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初めての夏祭り!(前編)

2014年4月14日。


朝の太陽が学校に降り注ぐなか、ベフゾドは黒ずくめの服で登校してきた。黒いシャツ、薄手の黒いズボン、白い靴底の黒いスニーカー、そして白い『NY』のエンブレムがついた黒いキャップ。まぶしい朝日をさえぎるために深くかぶっていたが、あまり役には立たなかった。かわいそうなベフゾドは、それでも目を細めなければならなかった。


今日は、イナ・ギュンタロウ私立学園の盛大な夏祭りの正式な開幕日だったため、厳しい制服の規定は丸一日完全に解除され、小学校、中学校、高校の生徒たちは、何を着てもよいことになっていた。


中庭は、ほとんど見分けがつかなかった。石畳の通路に沿って木製の屋台が何列も並び、太陽が出ているにもかかわらず、紅白の提灯が連なった紐でつながれていた。高校の校舎のすべての階から横断幕が垂れ下がり、揚げ衣と焼き肉の香りが、想像を絶するほど暑い朝の空気に、すでに漂いはじめていた。


ベフゾドはポケットに手を突っ込み、いつもの急がない、大股の歩みで正門を通り抜けながら、その混沌とした準備の様子を、純粋なパニックの千ヤードの凝視でじっくり眺めていた。自分のクラスを見つけられなかったからだ。

『俺は一体どこにたどり着いたんだ、クソッ』彼は、パニックとともに心の中で思いながら、巨大な張り子の龍の頭を運ぶのに苦労している中学生を眺めた。『ここにいると、すごく小さくなった気分だ。いや、おいおい、祭りってどういうことだよ、クソ!?どんな服でも来ていいのはありがたいけど、でも――』


「はい、3年D組!そのテーブルを左に動かして!」カナエ先生の大きく、陽気で、それでいて叱るような声が、前庭から響いた。彼女は火曜日の予定表を丸めて手に持ち、いつものポニーテールを夏用のお団子に替えて立っていた。そのこめかみには、漫画みたいに巨大な血管の『╬』が浮かんでいる。その横では、リュウタが、巨大な木製のピクニックテーブルを二つ、まるで紙でできているかのように、一人で肩に担いで運んでいた。


「ぼはははは!先生、こんなもん朝飯前ですよ!俺の筋肉は、祭りに向けて準備万端です!」リュウタは男らしい笑い声で轟き、重いテーブルをドスンと大きな音を立てて下ろした。哀れな舗装が揺れた。


ベフゾドは安堵のため息をつき、自分のクラスの屋台に近づきながら、小さく礼儀正しい笑みを取り戻した。「ようやく、見つけた」彼は独りごちた。


近くでは、コガネが木陰の折りたたみ椅子に座り、目を閉じて冷たいコーラのボトルをすすっていた。彼女のトレードマークである、完全なる怠惰の『(-⩊-)』の顔で、周囲にはまったく動じていない。「心の平穏…ただ心の平穏だけ…」


『カンフー・パンダのネタか?』ベフゾドは、彼女の前を通り過ぎて自分のクラスに近づきながら心の中で思い、「よっ」と、礼儀正しいくだけた調子で3-Dに声をかけた。「なあ、まさか、この暑さの中、本当にケツ据えて座ってなきゃいけないわけじゃないよな?」


カナエ先生は振り向き、予定表を広げて、彼の姿を見るなり重い安堵のため息をつき、熱意を取り戻した。「言葉遣い、ベフゾドくん!でも、来てくれてよかったわ。力仕事はほとんど、リュウタのおかげで終わったんだけど、でも――」


