一週間後!
2014年3月15日。
朝の太陽が、いつもの混沌とした日常に没頭している3年D組に、さんさんと降り注いでいた。
丸一週間が過ぎ、ベフゾドは周囲の環境にすっかり慣れ、今ではみんなに対してより親しげで、より話し好きになっていた。この一週間、彼は本当に良い生徒だった。彼は今、興味深そうに自分の成績表を眺めていた。『不透明な眼鏡をかけた学級委員長』のお約束のように100点を取るわけでも、少年漫画の主人公のように考えうる限り最悪の点数を叩き出すわけでもなく、彼が取ったのは、なんと88点だった。
『ふぅ…落第じゃなかった…』ベフゾドは成績表を指でつまんだまま、自分の席で静かに安堵の息を吐いた。口元には、かすかな誇らしさに満ちた小さな笑みが浮かんでいた。
現在、午前8時10分。カナエ先生はまだ来ていない。
ベフゾドは成績表を黒くて大きなリュックにしまうと、隣に座るシズカのほうを見上げた。「なあ、シズ」彼は茶色の瞳に好奇心を浮かべて彼女を呼んだ。その日本語は、一週間前よりもずっと上達していた。「うちの学校って…プール、あるのか?日本の学校には最低でも一つはあるって聞いたんだけど」
ベフゾドの数学の宿題を信じられないほどの速さで写していたシズカは、その質問にぴたりと固まった。それから、ぱっと明るい笑顔と、元気いっぱいの丸い茶色の瞳で彼を見上げ、うなずいた。「うん!うちの学校には、プール専用の建物がまるごと一つあるんだよ!あと二ヶ月待てば、体育の先生がそこで泳がせてくれるんだって!」
ミカサの胸を、バレないようにこっそり黙って見つめていたキンジの目が、突然ぴたりと止まった。彼はシズカのほうを向き、目をハートの形にして、鎖骨のあたりで両手を丸めた。「二ヶ月後ぉ!?女子の水着が見られるのかあああ!?ぐええええ――」彼は後ろにのけ反り、鼻から噴水のように血を噴き出した。
一方のミカサは、丸めた教科書をキンジの頭に思いきり叩きつけた。呻くキンジの頭のてっぺんに、漫画みたいに巨大なたんこぶが膨れ上がる。「キンジくん、これ以上うるさくするなら、あんたの欲望のこと、お母さんに言いつけるわよ」
キンジの顔が一瞬で紙のように真っ白になった。次の瞬間、彼はふざけた敬礼をしてみせた。「は、はいっ、マム!」
その二人を、ベフゾドは心底困惑した目を丸くして見つめていた。眉は戸惑いにひそめられている。そして、心の中でこう考えていた。『なんであいつの頭に、あんな速さでたんこぶができるんだよ、クソ!?なんでみんな、あいつが鼻血で一リットルも血を失ったって事実を無視してんだ!?』
だがシズカはくすっと小さく笑い、頬杖をつきながら、ベフゾドの鼻先で手を振って、彼を存在の危機から呼び戻した。「ぷっ、あはははは!すっごく困ってる顔、かわいい!」
ベフゾドはぱちぱちと瞬きをして彼女を見上げ、ほのかに、あたたかく微笑んだ。目を閉じてうれしそうな三日月の形にして、うなずく。「褒めてくれて、ありがとう…本当に感謝してる」彼はあたたかい声で返した。
一列目の一番後ろの席では、一方、優しいクーデレのメグミが、妄想癖のある中二病のリュウと出会う、お約束のイベントが起きていた。しかも彼女は、このイキリ野郎が頑なに無視し続けるクソ弁当を、なんとか食べさせようとしていたのだ。
リュウは包帯を巻いた腕にあごを乗せ、メグミを見下ろしたまま、手をひらひらと振って突っぱねた。頬にはうっすらと赤みが差している。「チッ。女、貴様の賄賂など要らん!我が内に宿りし深淵の竜が――」彼は低く、尊大で、それでいてどこか穏やかな声で言った。
「リュ、リュウくん…お願い、あなたのドラゴンの怒りを…少しでも鎮めてあげたいの…」メグミは必死にリュウを見つめ、恥ずかしそうで、やさしくて、か細い声で言った。黒猫の絵が描かれた弁当を、神聖な供物のように掲げながら。
「チッ。我がドラゴンに聞いてやる!」リュウは荒々しく言い返したが、頬の赤みはさらに濃くなっていた。彼は包帯を巻いた前腕にこそこそと何かを囁くと、メグミのほうに向き直り、弁当を受け取った。「……ふ、ふん!ドラゴンが承諾した!だが、今回だけだぞ!」
メグミは無表情で空虚な微笑みをかすかに浮かべ、くるりと背を向けて自分の席へ戻ろうとした。だが振り返った瞬間、その頬はバラ色に染まっていた。その傍らで、リュウは弁当をバッグに素早く突っ込み、自分も真っ赤になっていた。
