夏祭りの準備!
2014年4月13日、土曜日。
午前6時2分。
ベフゾドはベッドの上で仰向けになり、毛布を頭まですっぽりかぶって、静かにいびきをかいていた。病室のカーテンは閉まっていて、暗く、完全に平和だった。だがその平和ないびきは、突然中断された。
ギィィィィ…
ドアを開けたのは、背の低い男だった。側頭部だけが馬蹄形に残った灰色の髪に、黒い瞳、立派な口ひげをたくわえ、目の下にはくまがある。患者が眠っているのを見て、彼は大きな声で話すために深く息を吸い込んだ。「ベフゾドさん、起きてください」彼は大きく、落ち着いた大人の声で言った。
ぐぅぅ…
「ベフゾドさん!」
ぐぅぅ…
男は鼻の付け根をつまみ、首を振って、疲れ切って独りごちた。「そりゃ寝てるよな。何を期待してたんだ、私は」それから、ゆっくりとベッドに近づき、ベフゾドの肩を激しく揺すりはじめた。「ベフゾドさん!ベフゾドさん!起きてください!」
十回ほど揺すったところで、ベフゾドはようやく半開きの目を開け、顔を上げて男のほうを向き、左右の目をばらばらにまばたきさせた。「ん?」彼は眠そうな、不機嫌な声で唸り、また眠り込まないよう、かろうじて踏みとどまっていた。
男は安堵のため息をつき、体を引いて、メモ帳のページをめくり、ペンで『上』のジェスチャーをして、起き上がるよう合図した。「ベフゾドさん、医師のデイビッドです」彼は落ち着いた、冷静な声で言った。「今日退院できるかどうか、身体を診察させてください」
「んー…」ベフゾドは唸ってうなずき、ゆっくりと体を押し上げて背筋を伸ばして座ると、入院着の腹の部分をめくって、腹部が包帯のパッドで覆われているのを見せた。
「では…」デイビッドは呟き、そっと包帯をめくって、その下の傷跡をとんとんと叩いた。ベフゾドが痛みに顔をしかめるどころか、ただ左右ばらばらにまばたきするだけなのを見て、彼は満足げにうなずき、パッドを元に戻して、ペンを下唇にとんとんと当てた。「再生力がかなり高いようですね。これは朗報です」彼は感心した声で言った。
「んー…」ベフゾドは眠そうに呟き返し、シャツを閉じて、ベッドに倒れ込み、伸びをして、今度はうつ伏せで眠りはじめた。
デイビッドは素早くメモ帳に何かを書き込み、廊下に出て、ドアを閉めた。
5分後…
デイビッドはドアをきしませて開けた。今度は、請求書を手にしていて、それをベフゾドに手渡した。
ようやく目が覚めたベフゾドは、背筋を伸ばして座り、指でそっと請求書を拾い上げて、それをぱちぱちと見つめた。それから、眉をひそめ、目を恐怖に見開いた。
850,000円。
『850,000円ってどういうことだよ、クソが!?俺のクソ子孫が、何世紀もこの請求書を払い続けることになるぞ!』彼は心の中で叫び、額を押さえて素早く息を吐いた。『クソ…三食を一食にしてやっと家賃を払ってるのに…これからは、週に一回しか食えないってことか――』
それから、ベフゾドの目はさらに下へ移り、興味深そうに読み進めた。
1) 850,000円 → 255,000円(標準の3割負担。日本の国民健康保険が医療費の7割をカバーするため。)
2) ベフゾドは、所得が低い/課税所得がない学生のため、1か月の自己負担上限額は約57,600円となる。
3) ベフゾドは、マリナとシズカがすでにスープと果物を持ってきてくれていたため、食事代は一切支払っていない。
ベフゾドは安堵の息を吐き、指でまぶたをもみほぐした。『ああ、神様…俺は無神論者だけどな…』彼は心の中で思った。クソでかいダンベルほどの重みが、肩から落ちた。
「請求書をご確認いただけたのでしたら」デイビッドは咳払いをして、落ち着いた、品のある声で言い、背中で手を組んで歩き出した。「お支払いのために、私についてきてください」
ベフゾドはゆっくりと立ち上がり、それから自分の服を見下ろした。それから、デイビッドを見上げた。「先に着替えてもいいですか?」彼は無表情な声で尋ねた。
「ああ、もちろんです」デイビッドは自分の額をぺちんと叩き、信じられないといったふうに首を振って、ドアを閉めた。
5分後…
ベフゾドは、灰色のシャツに灰色のズボン、茶色のゴムサンダルという姿で、服が詰まった巨大な黒いバッグを片手で持ち、もう片方の手を体の脇にだらりと下げて、デイビッドについていった。