「お兄ちゃーん!」元気いっぱいの声が空気を切り裂いた。マリナだった。


ベフゾドが首を向ける暇もないうちに、ひまわり柄の、明るい黄色の夏の浴衣(日本の着物)を着たマリナが、小さなサンダルを舗装にぱたぱたと打ちつけながら駆けてきた。その目は、明るい黄色の漫画みたいな星の形になっている。その後ろには、ユリヤが歩いてきた。濃い桃色の甚平(男性用の二部式の夏服)を着て、同じ桃色のベレー帽を柔らかな髪の上に優雅に載せ、顔はいつもどおり無表情だった。


マリナは滑るように止まって、ベフゾドの腰にぎゅっと抱きつき、でれでれのエネルギーで彼を見上げて微笑んだ。「お兄ちゃん!ミサキ先生が、私たち小学生のクラスが『チェスとおやつ』の屋台の準備を、早めに終わらせていいって!」


ベフゾドの端正で憂いを帯びた顔は、本人はいつも無自覚だったが、すぐに和らいだ。やさしい、心からの笑みが彼の唇に広がり、彼は手を下ろして、細い指でマリナの頭のてっぺんを軽くかいた。「へへ、かわいいぞ、シスタ。それ、すごく似合って――」ベフゾドは言葉を止め、まだ微笑んだまま、困惑して目を細め、頬をかいた。「それ、何ていうんだ?着物か?」


マリナは純粋な喜びでくすくす笑い、満足した猫のように彼の手に身を寄せたが、その質問が着地すると、信じられないという大きな目で彼を見上げた。「浴衣を知らないの!?」


「え?」


「いいよ、これが今私が着てるものなの!覚えておいて!」


その隣では、ユリヤが、黒ずくめのベフゾドを見上げて見つめていた。突然、核爆発級の赤面が彼女の頬いっぱいに炸裂し、顔全体が鮮やかな深紅に染まったが、表情は完全に無表情のままで、頭の上には小さな深紅の浮かぶ『!?』が現れた。

「こ、こんにちは…マリナの…お兄さん…」彼女はほとんど聞こえないほどのささやき声で呟き、両手をぎゅっと組み合わせた。


ベフゾドは、軽い困惑とともにユリヤをちらりと見た。内心では羨ましがっていた。『どうやって!?一体どうやって!?俺もそういう能力が欲しいんだよ、なあ!』だが、彼は大きく咳払いをして、マリナを放し、ユリヤに向かってうなずいた。「また会ったな、マリナのホーミー」


「ホーミーって、なに?」ユリヤは首をかしげ、恥ずかしさを脱ぎ捨てて尋ねた。その横に、深紅の『?』が現れた。


「ストリートじゃ、『親友』って意味さ」ベフゾドは、わざとギャングのように声を歪ませて、常軌を逸したエネルギーで大きくにやりと笑いながら言った。


「ああ…なるほど…」ユリヤはどこからともなくメモ帳を取り出し、科学的な好奇心で『ホーミー → 親友』と書き込んだ。


主にジンのお菓子と絵(彼はいい絵描きだ)を売っている3年D組の屋台では、生徒のほとんどが、純粋な信じられなさに目を見開いて、そのやり取りを見つめていた。みんな、ベフゾドはクールで謎めいた、カリスマ的な男だと思っていたのに、実はただの普通の、友好的な、目が虚ろなだけのやつだったのだ。


「か、彼、妹にはやさしいの!?冷たくて謎めいた転校生じゃなかったの!?」ミカサは、後頭部をかきながら、声に出して言った。


「ほほほ!私が言ったとおりだろう、ベフゾドくんは、我がクラス全体で最も気高き紳士なのだ!」ジンは、気高くやさしい声でくすくす笑い、お餅をかじった。


『興味深い…』ピクニックシートに座り、拳にあごを乗せながら、アヤトは考えた。『あいつにも妹がいるのか…俺の壮大な計画における、また別の駒…』彼は、あまりにも臭いため、5メートル以内には誰も座らなかった。


