、どうしたの? まさか約束したの?」
「連絡先聞かれたからあんたのアドレス教えといたわ」
「おい」
「連絡あったらごめんね」
「ごめんねじゃねえよ」
「男に戻るぐらい嫌だった? でも、私もあいつに教えたくなかったし、さすがに姉さんの教える訳にはいかないから」
「……そこは褒めてあげる。でも、スマホ忘れたとかバッテリー切れたとか言い訳はいくらでもあったと思うわ! ああ、もう! 今日はあんたの奢りだからね!!」
「え、まあ、仕方ないか」
「お姉さん、ブロードウェイサーストと何にしようかしら? オススメある? 軟骨入りベーコン? 美味しそうね。じゃあ、それ厚切りで」
「お姉さん私にも同じの!」
「ちょっと真似しないでよ」
「いいじゃない。あ、私は薄切りで」
「……仕方のない子ね。あたしにも薄切りの方ちょうだいよ。それから、ブルスケッタとホタテとエビのマリネと桃のコンポートお願いするわ」
「ダイエットはどうしたのよ?」
「他人のお金で飲み食い出来るんですものダイエットなんて二の次よ。文句あるならまだ注文するけど?」
「いいえ、ありません。その代わり奴から何か連絡あれば任せます」
「あたしが二度と連絡取りたくないようにすればいいんでしょ? 任せといて。うんとキツい奴かましてやるから」
「……なんか心配になってきたけど、お任せするわ。ベーコンおいしい」
「本当においしいわね。大丈夫よ。あんたのイメージは崩さないように冷たくあしらってあげるから。あんたは何も心配せずにのんきにしてなさい」