それから、二人はようやく会計窓口にたどり着き、ベフゾドは辛抱強く列に並んでから、自分と窓口を隔てるガラスの壁に近づいた。その向こうでは、黒いツインテールに暗い毛先、きらきらと輝く美しい茶色の瞳をした若い女性の会計係が、パソコンの画面を見つめて何かを打ち込んでいて、その表情は完全に無表情だった。
ベフゾドは請求書と銀行カードを取り出し、それらを握った手を窓口に差し出して、少し寄りかかった。「すみません、支払いをお願いしたいんですが、その――」ベフゾドは突然、漢字の『滞在』という言葉を忘れてしまい、頭が全速力のマッハ5で言葉を探しはじめた。『КАКОЕ БЛЯТЬ ЗНАЧЕНИЕ У СЛОВА 'СПАСИБО ЗА ПРЕБЫВАНИЕ,'』(『ご滞在ありがとうございました』って言葉の意味は一体なんなんだクソ)「――滞在。俺の、た、滞在の分を、支払いたいんです」彼は少し恥ずかしそうにつっかえながら言った。
「はい…」女性は低く唸ってうなずき、頭を前に突き出した。「では、カードと請求書をください」
ベフゾドは黙って請求書とカードを渡した。
女性はカードを小さな端末に押し当てた。ピッ!と音が鳴り、小さなレシートが出てきて、彼女はそれを、カードと一緒にベフゾドに返しながら、無表情で単調な声で呟いた。「またお早めにお越しください」
ベフゾドは困惑して瞬きをしたが、やがて面白がってわずかにニヤリと笑った。「…あー…それ、病院で言うセリフじゃない気がするんすけど…?」彼はカードをポケットに押し戻し、女性をからかった。
女性の顔が、漫画みたいな平坦な『-_-』になった。
ベフゾドのユーモアは消え、彼は困惑して眉を上げ、薄笑いも消えて、混乱しながら考えた。『今どうやって…』
「お客様」女性はベフゾドを見上げ、先ほどと同じ声で言ったが、顔は平坦で疲れた『-_-』のままだった。「私みたいに12年働けば、自動操縦で動くようになりますよ」
それから、ベフゾドは困惑して眉をひそめ、両手を体の脇に下ろして、探るような声で言った。「でも、やってることに対して、給料はもらってるんじゃないんですか?」
「…」女性の顔が元に戻り、彼女はショートした。目が見開かれ、恥ずかしさで頬がバラ色に染まる。「ご、ごもっともです」彼女は、単調で、恥ずかしそうな声でつっかえながら言った。
それから、ベフゾドは肩をすくめ、くるりと背を向けて病院の出口に向かった。『実際にそれを指摘したの、俺が初めてなのか?』
1208号室に戻ったとたん、彼は鍵穴で鍵を回しているところで、突然止まった。ドアのすぐ横にある、部屋番号を見上げる。
|1208|
それから、彼は愛らしい困惑で何度かまばたきした。パチ。パチ。それから、首を振って、ドアを開け、入るなり鍵をかけた。
中に入ると、靴を脱いで脇に押しやり、バッグをローテーブルの近くに置き、何日ぶりかのシャワーを浴びるために、すぐさま浴室に飛び込んだ。シャワーの中では、『HUNTER×HUNTER』のオープニングを、陽気に歌った。
もちろん、そのあとは素早く服を着て、今日の授業の準備をし、ガラケーで、文字どおり『大家』と登録された番号にかけた。
プルルルルル。プルルルルルル。プルルルルル。
「もしもし?」電話から、疲れた、困惑した声が響いた。
「もしもし!」ベフゾドは陽気で好奇心いっぱいの声で切り出し、壁にもたれかかった。「お聞きしたいことがあるんです。どうして6階の部屋は『12』で始まって、1階の部屋の番号は『2』で始まるんですか?」
「階数に2を掛けるだけだ」声が返した。「どこかのアホが、建物を作るときに間違えたんだよ。君より前にも、三人が同じことを聞いてきた」
ベフゾドは驚いて携帯にうなずいた。「ああ、分かりました、ありがとうございます、失礼します」
ピッ。
15分後…
ベフゾドはすでに自分の席に座り、感謝に満ちた目でシズカを見つめ、両手を机の上にだらりと置いていた。「スープ、ありがとな!」彼は明るく、柔らかく、落ち着いた声で言った。
「えええええ!?」シズカはショックで悲鳴を上げ、顔は核爆発級に真っ赤になり、両手と頭を振って否定した。「な、なんでもないよ!簡単だったから、本当に!」彼女は恥ずかしそうに言いながら、ノートに何かを猛烈な勢いで書き殴りつづけた。
ベフゾドはすぐに困惑して眉を上げ、ぽかんと口を開けて、驚きに満ちた声で言った。「待て、そんな速さで、どうやって書いてるんだ――」
キーンコーンカーンコーン――
ドアが開き、今日はボサボサで結んでいない黄色い髪のカナエ先生が、教室に入ってきた。
