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仙境異聞 霞  作者: 神楽坂 幻駆郎
第1.5話:妖檄舎、引っ越し騒動記
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12.ユキとシロ

「おい!」


謎の空間に転がり込んだ霞の背後から、重圧的な声が掛けられる。


「?」

「駄目じゃないか、人形が勝手に外に出たら」


霞が振り向く間もなく、その気配が霞の後ろ襟を掴み、持ち上げた。


「どうせお前たちは逃げられないんだ、大人しく僕の言う事を聞け」


 そう言いながら、謎の気配は霞を部屋の奥に運んでいく。


「お前、泣かないんだな……怖くないのか?」

「はい、申し訳ありませんが、さっぱり」


運ばれながら、呟く霞。


「いい度胸だ、お前ならユキの良い玩具になるかもしれない……」

「分かりました、ご一緒しましょう?」


霞は成り行きに任せ、ホイホイ運ばれていく。

運ばれたその先には、6歳ほどの、線の細い、白髪の少女が待っていた。


「ユキ……お人形を連れて来たよ……今度は大丈夫、泣かない奴だから……」

「シロ……?」


 謎の気配を察知した少女が顔を上げ、霞の方に振り返る。


「ほら、ユキに挨拶しろ」


 謎の気配が、霞の頭を掴み、土下座させようと、押さえ付ける。

 霞は敢て、その暴行に従い、頭を下げた。


「初めまして、仙道 霞です。あなたは……ユキちゃん?」

「うん! わたし、ユキ、よろしくね! ……シロ、怖い人たちは?」


ユキと呼ばれた少女が屈託ない笑みを浮かべる。


「大丈夫、僕が追い払った」


シロと呼ばれた気配の主が恭しく頭を下げる。


「シロ……ありがとう、大好き!」


そんなシロの頭を、ユキは優しく撫でた。


「あの……ユキちゃんは、ずっとここにいるんですか?」


 霞の問いかけに、ユキは首を傾げる。


「あたりまえじゃない! だって、ここはユキの家だもん!」


 屈託のないユキの笑顔に、霞は困惑する。


「ここはユキだけの家だ、他の奴らは邪魔……だから僕が排除する」


シロが呟く……まるで、呪詛のように。


「シロはとっても強くて、優しいんだよ? ユキの願いを、何でも叶えてくれるの」


 そんなシロに寄り添い、無邪気な笑顔をみせるユキ。

 霞はその笑顔の明るさに、より残酷な影を感じた。


「あそぼ、かすみちゃん! ユキ、おままごとがしたい! ユキがママ、かすみちゃんがパパね? 子供は……シロ、古い人形を持ってきて!」

「でも、あいつらは……」


 主の命令を聞いて、シロが逡巡する。


「早くして!」


シロの態度に苛ついたのか、ユキが語気を荒げる。


「わかったよ、ユキ……」


 シロは呟きながら部屋の戸棚を開けると、数体のコケシを取り出した。

 そのコケシの異様さに、霞は息を呑む。


「う、う、ママ、ママぁ……」

「お家に帰りたいよぉ……」

「怖いよぉ……助けて……」


 コケシたちは、うわ言の様に唸り声をあげ、助けを求めていた。


 霞が見た病院の子供たち……その魂が此処にあると、霞は確信した。


「この子達、いつもこの調子で、全然ユキのいう事を聞いてくれないの……だから、ママとパパで、おしおきしましょう!」


 無邪気さ故の、残酷な笑みを浮かべるユキ。


「ダメだよ、ユキちゃん! そんなことしちゃ!」


 霞が、咄嗟に叫んだ。


「なんで? ユキのお人形だよ?」


 ユキは心底不思議そうに首を傾げる。


「それは人形なんかじゃない、生きている人間の霊魂だよ! こんな事を、命を弄ぶような事をしてはダメだよ!」


霞が必死に叫ぶ。


「かすみちゃん……泣かないのは好きだけど、ちょっとなまいき……シロ!」


 ユキの語気に狂気が宿る。

シロはユキの言うがまま、霞に襲い掛かる。


「ユキに逆らったな……生意気な人形には、身体で分からせてやる!」


 その一撃を、間一髪で躱す霞。


「あなたがユキちゃんを甘やかすから! ユキちゃんはとっくの昔に、もう!」


 霞が叫ぶ。


「うるさい……うるさい!」


荒れ狂うシロ、霞は冷静な体捌きで攻撃を躱す。


「こんなの、良くないですよ!」


 霞の怒号が、屋敷全体を震わせた。


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