「お姉ちゃん!見て!ベフゾドくんにも妹さんがいるよ」タカコは、やさしくてかわいい声で言い、キララの袖を引いて、注意を向けさせた。


「そ、それがどうしたのよ!?あのロシア人の変人が、実は冷たくないからって、別に気にしてないんだから!!!」キララは核爆発級の強さで赤面し、首が折れそうな速さで顔をそむけて、ツンデレ特有の『フン!』を言い放った。


「お兄ちゃん、あの人、どうしたの?」マリナは、目が二つの白い輪っかになり、口が小さな『お』の形になった、困惑した顔で言った。


「俺にも分からん」ベフゾドは、気づかないうちにマリナの顔をそっくり真似て、『お』の口と二つの白い輪っかの目でキララを見つめた。


それから、二人は首を振って会話を続けた。そのとき突然…


「ベフゾドくーん!」高校の屋台の列の向こうから、別の声が呼びかけた。シズカが、サンダルのせいで慎重に歩きながら、近づいてきた。白い桜の柄があしらわれた、見事な水色の浴衣の裾を握っている。

彼女の茶色の瞳が、全身黒ずくめで、背が高く、かわいく、愛らしく微笑んで立っているベフゾドの目と合った瞬間、彼女は固まった。脳が一瞬でショートした。両耳から目に見えて湯気が噴き出し、顔は光り輝く赤い花火のように燃え上がった。

『黒のストリート系、すっごくかっこいい!モデルなの!?俳優なの!?私、夢でも見てるの!?』彼女の内なる思考は、純粋で混じりけのないパニックと、かわいさの圧倒的な過剰が入り混じって、悲鳴を上げた。


「よっ、シズ、それ、すごく似合って――」彼は言葉を止め、マリナのほうに耳を傾けた。マリナが素早く彼に囁いた。「――ああ、浴衣」ベフゾドはシズカにうなずき、マリナを手で示した。「こっちは、俺の妹、アヴェ・マリアだ」彼の口は面白がるような笑みに曲がり、面白がって鼻を鳴らした。


「ただのマリナだよ、お兄ちゃん!」マリナは偽りの苛立ちですぐに返したが、自分でも、このあだ名がおかしすぎてにやにやしていた。


「分かった、分かった、ただのマリナ。ただのマリナ、こちらは第三世代シズカ・ヒイラギ・ボンケーキだ」ベフゾドは、常軌を逸した大きな笑みで、シズカの全身を手で示しながら言った。


「あはは!」シズカは手で口元を隠してくすくす笑った。「はじめまして、ただのマリナちゃん!」


「こちらこそ、はじめまして、第三世代シズカ・ヒイラギ・ボンケーキさん!あはは!」マリナはくすくす笑いながら答え、ユリヤの手を引いて近くに連れてきた。「それで、こっちがユリヤちゃん!」


「こんにちは…」ユリヤは無表情でシズカに呟き、まばたきした。まだ、近くにいるベフゾドのせいで赤面している。


「みんな自己紹介が済んだところで」ベフゾドはシズカのほうを向き、にやけ顔を静めて小さな笑みにした。「祭りって、そもそも何をするんだ、教えてくれ?俺とマリナにとって、これが初めての祭りなんだ」


「私も」ユリヤは指を一本立てて付け加えた。


「…これが、俺と、マリナと、ユリヤの、初めての祭りだ」ベフゾドは、さらに大きな笑みで言い直した。


「おおお!金魚すくいに行こう!」シズカは両手を頬のところで丸めて、熱意を込めて答えた。


「何に?」三人が同時に返した。ベフゾドだけが、そのあとで、信じられないという顔で二人のほうを向いた。「そのシンクロ、144ヘルツのモニターより滑らかだな」と付け加えて、シズカのほうに向き直った。彼女はすでにくすくす笑っていた。