「はい、みんな席に着いて!」カナエ先生は、走ってきたせいでまだ息を切らしながら、教壇にもたれかかって吠えた。
彼女の動揺した、乱れた姿に気づいたベフゾドは、軽い皮肉とからかいを込めて、ニヤリと笑い、面白がるような声で言った。「カナエ先生、何台のバスに轢かれたんですか~?」
「ぷっ、ぷははっ、ぷははははははははははは!」ほとんどクラス全員が笑い出した。ジンとメグミだけは、くすくす笑いを抑えようとしたが、抑えきれなかった。
カナエ先生の顔が、平坦で無表情な『-_-』になり、彼女は単調で、完全に無表情な声で言った。「あはは。おもしろいわね。では、国語の教科書の193ページを開いて――」
コンコンコン。スーーッ、ドンッ。
ドアは、三人同時に開けられた。ウロ、バチ、そしてクジョウだ。ウロは生徒たちのほうに向けて、大きな段ボールの横断幕を両手で抱えていて、その顔は無表情だった。メイド服で廊下を歩いて入ってくることを、恥ずかしいとすら思っていないのだ。
「おはよう、我が愛しき学友たちよ!」クジョウが、いつもの紫のぐちゃぐちゃのシャツに、赤いネクタイ、青いズボンという格好で入ってきて、サングラスを外した。すると、どこからともなく薔薇の花びらが現れ、『キラキラ』の少女漫画エフェクトが彼にかかり、できるかぎり魅惑的で神々しく見せていた。
「待て、あいつ今どうやって――」ベフゾドは花びらを指さして驚きに目を見開き、口をぽかんと開けたが、すぐに遮られた。
「本日は、我々が夏祭りの準備を万端に整えたことを、喜びとともにお知らせしよう!」彼は両手を上に投げ出した。熱意にあふれている、あるいは、少なくともそのふりをしている。「3年D組は、この盛大なイベントに参加してくれるかな?」彼は、思わせぶりで好奇心を込めた声で言い、あごをとんとんと叩きながら、片手を腰に当てて、そっぽを向いた。
廊下にいた数人の女子が、すぐさま鼻から一リットルの血を失って、そのまま気絶したが、3年D組の女子の顔は、漫画みたいな、平坦な『-_-』になった。この事実だけで、クジョウのこめかみに大きな赤い血管が浮き上がり、彼は優雅な姿勢と、気取った表情の下で、歯ぎしりした。
「参加してください」バチは疲れ切ったため息とともに呟いた。巨大なクリップボードを持ち、目の下のくまがあまりにも重くて、パンダのように見える。
横断幕には、巨大な日本語の漢字で『盛大な夏祭り』を意味する文字だけが書かれていて、その下には参加するクラスが並んでいた。中学校と小学校まで含まれていた。
「ええ、もちろん!私たちは参加するわ!」カナエ先生は両手を叩き、うれしそうな三日月の目と、熱意に満ちた声で、クラスのほうを向いた。「そうよね、3年D組?」
クラス全員が盛り上がっていた。ただ一人、困惑しながら横断幕を見つめて、それを指さしてクラスを見渡したベフゾドを除いて。「なあ、あの記号、何て意味なんだ?『馬』か、『夏』か?」
誰も、彼の質問に答えなかった。
一時間後…
ベフゾドとシズカは、教室で昼食をとっていた。いや、正確には、食べているのはシズカだけで、彼女はいちごの柄の入ったかわいい弁当を食べていた。一方のベフゾドは、小学校棟を、悲しげで後悔に満ちた表情で見つめながら、窓の外を眺めていた。両手は机の上で組まれている。
「ねえ」シズカが突然、大きくて丸い、好奇心に満ちた茶色の瞳でベフゾドのほうを向いた。卵焼きを噛んでいる。「私が部活のみんなと作った曲、見に来てくれない?」彼女は希望を込めて言った。「ほかにも観客がいるって約束するよ、あなたと部員だけにはならないから!」
「…あー…」ベフゾドは少し恥ずかしそうに頬をかき、目をそらして、少しだけ考え込んだ。それから、うなずいて彼女のほうに向き直った。目は半開きで、まだ少し悲しげだったが、承諾していた。「分かった、でも、できるだけ早く帰りたいからな!」
放課後…
軽音部は、簡素な見た目だった。使われている大きな教室だ。ドアから遠い奥には、今はスポットライトに照らされたステージがあった。手前には五つの席があり、部室自体には、テーブル付きの丸いソファ、本棚、ギターが並んだスタンドがあった。
ベフゾドは四番目の席に座り、前かがみになって、携帯をスクロールしていた。
[Shavkatov_Play]: Мариш с тобой все хорошо? Мама забрала?(マリシュ、大丈夫か?ママは迎えに来たか?)