ベフゾドは椅子の背に肘をかけ、手のひらにあごを乗せていた。彼はその騒ぎを、苛立ちではなく、本物の、科学者のような好奇心で眺めていた。リュウから視線を離さないまま、小さな、困惑した声でシズカに話しかけた。「なあ、あいつら、いつもあんな感じなのか?あいつ、いつもああやってえり好みしてるのか?」
椅子にもたれて頭の後ろで手を組んでいたシズカは、体を起こしてベフゾドの視線の先を見ると、指で双眼鏡の形を作って目に当てた。たちまち面白そうにニヤリと笑い、くすくす笑いながらベフゾドに囁き返した。「えへへへへ!うん、一回目の授業の時からずっとあんな感じだよ」
ベフゾドは頭の中で素早く計算し、ものすごい勢いでシズカのほうを振り向いた。眉が本物の驚きで吊り上がる。「ってことは、2005年から!?」
シズカは笑顔でうなずき返し、握った拳を口元に当てた。目はうれしそうな三日月の形になっている。「うん!」
「冗談だろ…」ベフゾドは口から静かに安堵の息を吐き、呆れたように首を振って、髪の毛をぎゅっと掴んだ。
だがそのとき、キキョウが入ってきた。長い紫の髪を後頭部でお団子にまとめ、頭の上に紫のサングラスを乗せ、ピンクの細めた瞳から、純粋な色気のオーラを放つ少女だ。彼女はすぐに、三列目の一番後ろの最初の席に座るリュウタのもとへ歩み寄った。「あらあら~、リュウタくん、ずいぶん変わったじゃない~」彼女は紫にネイルされた手の、細い指先でリュウタのあごをくいっと持ち上げ、視線を上げさせた。
手を組んで机に向かい、興味深そうに歴史の教科書を眺めていたリュウタは、驚きで固まり、軽く汗をかきながら視線をそらした。「キ、キキョウさん…僕たちを置いて、東京へ…ば、バカンスに行ってしまってから、お久しぶりです…!」彼は自分の言葉につっかえ、真っ赤になっていた。
一方、一列目の一番前の机では…
ベフゾドはシズカの耳元に顔を寄せ、目を細めてキキョウを見つめたまま囁いた。「シズ、あの人は誰だ?」彼は好奇心の混じった、小さな声で言った。
「ああ、あの子はキキョウさんだよ!」シズカは親しげな笑顔で囁き返し、彼の顔を見た。「今月はお休みしてたの。ご両親と東京にバカンスに行ってたんだって!」
ベフゾドの眉がひそめられ、彼は混じりけのない、純粋な困惑の中で何度か瞬きをした。「なんっでこの学校は、生徒が何週間も他の県に旅行に行くのを許してんだよ、クソッ!?」彼は好奇心と、少しの困惑を含んだ声で囁き返した。
シズカはさらに大きく笑い、ベフゾドの鼻先を指でいたずらっぽくちょんとつついて、はしゃぐ声で囁き返した。「あの子、お金持ちなんだよ、ベフゾドくん!」
ベフゾドは自分の鼻を見下ろし、しばらくそのままでいた。それからただ大きく息を吐き出し、前を向いて黒板に向き直った。「…確かに」彼は降参したような、疲れ切った声で言い返した。
突然、キキョウが二人の机にやって来て、両手を机についた。彼女は誘うような低い声で言った。「あらあら~、このかわいい子はだぁれ?~ 外国の子みたいね~…」
「キキョウさん!うちの新入りに、そんなに早く近づかないで!」シズカは愛らしい怒りで言い返し、ほっぺたをふくらませた怒ったハムスターのようになって、両腕を広げてベフゾドをキキョウから隠した。茶色の瞳は、縄張り意識の怒りに燃えている。
キキョウはシズカを無視して、あの軽やかで魅力的な微笑みを浮かべたまま、ベフゾドを見下ろしていた。
ベフゾドは、顔を赤らめることも、色目を使い返すこともせず、ただ椅子の背に体を引いて自分のパーソナルスペースを取り戻した。それでも態度は友好的なまま、表情を素の顔に切り替える。「シャフカトフ・ベフゾドです。ロシアからの転校生です」彼は嫌悪感のあまり、あごを食いしばっていた。
「あらぁ~」キキョウは低く、かわいらしい声で甘く囁き、ベフゾドの頭を撫でようと手を伸ばした。「ロシアの男の子で、しかも背が高いなんて~?私のハートがもたないわぁ~、おほほほほほ~」彼女は軽やかで、上品なのに悪役めいた笑い声を漏らした。
ベフゾドは、ゆっくりと距離を詰めてくる彼女の手から必死に逃れようと、どんどん後ろにのけ反っていった。目と眉は苛立ちで細まっている。
だがそれ以上のことが起こる前に、ドアが開き、カナエ先生が入ってきた。目をうれしそうな三日月の形にして、これ以上ないほど明るく、熱意に満ちた様子を全身から放っている。「はーい、みんな、席に着いてー!今日の数学の授業は、かなり大変よ!」
リュウがすぐさま立ち上がり、机をぎゅっと掴んで、必死の形相で先生に吠えた。「しかし先生!それでは、俺の深淵の封印が弱まってしまう!」
