7.狂う子供
後ろで目を回す菊を慮る亊なく、霧子が操縦する「出張君1号」が、タイヤを軋ませながら市立中央病院の救急搬送口に到着する。
そこでは既に、海堂二郎を筆頭に、病院スタッフのほぼ全員が出迎えていた。
「仙道さん! 妖檄舎の方々ですよね? 海堂さんから話は聞いています、早くこちらへ!」
病室に案内された二人の見た物。
それは、革のベルトでベッドに縛り付けられ、身動き一つ許されない状況で固定された、児童たちの姿だった。
「どうですか……市内で同様の児童錯乱が急増しています、最初は普通病棟に収容していたのですが、その……患者が極めて凶暴で、看護師に危害を加えるので……やむなく拘束衣を着せ、ベッドに固定しているんです」
ベルトで固定されても尚、奇怪な悲鳴を上げながら悶え、暴れる子供たち。
霧子が、静かに舌打ちする。
「やってくれたな……菊!」
「分かってる。今、診るよ……」
霧子が呼ぶより早く、菊は診察に掛かっていた。
その様子を、心配げに見守る医師たち。
菊は、深刻な面持ちで、口を開いた。
「この子達には人間とは違う、獣の霊魂が入ってるね……何かは分からないけど」
菊の表情は険しい。
「元の子供の霊魂は?」
霧子が問う。
「感じない、完全に入れ替わっているよ。ここには、無い……」
菊の答えに、霧子の表情が一層険しくなる。
「目的は、子供の霊魂か……」
怒りに満ちた全身から、闘気が立ち昇る。
「とりあえず、子供たちは眠らせるよ……これ以上暴れたら、自分で自分を壊しちゃうからね……でも、長くは持たない、かな」
菊が冷静に、子供たちに針治療を施して行く。
「……霞!」
「はい、お姉!」
霧子の呼び声を待っていたかのように、霞が病室の窓から飛び込んできた。
「子供たちに憑いた霊魂から、元を辿れるか?」
霧子に言われ、霞が瞳を閉じ、子供たちの匂いを嗅ぐ。
「どれどれ……うん、匂いますね……大丈夫、これなら探せます!」
「頼む。私は吹絵たちと、二郎の言う宿屋を調べてみる……菊はこのまま、子供たちを診ていてくれ」
「任せて、霧ちゃん」
「ヤルッツェ・ブラッキン!」
菊は神妙な面持ちで頷き、霞はにっこり笑って敬礼すると、再び窓から飛び出していった。
「あの、今の子供は……」
医師の一人が、おずおずと訊ねる。
「私の最も頼れる相棒、最愛の妹さ……まあ、多少ズレてはいるけどな」
窓の外を見つめたまま、霧子は少し優しい表情で自嘲して見せた。