[SubMarina]: да кнш я уже дома, не волнуйся братан(うん、もちろん、もう家にいるよ、心配しないで、兄貴)
[Shavkatov_Play]: хорошо, покиии, целуюююю(わかった、バイバーイ、キスを送るよー)
[SubMarina]: покииии, целуююю тебя тоже(バイバーイ、私もキスを送るよー)
安堵のため息とともに、彼はガラケーをポケットに押し戻し、背筋を伸ばした。その顔は、再び少し超然とした無表情に変わった。
彼の左には、男らしい少年が座っていた。灰色の髪を、二本の巨大な、上向きに跳ね上がった突起のように整え、黄色い瞳をしていて、ベフゾドより少し背が高かった。彼は腕を組んで座り、ベフゾドに横目を向けて威圧しようとしている。彼の胸につけられたバッジには、『ガルゴン・キーク、3-A』という名前があった。
ベフゾドの右では、二人の女性が話し込んでいた。一人は短い黒髪に紺色の瞳、もう一人は、ピンクの毛先の長い黒髪に、暗い深紅の瞳をしていた。
突然、近くのパントリーから、五人の少女が現れた。
1) シズカ。いつもの肩までの茶色の髪に、茶色の瞳、右側に二つの赤いヘアピンで留められた短い前髪。平沢唯のコスプレ。
2) ライデン。赤いヘッドバンドで後ろに流した、肩までの明るい茶色の髪(おでこが見えている)に、ヘーゼルゴールドの瞳。田井中律のコスプレ。
3) クギ。真っ直ぐな腰までの漆黒の長い髪に、ぱっつんの前髪、紺色の瞳。秋山澪のコスプレ。
4) リン。黄色いヘアゴムで結んだ長いツインテールの焦げ茶色の髪に、おでこを横切る真っ直ぐな前髪、大きな紫の瞳。中野梓のコスプレ。
5) ミユ。ウェーブのかかった、腰までのハチミツ色のブロンドの髪に、柔らかな深紅の瞳、太くて濃い眉毛。琴吹紬のコスプレ。
シズカはすぐに、言葉もなく、大きな笑顔だけでベフゾドに手を振った。
ベフゾドは、ずっと控えめな振り方で、小さな笑みとともに手を振り返した。誰の邪魔もしないように、どちらかといえば敬意を込めた笑みで。
一方ガルゴンも、ミユに手を振り、両手で親指を立て、頬を軽く赤らめていた。
ミユは、甘くあたたかな表情で手を振り返した。
女性たちは、一方、クギとリンのお母さんだったと分かり、クギとリンにも手を振りはじめた。
クギとリンは、少し恥ずかしそうに、頬を赤らめて手を振り返した。
「はい、みなさん、注目してください!」シズカがマイクを掴み、熱意を込めて言った。「これが私たちの最初の曲です!軽音部の『メランコリー』、いきます!」
スタート!
音楽は、バイカーロックに、シズカたちの明るくてかわいい、カワイイ声が組み合わさったような響きで、その間ずっと、ベフゾドは赤面しっぱなしだった。純粋な恥ずかしさから。彼は文字どおり、純粋な痛々しさに歯ぎしりしていたが、それでも承認するようにうなずきつづけ、心の中で考えていた。『なんで俺は、承諾なんてしたんだ?』
曲が終わると、五人の観客は、大きな拍手をした。
「ブラボー!」クギのお母さんは、誇りで轟く声で言い、席から勢いよく立ち上がって、興奮した、大きな目でにやりと笑った。
「素敵だったわ」リンのお母さんは、落ち着いた、品のある声で言ったが、彼女でさえ、興奮と誇りを隠しきれなかった。
「素晴らしい、ミユちゃん、自分を超えたな!」ガルゴンが、安心させるような笑い声で轟かせ、巨大な両腕を上げて拍手した。
「いい曲だ!」ベフゾドは、目をうれしそうな三日月の形に細めて、シズカに両手で親指を立てた。
シズカも、同じうれしそうな三日月の目で、親指を立て返した。
10分後…
シズカがクラブのドアに鍵をかける間、シズカとベフゾドは廊下に二人きりで残された。
それから、ベフゾドがシズカに手を振り、できるだけ早く立ち去ろうと急いだちょうどそのとき…
『家に帰ったら、クソ即座に宿題をやらなきゃな』ベフゾドは必死の思いで心の中で思い、黒いリュックの肩紐を直した。『ようやく、日曜日だ…俺が――』
ピコン!
シズカの携帯が、新しい通知で鳴り、廊下全体に響き渡った。ベフゾドは止まらず、角を曲がった。シズカが興味津々の表情で、低い「ん?」という声とともに携帯を取り出すと、ママからだった。
[ママ]: シズ、今夜は帰れないの、同僚のお葬式に行くから。お友達にお泊まりをお願いしてね!
