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仙境異聞 霞  作者: 神楽坂 幻駆郎
第一話:遠い山から来た少女
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ACT7 再会:2

 数刻後、霧子と霞は、何かを探して瓦礫の山を彷徨っていた。

 探し物は、戦いの途中で放り出した二挺のMAC11と、霞の小太刀だ。

 小太刀の方は、早々に霞が見つけだした。

 しかし、霧子のMAC11、その一挺が見つからない。

 二人は瓦礫を手当たり次第にひっくり返し、小機関銃を探す。

「どうだー、あったかー?」

「駄目でーす、全然見つかりませーん!」

 霧子の問いかけに、瓦礫の隙間を注視したままで、霞が答える。

「何とかして見つけてくれよー、誰かに拾われ悪用でもされたら、ライセンスが吹っ飛ぶからなー」

 霧子がそう言いながら、瓦礫をひっくり返す。

「どうして紐づけしなかったんですかー? 私のはとっくに見つけたのにー!」

「急ごしらえだったからなー、暇がなかったんだよー!」

 霞の問いに、ばつが悪そうな口調で霧子が返す。

「もう、ズボラなお姉さんですねぇ……」

 霞は、大きく背中を反らせ、腰を左右に回しながら、溜息をついた。

 捜索はしばらく続き、瓦礫をひっくり返した霞が、何かを見つける。

「あー!」

「あったか!」

「いえ、そうじゃなくて……お姉、変なの見つけちゃいました……」

 困惑した表情で、足元を指さす。

 それは、病棟の最上階で二人を案内した、老紳士だった。

「お前は、多島修三!」

「呆れましたね、生きていたんですか」

 ボロボロの衣服で、煤だらけになりながらも、意識はしっかりと保っている。

 そればかりか、外傷は殆どなく、無傷と言っても良かった。

「た、頼む、殺さないで、殺さないでくれ!」

 多島は取り乱し、霧子の足元に縋りつく。

「落ち着けよ、お前も一応人間なんだろ? 殺しはしないから安心しろ」

 縋る多島を振りほどき、霧子が落ち着いた口調で語りかける。

「私を許してくれるのか?」

 霧子の言葉を聞いて、多島の表情が明るくなる。

 しかし霧子は、冷たい視線を突き刺し、言った。

「許す訳ないだろう? お前のして来た事を。だがな、実を言うと一つだけ感謝もしているんだ」

 霧子が、静かに笑う。

「……か、感謝……?」

「ああ、お前と御前……二人のお陰で、私は霞と逢うことが出来た。その事だけは礼を言わせてもらう」

 それは、霧子の正直な所感だ。

 この事件で犠牲となった人の命は計り知れない。

 その片棒を担ぎ続けた男の罪は、如何程の物か。

 しかし、運命の巡り会わせを思えば、彼らが霧子に齎したものも、また大きかった。

「お姉、この人……魔に囚われていますよ」

 霞が言う。

 霧子は、黙って頷いた。

「ああ、そしてその主はもういない……多島さんよ、賢いお前ならその意味が分かるよな?」

 冷たい口調で問いかける。

「滅ぶのですね……じきに、私も」

 多島はその場にへたり込み、がっくりと肩を落とした。

「お前だけじゃない。御前の息のかかった人間全員が、そう遠くないうちに滅ぶだろうよ。私達が手を下すまでもなく、な」

「では、妻も……」

「例外は、ない」

「仕方のない事なんですね……私は人を死なせ過ぎた……滅ぶのも仕方ありません、いや、むしろ私は望んでいたのかも知れない、御前から解放され、この生き方に終わりが来ることを……」

 多島はそう言って、涙を浮かべる。

「あの、修錬丹師の……」

「仙道霧子だ」

「仙道さん、最後に我が侭を聞いていただいても宜しいでしょうか?」

 多島の眼に決意が籠る。

「なんだ、言ってみろ」

 霧子は、煙草を一本、口に咥える。

「滅ぶのなら、妻と一緒に逝きたいのです、最後の瞬間を、我が愛する妻と一緒に……」

 多島が、祈る様に霧子を見つめる。

「お姉……」

 霞は、不安げな面持ちで霧子の表情を伺う。

 霧子は煙草に火を点け、大きく吸い込むと、紫煙を吐き出した。

「……分かったよ、好きにしろ。私達はお前を発見しなかった、もちろん言葉を交わしてもいない、そう言う事にしておいてやる。警官隊の諸君が来る前に姿を消せ、その手伝いは出来ないからな、想いを遂げたいのなら、死ぬ気でやれ」

 そう言って、そっぽを向いた。

「仙道さん……ありがとうございます、ありがとうございます!」

 多島は、何度も何度も頭を下げる。

「礼はいいから、さっさと失せろ!」

「……はい!」

 霧子の一喝で、多島は一目散に逃げ出す。

「……甘いと思っているだろ?」

 その後ろ姿を見送りながら、霧子が呟く。

「いえ、優しいと思っています……」

 霞はそう言って、にっこりと笑った。

「さあ、捜索再開だ、何としてでも見つけるぞ、私のMAC11! もう変な物を掘り起こすんじゃないぞ?」

「はい! ……あー! 見つけた!」

 瓦礫の中から小機関銃を取り出し、霞は一層大きな声で叫んだ。

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