「あなたたち三人、三つ子みたい、あはは!」シズカは手で口を覆った。「金魚すくいはね、薄い和紙でできたすごく薄い網で、金魚をすくう、定番のミニゲームなの!」


「行こう!!」マリナはすぐに明るくなり、目をうれしそうな三日月に細め、シズカの手を掴んで、ついていきはじめた。


それから、ベフゾドは振り返って先生に手を振った。「すぐ戻ります!」


「はい、はい、迷子にならないでね!」先生は、メロディーのような笑い声と三日月の形の目で返した。

それから、ベフゾドは向き直り、ユリヤと一緒にその後ろをついていった。ユリヤはポケットに手を入れて無表情で、ベフゾドは両手を体の脇にだらりと下げて、無表情な顔だった。


3年A組が運営する屋台『金魚すくい』に着くと、「いらっしゃい!」と、彼らのクラスの先生が言った。馬蹄形の灰色の髪をして、目を完全に覆う眼鏡をかけた、太った男性だ。「遊んでいくかい?」


「あー…いくらですか?」ベフゾドは、泳ぐ金魚を見ながらためらいがちに答えた。その後ろでは、シズカとマリナが、鎖骨のあたりで同じ形に手を丸めて、彼を応援していた。


「たったの300円だよ、坊や!」先生は、指を三本立てて答えた。


ベフゾドは、マリナとシズカを振り返った。『負けるわけにはいかない』彼は心の中で思い、財布を取り出して、先生に300円を渡した。

先生は彼に、紙が溶けてしまう前に、金魚をすくってボウルに入れるための、壊れやすい紙の網(ポイと呼ばれるもの)を手渡した。

突然、ベフゾドの目が見開かれ、瞳孔が縮み、狙撃手の視界モードに入った。彼の周りの『オーラ』までもが不気味になるほど、集中しきっている。最初に、彼は網を見つめ、最善の戦術を想像しようとし、一つの理論に到達した。『よし…どうすればいいか分かった…紙の枠全体を完全に濡らして、水に慣れさせる。45度の角度で水に切り込んで、水と魚の両方をすくい上げる。端のほうにいる落ち着いた魚を狙う。動きの速いクソ野郎どもは、一番厄介だからな。魚を網の縁に寄せて、紙が破れないようにして、クソ雑魚みたいに負ける羽目にならないようにする。ボウルは水面に触れさせたまま、移す距離を1インチにする。クソ、あとは、本当にやり遂げられるかどうかだけだ。そのための速さは、俺にあるのか!?』

ベフゾドは、計画のすべてを実行した。まず、左手のボウルを、金魚が入っている容器に近づけた。次に、端のほうにいる、本当に落ち着いた、『落ち込んだ』魚を見つけた。三つ目に、紙を濡らした。四つ目に、濡らした直後、45度の角度で水に切り込み、魚をすくい上げた。五つ目に、網が紙を破りそうになる中、魚が縁に留まるよう、軽くバランスを取った。六つ目に、それをボウルに放り込み、信じられないといった笑い声を爆発させ、目を伏せた。「ははははははは!やったぞ!」彼は、先生、マリナ、ユリヤ、シズカにボウルを見せた。


先生の顔は、紙のように真っ白だった。ベフゾドが想像しうる最も効率的で完璧な計画をやってのけたことが理由ではなく、ベフゾドが実際にどれほど集中できるのかということが理由で。「お、おめでとう…」


マリナは喜びで歓声を上げた。「きゃああああ!お兄ちゃん、最高!」マリナは純粋な誇りと興奮で叫び、駆け寄ってベフゾドの腰にぎゅっと抱きついた。ベフゾドは、自分の知性に、まだ高笑いしていた。


シズカとユリヤの目は、その間に点になり、口は『お』になって、漫画みたいに『•o•』のような顔になった。それから、マリナが彼に抱きつくのを見て、二人とも核爆発級に赤面し、頬を覆った。