すると、シズカの目が見開かれた。彼女はパニックで震えながら、周りを見回し、目が漫画みたいな白い輪っかになって、心の中で考えた。『ええ!?でも、ミユちゃんも、クギちゃんも、ライデンちゃんも、親がお泊まりを許してくれないよ!それにリンちゃんには頼めないし、どこに住んでるのかも知らないし!』それから、彼女の目はぱっと元に戻って見開かれ、口が小さな『お』の形になった。『待って!ベフゾドくん!あの人なら、もしかして――』
シズカは頬を手で包み込み、目を閉じて叫んだ。必死の声が、廊下全体に響き渡った。
「ベフゾドくうううううん!」
ベフゾドは入り口で足を止めた。それから、振り返って、困惑と好奇心とともにシズカのほうへ歩いて戻りはじめた。『何か忘れ物でもしたか?』
階段を駆け上がってシズカに近づくと、彼は好奇心から片眉を上げ、柔らかく困惑した声で言った。「何だ?俺を呼んだか?」
すると、シズカは恥ずかしさで少し頬を染め、まるで視線が物理的に焼けるかのように目をそらし、スカートの端をぎゅっと握りしめて、ためらいと希望を込めて呟いた。「あの…お願い…あなたの家に、お泊まりに行っても…いい…?」
ベフゾドは固まった。彼は何度か困惑して瞬きをしたあと、頬が少し恥ずかしさの赤みに染まり、手の甲を口元に当てた。「は!?なんでだよ?」彼は純粋な困惑とともに呟いた。
「私の…両親が…誰かのお葬式に行っちゃって…それで私、鍵をなくしちゃって…」シズカは、目をぱちぱちと閉じて呟き返した。
すると、ベフゾドは息を吐き、防御するように両手を上げ、眉は本物のパニックでひそめられた。「いいか、俺はまったく客をもてなすタイプじゃないんだ。俺が泊めるのは、妹だけで――」
「お願い!~」シズカは両手を鎖骨のあたりで丸め、大きくて、丸くて、哀れな子犬の目をした。
ベフゾドは、それには影響されなかったが、心の中である光景を想像した。シズカが、夜に、どこかの路地裏で段ボールの上に寝て、寒さに震えている光景を。彼は首を振り、純粋な怒りに歯を食いしばったが、やがて目を閉じてうなずいた。「…分かった」
シズカはすぐに笑顔になり、花火のようにぱっと輝いた。目はうれしそうな三日月になり、明るく、あたたかい声で返した。「ありがとう!」
5分後…
ベフゾドの家への道のりの途中で、シズカの熱意は、次第に、純粋で混じりけのないパニックと恐怖に取って代わられた。彼女はスカートを握りしめて激しく震え、顔は汗だくだった。『もしあの人が、映画に出てくるみたいな変態だったら!?もしあの人が、生きたまま人の皮を剥ぐ連続殺人犯だったら!?もしあの人が、私を利用しようとしたら!?もしあの人が、人格が変わって、私をボコボコにしたら!?』彼女は、精神崩壊寸前のような様子で、心の中で考えていた。
すると、ベフゾドが彼女のほうを向いた。その表情は無表情で少し超然としていたが、片眉が好奇心に吊り上がっている。「なんで震えてるんだ?」彼は歩みを止めなかった。
シズカはすぐに首を振り、無理に笑顔を作って、汗をかきながら両手で親指を立てた。「な、なんでもないよ!ちょっと寒いだけ!」彼女の声はかすれて、不安げだったが、できるかぎり楽観的だった。
ベフゾドは肩をすくめて、道のほうに向き直り、ブレザーを直した。
すると、シズカは本当に深い衝撃で目を見開き、困惑してまばたきした。『待って…あの人、ブレザーを貸してくれなかった。いや、待って、私が寒いってことにすら、気づいてもいない!もしあの人が、女の子に尽くすタイプの男なら、すぐにブレザーを渡してくるはずなのに、あの人は、どうでもいいと思ってる!』
そのすべての間、ベフゾドは、考え込むような、少し面白がるような気持ちで、心の中で考えていた。『えへ…あははははは!待てよ、あのジョークは何だったっけ…ああ、そうだ!『じいちゃんの最期の言葉、今でも覚えてるぜ。『お前、まだ梯子を押さえてるか?』ってな』あはははははははは!』
15分後…
午後の太陽が、ベフゾドの階に、見事に降り注いでいた。ドアが並び、そのそれぞれの中に、自分だけの物語を持つ、巨大で私的な宇宙を隠している。
ベフゾドは、安堵の深呼吸をして、鍵を差し込んだ。
それから、突然シズカのほうを振り向き、眉をひそめて、叱るように指を振った。「もし何かが消えたのを見つけたら、お前を訴えて、破産させてやるからな、分かったか?」彼は、完全に真剣な声で言った。
シズカはすぐに、恥ずかしさで真っ赤に頬を染め、目が漫画みたいな白い輪っかになって、手を振って否定した。「ううん、ううん、もちろん何も盗まないよ!」彼女は悲鳴のように言い返した。
それから、ベフゾドは疲れ切ったため息をつき、疲れた目でドアのほうに向き直り、ドアを開けた。
ギィィィィィ…
シズカは目を閉じ、衝撃に備えて、心の中で考えた。『一人暮らしのティーンエイジャーの部屋なんて、豚小屋みたいに決まってる!』だが、彼女は、ものすごく間違っていた。
1208号室は、ほとんど輝いていた。玄関の外に置かれた物は何もなく、カーペットのない床はピカピカで、すべてが、死ぬほどきれいに整頓されていた!
