4.起こる事件
「なあ仙道……その銃、どうなってるんだ?」
目の前で繰り広げられたイリュージョンを理解できず、鷲尾が訊ねる。
「んー? 実は私にも、良く分からんのよ」
腕を組み、首をひねる霧子。
アタマの上に、?マークが何個も浮かぶ。
それを見た鷲尾の顔は、見る間に不機嫌になっていった。
「嘘だよ……ほら、これ。この手袋が、銃の本体」
霧子はそう言って左右の手袋を脱ぐと、鷲尾に投げて寄こす。
受け取った鷲尾は、そのあまりの重さに驚く。
「で、両掌のこれ……これが肝心」
次いで、霧子は両の掌を開いて見せる。
その中心には、琥珀の様な輝きを放つ、小さな結晶が埋め込まれていた。
「これは眷珠と言ってな? 私の炉神・雷鳥が結晶化したものだ。この眷珠が銃の構造を記憶していて、手袋に仕込んだ霊鋼を変形させてな? 銃の形態を作り上げるんだよ。ちなみに弾は私の魂を使った霊銃弾だから、装填形式に関係なく、魂が続く限り無尽蔵に撃つことが出来る」
「無尽蔵か……」
鷲尾が息を呑み、額に汗を浮かべる。
「おまけに、一度握った銃はどんな形にもビルドできる、拳銃や狙撃銃は勿論、マシンガンや対戦車ライフルまで、携行武器なら思いのままだ……便利だろう?」
霧子はさも自慢げに、ニヤリと笑う。
「まあ、魂の消費が激しいから、詠唱銃で済むなら、それで済ませたいと言うのが本音だ。だから、弾は定期的に供給してくれよ? 作るより速いし、何しろ安くて数が整う!」
霧子の軽い頼みに、鷲尾の反応は鈍い。
「基本は孤立無援で頼む、と言っただろう……」
ぶっきらぼうに答え、そっぽを向く。
「必要な資材は出来る限り供給する、とも言ったぜ?」
すかさず言い返す霧子。
「……どちらにせよ、早く次の住居を定めるんだな。住所不定では、物資の送り様もない」
応じたとも応じないとも取れる曖昧な返答をして、鷲尾はその場を濁す。
「あ、それなら大丈夫。今、ジローが探してるから。あいつヒキニートだけど、そういうのは得意なんだ」
霧子は、あっけらかんと言い放つ。
言い方はひどいが、同僚を全面的に信頼している証だ。
そうこう言わないうち、まさに絶妙のタイミングで、霧子のスマホが鳴った。
発信者は、海堂二郎。
何かが起こる。
霧子はそう確信して、着信ボタンをタップした。