『なんでマリナのお兄さんは、こんなにかわいくて、かっこよくて、イカしてるの!?』ユリヤは心の中で考え、目はぐるぐる渦巻きになりながら、平静を保とうとした。


『かっこよくて、かわいくて、ああああああ――』シズカも、純粋に興奮して考えた。「やったね、ベフゾドくん!」彼女は赤面しながらも、熱意を込めて両手で親指を立てた。


トラウマを負った先生が、金魚を水の入ったビニール袋に詰めてマリナに手渡したあと、一行は歩き回りつづけた。綿あめの新しい屋台に着くと、ベフゾドは、自分、マリナ、シズカ、ユリヤの分もそれを買った。

だが、シズカが携帯をちらりと見ると、午前11時だと分かった。それは、たった一つのことを意味していた。彼女のコンサートの時間だ!「えええええっ!行かなきゃ!」彼女はくるりと向き直り、脚が回転する円盤になって、マッハ1で駆け去った。


「どうやったんだ、あれ!?」マリナとベフゾドは、信じられないといった声で同時に叫び、二人の顔は、純粋な嫉妬の、困惑した『OwO』になったが、シズカはもういなかった。


ベフゾドは気持ちを落ち着かせるために深呼吸をして、マリナとユリヤのほうを向き、腰に手を当てた。「あのコンサート、見に行かなきゃだろうな」彼は疲れた声で提案した。


「やったあ!」マリナはすぐに付け加え、手を叩いた。


「いいよ」ユリヤは無表情で付け加えた。


そのあと、一行は屋台をあとにして、今は空っぽの巨大なステージへ歩いていき、ベフゾドはマリナを見下ろした。「お前、大丈夫か?両親にひどい扱いされてないか?」彼は、気遣いをにじませたさりげない口調で尋ねた。


「言葉遣い、お兄ちゃん!」マリナはすぐにたしなめたが、彼の心配に気づいて、すぐに表情を和らげた。「でも、ううん、大丈夫、前よりよくなったと思う。それに、お兄ちゃんにもっと優しくしなかったことを、後悔してるって言ってるよ」


「そうなのか?」ベフゾドは、好奇心で片眉を上げた。


「うん!」マリナは熱意を込めて付け加えた。


「へえ」ベフゾドは無関心に答えた。


「お兄ちゃん、もしかして戻ってくる――」マリナが提案しかけた。


「いや。親戚のうち、俺の家に入っていいのは、お前だけだ」ベフゾドはすぐに不賛成の声で答えた。


「えー、分かった」マリナはため息をつき、ステージのほうに向き直った。


その上には、『けいおん!』コスプレクラブ全員が現れた。彼女たちは、素早く『けいおん!』の雰囲気に合わせた服に着替えていた。

1) シズカ、メインボーカル&メインギター担当、

2) ライデン、ドラム担当、

3) クギ、ベース担当、

4) リン、リズムギター担当、

5) そしてミユ、キーボード&バックボーカル担当。


「みなさん、来てくれてありがとう!」シズカはマイクを通してみんなに言った。「軽音部が、私たちの最初の曲、『メランコリー』をお届けします!」彼女はマイクを下ろし、ギターの構えを整え、音楽が始まった。


音楽が流れている間、ベフゾドはマリナを見下ろした。「あいつ、ボーカルがすごいよな?~」彼は、遊び心を込めて、軽くくすくす笑いながら言った。


「ほんとだね!」マリナは、メロディーのようなかわいい笑い声で答え、ユリヤのほうを向いた。「ユリヤ、この音楽、好き?」


「うん」ユリヤは平坦に答えたが、その口の端は、美しい微笑みでわずかに上がっていた。


ベフゾドが横を向くと、遠くにガルゴンの姿が見えた。だが、マリナのほうに向き直ると、彼女の姿はなくなっていた。ユリヤもだ。彼はすぐに警戒に目を見開き、人混みの中をかき分け、外に出ると、次の光景を目にした。ヒアヤトが、嫌悪感に顔をしかめたマリナを見下ろしていて、その横で、激怒したユリヤの手が、固く握りしめられていた。