シズカの目は純粋な魅了で見開かれたが、それはすぐに、別の恐怖に取って代わられた。『待って、もしかして、私に信用させるために、わざとこんなにピカピカにしてるの!?』彼女は、純粋な、内なる悲鳴とともに心の中で考えた。恐怖で震える脚で、靴を脱ぎ、ベフゾドの靴とスニーカーが置かれている靴置き場に置いて、彼のアパートに入り、居間へ向かう彼について行った。
「着替えてくる、そこの枕のないクルパチャに座ってていい」ベフゾドは、用心深く、疑り深い声で、眉を細めながら言った。大きいほうの引き出しから白いシャツと灰色の短パンを取り出し、浴室へ向かった。
「クルパ――何!?」シズカは戸口に立ったまま、困惑して彼のほうに首をかしげ、眉をひそめた。
ベフゾドは足を止め、枕と掛け布団が置かれていない、床の厚い布団を指さして、無表情で疲れた声で言った。「クッションみたいなもんだ」
「ああああ。分かった、分かった!」シズカは軽く自分の額をぺちんと叩き、彼の枕と布団がない厚い布団の上に座った。
それから、ベフゾドは浴室へ向かい、自分の後ろでドアに鍵をかけ、制服用のハンガーを掴んだ。
数分後…
ベフゾドは浴室から出てきた。すでに着替えていて、制服がかけられたハンガーを持っている。「戻った」彼は、疑り深い、無表情な声で言った。彼は壁の専用のフックにハンガーをかけ、シズカのほうを向いた。「俺がいない間に、何も盗んでないよな?」彼は疑いに目を細めた。
クルパチャに快適そうに座っていたシズカは、否定するようにうなずき、手を振って拒否した。顔は愛らしい『>_<』の形になっている。「ベフゾドくん!違うよ!」
「分かった、分かった」ベフゾドは面白がるように呟き、ゆっくりとした、急がない足取りでキッチンへ向かった。それから、戸口の枠から好奇心いっぱいの表情で覗き込み、片眉を上げた。「ところで、スープいるか?」
「あ、い、いらない、ありがとう!」シズカは、無理に熱意のある笑みを浮かべて、彼を見上げた。心の中では、恐怖で震えていた。『頷いたら、毒を盛られる!』
グルルルルルルルル!
シズカは明るい、鮮やかな深紅に頬を染め、お腹を押さえて、恥ずかしさに悲鳴を上げた。
「『いらない、ありがとう』~?」ベフゾドは、いたずらっぽさに満ちた目と、愛らしく遊び心ある笑みで、彼女をからかった。「分かった、お前のためにスープを作ってやるなんて、絶対に、絶対にしないからな。それと、テレビを見るなんて、絶対にするなよ、分かったか?」彼は面白がる皮肉を込めて言った。
「…わ、分かった…」シズカは、小さな、柔らかい声で諦め、彼と目を合わせないようにして、床を見つめた。
ベフゾドは廊下をキッチンへ消えていき、その間にシズカは手を伸ばして、古いリモコンでテレビをつけた。
彼のテレビには、チャンネルが三つしかなかった。日本のドラマ/お笑い、これはたいていリアリティ番組やドッキリやメロドラマを放送していて、そしてアメリカのもの、これはたいてい『ドライヴ』『ゴッドファーザー』『ハンガー・ゲーム2』といった、黄金期の映画を放送していた。
シズカは、人々がプラスチックや空気で膨らませた障害物を飛び越えてチャレンジをクリアしようとし、失敗すると凍るような水に落ちる、日本のリアリティ番組にチャンネルを変えた。そして安堵とともに、心の中で考えた。『もしかして、思ってたほど悪い人じゃないのかも…?』
数分後…
ベフゾドはキッチンから戻ってきた。手には、コーヒー豆のカラフルな柄と『COFFEE』のラベルがついた小さなマグカップに入れた水を持っていて、それをローテーブルに置いた。その表情も声も、完全に無表情で超然としていた。「飲みたきゃ、水を飲め」
シズカはベフゾドのテーブルを見下ろした。「あの…」彼女はためらった。身をかがめて、マグカップの水に毒が入っていないか匂いを嗅いだ。何の匂いもしないのを確かめると、ゆっくりとマグカップを持ち上げ、慎重に三口で水を飲み、マグカップをテーブルに戻した。「ありがとう」
ベフゾドは空になったマグカップを拾い上げ、キッチンに戻り、シズカをテレビと一緒に残した。
20分後…
ベフゾドは拳に向かって咳をして、母親のような声を、遊び心を込めて真似ながら、キッチンから叫んだ。「シズカー!~こっちに来なさーい!~」
シズカは立ち上がり、浴室で手を洗い、そばにある小さなタオルで拭いてから、キッチンへ向かった。
