9.埋める白骨
霧子の蹴り砕いた雨戸の残骸がパタンと倒れ、床に落ちて埃を舞い上げる。
屋内に光が差し込み、埃がキラキラと輝く。
強引なアプローチに、何らアクションを起こすわけでもなく佇む邸内。
「吹絵、夜叉丸は持っているな?」
霧子は屋敷の奥を見つめたまま、振り返らずに問う。
「ええ、持参しているけど」
吹絵が答える。
「掃討戦だ……怪しいモノは斬れ、私も撃つ」
「わ、分かったわ……」
「霞は天井裏へ登れ、後は任せる!」
「ラジャー!」
「霧子……この屋敷、電気が通っているぞ」
小鉄が一階奥の厨房の壁面に配電盤を見つける。
「あ、本当だ……上げてみるか」
霧子が配電盤のブレーカーを上げる。
すると、あれほど暗かったすべての部屋に電球が灯り、屋内は急激に明るくなった。
「あれ? ここってば、100年来の廃墟じゃなかたっけか?」
「何度も買主が付いて、その度リフォームをしたんだろう……」
霧子の疑問に、小鉄が答える。
「小鉄、この屋敷の素性を調べられるか?」
「登記簿が残っていれば可能だ」
霧子の問いに、小鉄は冷静に答える。
「頼む、調べてくれ」
「分かった、気安めだが札を置いていく……出張君2号を借りるぞ」
小鉄はそう言うと軽自動車に乗り込み、助手席のドアを開ける。
「ジローも来い、お前ほど此処に不向きな人材もいまい」
「わかった」
小鉄の言葉を素直に聞いて、二郎はその巨漢を軽自動車の助手席に押し込める。
「発進!」
タイヤを軋ませ、現場を去って行く軽自動車。
「あいつら、なんだかんだで良いコンビだよなー」
後ろ姿を見送り、霧子はニヤリと笑う。
その時だ、天井裏から霞の悲鳴が聞こえたのは。
「ぎゃー!」
「どうした!」
妹の悲鳴を聞き、霧子が押し入れから天井裏に顔を出す。
「骨が……骨が大漁……ホネホネロック、ホネロックですよ!」
「これは……」
白骨を前に、ビビりまくる妹。
姉が見た物、それは天井裏に散乱し、さらに堆積した小動物の白骨死体だ。
「霞、ビビってないで、それ全部集めて降りて来い」
霧子がそう言って、風呂敷を投げて寄こす。
霞は及び腰だ。
「だ、大丈夫なんでしょうか? これ!」
「ああ? 何がだよ」
霧子が問う。
「だってお姉! 酋長の太鼓で踊り出すかも……」
霞は心底怯えきって、白骨を前に硬直していた。
「ないない、安心して採集してこい」
「わ、分かりました……」
霞はおずおずと、白骨を採集し始める。
「いや、アタシもね? 別に死ぬほど怖いって訳じゃないんですよ……ただ、あの妙にサイケデリックな恐竜や骸骨が心にグサリと刺さっていて、そこに子門正人さんの歌唱力が脅しに拍車をかけて……以来、何とも苦手なんですよねー、ホネ……」
「後でジローに動画見せてもらえ、今見たら何て事ないから」
「そんなもんですかねー……」
そう呟きながら、霞は恐る々々白骨をつまんでは風呂敷に包むと、背中に背負って広間に降り立つ。
『こいつはこいつで、いろんなトラウマを抱えているんだな……』
妹のぎこちない仕草を見て、霧子は短く、心配気な溜息を吐いた。




