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仙境異聞 霞  作者: 神楽坂 幻駆郎
第1.5話:妖檄舎、引っ越し騒動記
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14.乙女鉄拳

「だから、霞ちゃんは、何でこの子達を甘やかすの!」


「甘やかしているんじゃありません、保護しているんです!」


「ユキのお人形は、ユキのいう事を聞かなきゃダメなのに! かすみちゃんが……お父さんが甘やかすから、みんな不良になっちゃったじゃない!」


「だから、この子たちは人形じゃなくて、シロさんが攫って来た人間なんですって! シロさんによって無理やり連れて来られた、可哀想な子達なんですよ!」


「嘘! シロはそんなことしないもん! みんなユキのために……ユキのために集まってくれた、優しい子達なんだもん!」


「だから、それはユキちゃんの主観で! 客観的に見たら誘拐なんですって!」


「シロ! シロも何か言って! ユキ、間違ってる? ユキが悪いの? ユキが悪者なの? ねえ、答えて、シロ!」


「おいお前! ユキに楯突くと承知しないぞ!」


「承知しないならどうだっていうんですか! こんな事をして……一番反省すべきはシロさんなんですからね!」


「うるさい! 人形がこれ以上逆らうな!」


「人形じゃありません! アタシは人間です!」


「嘘を吐くな! お前はどう見たって、僕の作った人形と同じじゃないか!」


「全ッ全、違いますよ! 一緒にしないで下さい!」


「なんだ、コレ……」


襖を開けると、飛び込んで見えたのは侃々諤々の三者三様。

霧子は呆れ返り、頭を掻きながら、口論を見守る。


「お姉! 来てくれたんですか!」


空間の狭間に乗り込んできた霧子達を見つけ、霞の表情がパッと明るくなる。


「霞……姉ちゃん訳が分からん、何が起こっているのか、掻い摘んで説明してくれ」

「このシロさんが、子供の霊魂を鼠と入れ替えて、人形に押し込めていたんです。この子、ユキちゃんの遊び相手にするために!」


霞の言葉を聞き、霧子はため息を漏らした。


「なるほど、犬神か……関東じゃ珍しいわね」


吹絵が呟く。


「なんだお前ら、お前らもユキを苛めに来たのか!」


シロは異様を躍らせ、二人の前に立ちはだかる。


「お前がシロか……人形、人形と、うちの妹を罵ってくれたようだな」


霧子の口調に不穏当な意思が籠る。


「人形を人形と言って何が悪い、黙って追い出されていれば良かったものを……ユキを苛めるなら、ただでは済まさないぞ!」


猛るシロを無視して、霧子は霞を見やる。


「で、お前は何をしている?」

「ですから、二人を説得してですね、事件の解決を……」


真剣な表情で、訴え出る妹。


「で、それは何年かかる……」


姉は、その言葉を溜息と共に一蹴した。


「分かりません……」


霧子の問いに、霞はしゅんとなって俯く。


「まあいい、お前はこう言うの苦手そうだしな……姉ちゃんが手本を見せてやるから、下がって見ていろ」


霧子はそう言って、シロの前に立ちはだかった。

革手袋を嵌めた拳を組んで、ポキポキと指を鳴らす。


「なんだお前は? 逆らうなら痛い目に……ぐ!」


睨みを利かすシロの腹部に、霧子は無言で鉄拳を叩き込んだ。

腹部を押さえ、シロは後ずさる。


「犬神としては幼い方だな……鼠を喰って妖力を付けたつもりが、汚染されちまったか……」


シロの頭部を掴み、無理矢理顔を上げさせる霧子。

顔面にさらに拳を叩き込む。


「ぐ! ぐふ! お、お前!」


拳をもろに喰らい、床を転がる犬神。


「シロ……!」


ユキが叫ぶ。

その身体を後ろから抱きとめ、霞が制止する。


「手を出しては駄目……あれはお姉の必殺モード、乙女鉄拳! ……お姉、本気で怒ってる」


霞の声を受けて、霧子がゆらりと立ちはだかる。


「だが、人だけは喰わず、人も殺さずにここまで来た……それは、セーフだ」


再びシロの頭部を掴み、片手で引きずり起こす霧子。


「……だからな、弔ってやる」


凶悪な視線が、シロを飲み込む。


「お、お前、なにを……!」


戦慄するシロの顔面を、霧子の無数の拳が捉え、その全身に深々とめり込んだ。


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