そこでは、テーブルの上に、小さな緑のグリーンピースが入った、普通の、少し黄色がかったスープのボウルと、スープの中に沈められた金属のスプーン、そしてすぐ隣にパンの塊が置かれていた。
彼女は椅子に座り、スープの匂いを嗅いだ。想像を絶するほど、いい匂いがした。
「ほら、一口食べてみろ~」ベフゾドはキッチンの引き出しにもたれかかり、期待に満ちた笑みで、遊び心を込めて言った。
シズカは一瞬彼を見つめ、深呼吸をして、スプーンを一口食べた。彼女の背後に、すぐに少女漫画のキラキラ、花、星、黄色い背景が現れ、髪が謎の風でうしろになびいた。『神々しい。これは神の甘露だ』彼女は心の中で考えた。目は見開かれ、笑顔は三倍の大きさに戻って、食べつづけた。
『何なんだよ、あのエフェクトは?』ベフゾドは眉を上げ、純粋な困惑で目を見開いた。それから、彼女がスープを吸い込むように平らげているのを見て、軽くくすくす笑った。「喉に詰まらせるなよ!」彼は興奮した声で彼女を励ました。
「神々しいよ!!」シズカは、頬をふくらませて、スープを一口一口味わいながら言った。その目は大きく、情熱に満ちていた。
10分後…
シズカは、ベフゾドの反対側の厚い布団に座り、興味深そうにテレビを見ていた。
一方ベフゾドは、ノートパソコンを取り出し、白い長いイヤホンをつけて、『ニード・フォー・スピード ホット・パースート』をプレイしはじめた。
午後は、静かで、穏やかで、居心地がよかった。ベフゾドはいつも、あらゆる場所の電気を消していた。居間でさえもだ。だから、光の源は、テレビの青い画面とベフゾドのノートパソコンだけで、背景の音は、部屋を冷やすエアコンの低いうなりだった。
午後10時。
時計が午後10時を指したとき、ベフゾドは重く疲れ切ったため息とともに、ノートパソコンを閉じて、いつもの場所のテーブルの下に押し込み、突然立ち上がって、大きいほうの引き出しのところまで歩き、最後の仕切りを開けて、白い花の見事な緑/青/白の柄がついた白い毛布と、小さな紺色の枕を取り出し、シズカに手渡した。
「寝よう」ベフゾドは、疲れ果てた、だるそうな声で、彼女の上に立って言った。「お前はこの毛布で寝て、俺は自分のやつで寝る。テーブルが、俺たちを隔ててくれる」彼は、落ち着いた、柔らかい声で言い、突然愛らしくあくびをした。
シズカは枕と毛布を受け取った。枕を、厚い布団の端に置く。だが、それから彼女は、頬を深く赤く染めて、彼の視線を避けながら、希望に満ちた恥ずかしそうな声で言った。「あの…あ、あなたの…服を、貸してもらえない…?制服だと、汗かいちゃうから…」
ベフゾドはすぐに、かすかな、青白い赤みに染まり、困惑に眉をひそめ、舌打ちをした。「なんで俺が、そんなことをしなきゃいけないんだ?」彼は困惑した声で言った。それから、彼女の期待を見て、そして時間が刻々と過ぎていくのを見て、重くため息をつき、引き出しのところまで歩いて、最初の仕切りを開け、大きな黒いシャツと黒い短パンを取り出した。見た目からして、おそらくスポーツ用だろう。彼はそれをシズカに手渡した。「早くしろよ、それと、もしお前が臭くしたら、絶対に許さないからな!」彼は叱るような声で言った。
シズカは素早く彼の服を受け取り、立ち上がって、あまりの速さで、速度のぼやけた残像になるほど急いだが、浴室のドアはもうすでに閉まって鍵がかかっていて、ベフゾドをますます困惑させた。『今、あいつ、マッハ出さなかったか?もしそうなら、どうやって浴室の前でぴったり止まったんだ!?日本の物理法則は一体どうなってんだクソ!?』彼は純粋な困惑とともに心の中で考えたが、諦めて、深くため息をつき、座って、厚い布団の上に横になり、ガラケーをスクロールした。
シズカが、畳んだ学校の制服を手に出てくると、彼女はそれを、自分が寝る布団の隣に置いて、自分も横になり、毛布にくるまって、テーブルの下の隙間から彼を見て、あたたかくベフゾドに微笑んだ。「おやすみ!」彼女はあたたかくさえずった。
ベフゾドは携帯を隣のテーブルに置いた。その表情はまだ疑り深かったが、和らいでいた。「おやすみ、それと、もしお前が何かを盗むのを見たら、絶対に!」
それから、彼はリモコンに手を伸ばし、テレビを消した。部屋は、真っ暗になった。
ベフゾドは何も言わず、ただクルパチャの上で寝返りを打ち、もっと快適な体勢になった。すでにこんなふうな暗闇に慣れていたからだ。だが、かわいそうなシズカは?