「黙れ、我が駒よ、貴様は、我が計画の中の道具にすぎん」アヤトはマリナに言った。


「うえっ、どっか行って、臭いよ!」マリナは後ずさりしながら言い返し、ユリヤは、抑えきれない怒りで息をのんだ。


「おい!ここで何があった!?」ベフゾドはすぐにアヤトのもとへ駆け寄り、冷たい視線で彼を見下ろした。


アヤトはぴくりともせず、顔も変えなかったが、巨大な汗の粒が、彼の頬を伝って流れ落ちた。「貴様も黙れ、貴様の妹こそが、壮大な道具――」


バキッ!


ベフゾドは、少しのためらいもなく、全力でアヤトの鼻を殴りつけた。だがアヤトが倒れる前に、彼はその襟を掴み、拳を振り上げ、あごを食いしばり、怒りに目を見開いた。「もう一度言ってみろ、マリナが誰だって!?」


一方、ユリヤは、純粋な魅了に深く赤面しながら、マリナの目を覆い、マリナに何かを囁いていた。「あなたのお兄さんって、いつもあんなに過保護なの!?」マリナは答えた。「うん!」


アヤトはすぐに両手を上げて降参した。「ま、まあまあ、キレるな、キレるな!冗談だ、ほら、はは!」鼻からは活発に血が流れ、彼自身も、泣き出す寸前の様子だった。


「もう一度やったら、生きたまま皮を剥ぐぞ」ベフゾドは激怒して答え、アヤトを地面に投げ飛ばした。その後ろにいる3年D組、あるいは、少なくともピクニックに残っていた者たちは、失望の目でアヤトを見ていた。


「子供を利用しようとするほど、身を落とすとは」ジンは腕を組み、失望と悲しみの眼差しで顔をそむけた。「貴様が彼女に何かをしたその瞬間に、私はベフゾドを助けていたぞ」


「まったく、情けないわね」ミカサはサンドイッチをかじりながら答えた。「キンジくんでさえ、そこまで身を落とさないわよ」


「+9999の物理的および心理的ダメージ!」コガネはオタクの熱意で言い、アヤトに向かってわめいた。「レベル1の雑魚のくせに、レベル99のボスの一撃を食らったね、あはは!」


アヤトは素早く立ち上がり、鼻を洗いに走り去った。一方、ベフゾド、マリナ、ユリヤは、観客のもとに戻った。


コンサートのあと、屋台が片づけられて、家に帰りはじめているころ…


「シズちゃん、ゾディクちゃんが私を守ってくれたんだよ!」マリナは、胸のところで両手を丸めて、明るくシズカに言った。


「え!?どうやって!?」シズカはすぐに、口を小さな『お』の形にして返し、目は白い輪っかになった。


「アヤトを殴ったの」ユリヤは腕を組んで述べた。


「なんですって!?」シズカのあごが純粋な衝撃で外れ、顔はたちまち深紅の赤面で燃え上がった。『あの人、『冷たくて謎めいた転校生』っていう評判を犠牲にして、妹を守ったの?どうしてあの人は、そんなにかっこいいの!?!』


「あー…うん…」ベフゾドは、袖のない腕をかきながら、恥ずかしそうに、頬をわずかに桃色に染めて言った。


シズカは、激怒したり叱ったりするどころか、熱意を込めて親指を立て、明るく微笑んだ。「よくやったね!あの黒幕気取りには、当然の報いよ!」


ベフゾドは安堵のため息をつき、どんな神様がいるのか知らないが、好きな人ががっかりしていないことに感謝しながら、手を上げて門を指し示した。「そろそろ行こう、祭りには、まだ夜が丸ごと残ってるんだから」彼はそう言って、歩きだした。「俺は家に帰って、着替えなきゃ」


門の前に集まったとき、彼らはどこで会うかを伝え合い、着替えて少し休むために、家へ向かった。


つづく…

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