13.蚊帳の外
霞がシロと接触していたころ、霧子と吹絵は屋敷の門前に戻り、屋内の見取り図を作成し、対策を練り始めていた。
「これが屋敷のフィールドマップだ……で、私等が鼠に襲われた部屋はここ……霞が飛び込んだのはここだ」
「嘘でしょ……」
「ああ、物理空間がない……おそらく本命は、ここに潜んでいる」
霧子が指さした空間、そこは廊下に通じており、部屋の空間がない。
しかし霞は確実に飛び込み、姿を消した。
「霞ちゃんも、そこにいるのね?」
「ああ、これは直感だが、霞は無事だと思う」
霧子が苦い顔をしながら、苛立ちを押さえて爪を噛む。
「根拠は?」
「鼠の襲い方だ。追い出すだけで十分、殺すような動きをしなかった」
「そう言えば……」
「殺すのなら、もっと夜が更けて、屋敷内で人間が寝静まった時に襲うのが普通だとは思わないか?」
霧子の分析は、思いの外、冷静だ。
「それをしないところを見ても、現状維持を続けるのが目的だと?」
吹絵が息を呑む。
「社長……この案件、根が深いぞ……」
そう言いかけて、霧子の全身がビクンと戦慄した。
「!」
「どうしたの、霧子?」
「霞が動いた……あの馬鹿、アレをやる気だ」
そう言って、霧子は自らの額を押さえる。
「え、アレって?」
無茶な展開に戸惑う吹絵。
霧子はお構いなしに、言葉を続ける。
「アレはアレだ……稲荷大社で見せた、あいつの必殺技みたいなもんだ」
吹絵にはまだ事態が呑み込めない。
「とにかく霞がアレをやるなら、こうしちゃおれん……再突入する!」
「え、ちょっと霧子、今出たばかりじゃない! 小鉄君たちを待って作戦を練るんじゃないの?」
「状況が変わった、吹絵も来い!」
「霧子!」
両手袋をギリリと締めると、条件反射的に屋敷に突入する霧子。
吹絵も刀を携え、戸惑いつつもその後を追った。
霧子と吹絵は、あっという間に件の襖まで再突入を図る。
『霞、早まるな……今、姉ちゃんが行くから!』
心の中で念じ、襖を開け放つ。
そこに広がる光景……それは、お飯事の修羅場だった。