彼女は恐怖に震え、毛布を目のすぐ下まで引き上げていた。『わ、私、いつも常夜灯をつけて寝てたのに…いつも悪夢に悩まされてたのに、この人の家は?月明かりしか見えないし、居間の開いたドアのせいで、廊下に何か怪物がいるみたいに思えちゃう!』
彼女の目には、エアコンの表示の『26°』と廊下以外、何も見えなかった。そして、彼女の心は、影をねじ曲げて怖い人影や形に変えて、すぐに彼女を弄びはじめた。
この悪夢のような状態が5分ほど続いたあと、彼女は、ほとんど泣きそうになりながら、顔を上げて、そっと呼びかけた。「ベフゾドくん!ベフゾドくん!」
「ん?!は?!」ベフゾドは頭を上げ、テーブルの反対側からシズカを見て、左右ばらばらにまばたきしながら、困惑して言った。「どうした!?」
「こ…怖いの…」シズカは、柔らかく震える声で呟き、周りを見回した。
「じゃあ、俺に何ができる?俺は常夜灯なんて持ってないぞ」ベフゾドは、眠そうな、不機嫌な声で、半開きの目で言ったが、突然いたずらっぽくニヤリと笑った。「抱き合いたいってか?~」
シズカの顔が、核爆発のような赤面で爆発し、それはベフゾドの部屋の暗闇の中で、文字どおり光った。耳からは文字どおり湯気が出て、目は二つの白い輪っかになった。
『待て、どうやって――』ベフゾドのいたずらっぽさは消え、眉は警戒にひそめられた。シズカの光る顔に気づいたのだ。
「う、うん!お願い!」シズカは泣き声を漏らし、すぐに手のひらで頬を覆った。「すごく怖いの、ベフゾドくん…」
ベフゾドは、静かで疲れたため息とともに、立ち上がり、足でテーブルを壁際まで動かし、ノートパソコンをナイフと一緒にその下に入れ、厚い布団を、彼女のすぐ隣に動かして、横になり、身を寄せて、彼女の頭をなでた。疲れて、眠そうな声で、なだめるように言う。「しーっ…よしよし…」
シズカは、仰天していた。ちょうど冷めたばかりの光る顔は、今度はさらに熱く燃え上がった。彼女は心の中で考えた。『普通の男の子なら、女の子の隣に寝ようっていう誘いを、すぐに断るか、変なことをしようとするのに、この人はただ…受け入れて、今は私の頭をなでてるの!?』そのとき、彼女は彼を見上げ、彼のいつものあたたかくて友好的な表情を見て、自分の目が劇的に輝いて、うっとりと彼を見つめるのを感じた。彼女は突然、身を寄せて、ベフゾドの背中をぎゅっと抱きしめ、顔を彼の胸にうずめた。
「は、はあ!?」ベフゾドは驚きに目を見開き、少しだけ顔が赤くなった。
「むぐむぐ…」シズカは彼の胸に顔をうずめ、顔を彼のシャツにこすりつけ、彼の匂いを嗅いだ。「バニラの匂いがする…」
ベフゾドは、またため息をつき、彼女を抱き返した。片手は彼女の腰に回って、軽くなでていて、もう片方は彼女の頭に回って、彼女を自分の胸に近づけ、頭をなでていた。
彼女は、今になってようやく、彼がどれほど完璧なのかを理解しはじめた。『この人は、私に変なことをしようとなんてしなかった…私に媚びたりもしなかった…私に印象づけようとしたり、見せびらかそうとしたりもしなかった…この人は、天使なの!?』彼女は興奮して心の中で思った。
一方ベフゾドは、驚きとともに、心の中で考えていた。『ときどき思うんだよな…なんでバナナって、ペニスと結びつけられるんだ?ナスも同じだよな?…ああ、俺の一番かわいくて一番優しい妹のおかげで、こいつとヤりたいとすら思わないんだよな』
夜は、とても穏やかに過ぎていき、二人とも、抱き合うのをやめようとはしなかった。もう二人とも、暗闇の影響を受けなくなっていたからだ。
つづく…




