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仙境異聞 霞  作者: 神楽坂 幻駆郎
第1.5話:妖檄舎、引っ越し騒動記
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7.狂う子供

後ろで目を回す菊を慮る亊なく、霧子が操縦する「出張君1号」が、タイヤを軋ませながら市立中央病院の救急搬送口に到着する。

そこでは既に、海堂二郎を筆頭に、病院スタッフのほぼ全員が出迎えていた。


「仙道さん! 妖檄舎の方々ですよね? 海堂さんから話は聞いています、早くこちらへ!」


病室に案内された二人の見た物。


それは、革のベルトでベッドに縛り付けられ、身動き一つ許されない状況で固定された、児童たちの姿だった。


「どうですか……市内で同様の児童錯乱が急増しています、最初は普通病棟に収容していたのですが、その……患者が極めて凶暴で、看護師に危害を加えるので……やむなく拘束衣を着せ、ベッドに固定しているんです」


ベルトで固定されても尚、奇怪な悲鳴を上げながら悶え、暴れる子供たち。


霧子が、静かに舌打ちする。


「やってくれたな……菊!」

「分かってる。今、診るよ……」


 霧子が呼ぶより早く、菊は診察に掛かっていた。

 その様子を、心配げに見守る医師たち。

 菊は、深刻な面持ちで、口を開いた。


「この子達には人間とは違う、獣の霊魂が入ってるね……何かは分からないけど」


 菊の表情は険しい。


「元の子供の霊魂は?」


霧子が問う。


「感じない、完全に入れ替わっているよ。ここには、無い……」


菊の答えに、霧子の表情が一層険しくなる。


「目的は、子供の霊魂か……」


怒りに満ちた全身から、闘気が立ち昇る。


「とりあえず、子供たちは眠らせるよ……これ以上暴れたら、自分で自分を壊しちゃうからね……でも、長くは持たない、かな」


菊が冷静に、子供たちに針治療を施して行く。


「……霞!」

「はい、お姉!」


霧子の呼び声を待っていたかのように、霞が病室の窓から飛び込んできた。


「子供たちに憑いた霊魂から、元を辿れるか?」


霧子に言われ、霞が瞳を閉じ、子供たちの匂いを嗅ぐ。


「どれどれ……うん、匂いますね……大丈夫、これなら探せます!」

「頼む。私は吹絵たちと、二郎の言う宿屋を調べてみる……菊はこのまま、子供たちを診ていてくれ」


「任せて、霧ちゃん」

「ヤルッツェ・ブラッキン!」


 菊は神妙な面持ちで頷き、霞はにっこり笑って敬礼すると、再び窓から飛び出していった。


「あの、今の子供は……」


 医師の一人が、おずおずと訊ねる。


「私の最も頼れる相棒、最愛の妹さ……まあ、多少ズレてはいるけどな」


 窓の外を見つめたまま、霧子は少し優しい表情で自嘲して見せた。



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