「うっさい、黙りなさいよ!あんたの封印なんて、誰も知ったこっちゃないわよ!」キララは苛立ちながら言い返し、腕を組んだ。こめかみには、漫画みたいに巨大な『╬』が浮かんでいる。
コガネは面白がってキララを眺め、タカコは無邪気にパニックになりながら彼女を見つめ、モモカは優しく考え込むように見守っていた。そして眼鏡をくいっと押し上げると、まぶしいほど真っ白な不透明の光が生まれた。その間も、彼女自身の紫の瞳はうれしそうな三日月の形になっていた。
ベフゾドは困惑して独りごちた。眉を吊り上げ、机に身を乗り出す。「待て、今の…どうやって眼鏡に、あんなこと――」
「まあまあ、ここで喧嘩を始めるのはよそう――」ジンがすぐに割って入り、立ち上がって、心配そうな表情でカナエ先生を見た。
「――数学…の時間…」リカは、紺色の瞳で机を見つめながら、ピンクのウサギのペンを胸に抱きしめ、空気に向かってそっと囁いた。
「いやだあぁ!数学だけは!」キンジは疲れ切った様子で両腕に顔をうずめ、大げさに嘆いた。
ミカサは、キンジの反応に目を回して首を振った。心底うんざりしているようだ。
「さあ、始めましょう!」カナエ先生は黒板に向き直り、日付と、新しい授業のテーマを書き込んだ。
ベフゾドは、本物の好奇心に満ちた穏やかな表情で、素直に黒板の内容をすべて書き写した。目は大きく見開かれ、笑みは消えている。
一方、今は三列目の真ん中と最後尾の机の間の、サユの隣の席にいるキキョウは、磨き上げた紫のネイルを誇らしげに眺めながら、小さく鼻歌を歌っていた。
サユのほうは何も言わず、うれしそうな三日月の形の目と、完璧に甘い巨大な少女の笑顔で、カナエ先生を見つめていた。けれど、ふと周りを見回したベフゾドには、その作り物の仮面が明らかに見えていた。
『なんで彼女…あんなに居心地悪そうなんだ…?』ベフゾドは困惑して小さく呟き、首をかしげて、疑わしげに目を細めた。
その呟きを耳にしたシズカが、ベフゾドの肩をとんとんと叩いた。彼が振り向くと、彼女は微笑んだ。「あの子はいつもああなんだよ!いつも明るくて、成績は完璧で、男の子たちがたくさん追いかけてきて、告白してくるの!」シズカは、先生が見ていないか横目で確認しながら、熱を込めて囁き返した。
三列目の一番後ろの席に座るアヤトは、一方で、茶色の虚ろな目で皆を観察していた。『すべては…俺の計画通りだ…』彼は傲慢に心の中で呟き、組んだ指にあごを乗せた。
一方、カナエ先生のこめかみには怒りの『╬』が浮かび、丸めた教科書を机に叩きつけた。それでも、不気味なほど明るい表情は崩さない。「3年D組!どうして授業の準備ができているのは、シャフカトフくんとヒイラギさんだけなの!?他のみんなはどうしたの!?」
「ありがとうございます…」ベフゾドはカナエ先生に軽くうなずき、かすかに微笑んだ。そして先生が書いたことを、すべてノートに書き写し続けた。
「ありがとうございます、先生!」シズカは目をうれしそうな三日月の形にして、あたたかくカナエ先生に返事をした。
カナエ先生は、目から誇らしさの涙をぬぐった。「あなたたち二人だけが、私がまだ辞めてない理由なのよ…」彼女は、一列目の一番前の席にしか聞こえないほどの小声で呟くと、黒板に向き直り、咳払いをして、落ち着きを取り戻した。
授業の残りは、いつものように、ほとんどの生徒にとっては退屈で、ベフゾドにとっては本当に興味深いものだった。
キーンコーンカーンコーン――
「はい、授業は終わり。体育の着替えに行きなさい!」カナエ先生は明るく宣言し、教壇から授業計画を掴むと、できるだけ素早く教室を出ていった。
ベフゾドはすぐにノートと教科書とペンを黒いリュックに突っ込み、さっと立ち上がって、教室から体育館の更衣室へ向かった。
中にいた、ネオンカラーの髪の数人は、ベフゾドをあまり気にしなかった。彼のほうも気にせず、素早く着替えを済ませた。日本の学校の標準的な体操服、袖付きのジャージ風の黒いTシャツと、黒い短パンだ。
ベフゾドが外に出て、体育のための巨大なグラウンドまで歩いていくと、彼のあごは本物の驚嘆でぽかんと開き、眉が驚きで吊り上がった。『待て…ここのグラウンド、本当に塵ひとつなく綺麗だぞ?なんなんだよ、一体?』彼は困惑して心の中で呟いた。
だが彼はすぐに頭を振った。体育教師ヤマダの笛の音が聞こえたからだ。ヤマダは、少し太った禿げかけの男で、ライムグリーンの髪をし、猛暑だというのに赤いジャージを着ていた。彼は3年D組全員を自分のもとへ呼び集めていた。「よーし、3-D!今日は校庭10周と、懸垂のテストだ!」ヤマダは、攻撃的なまでの情熱で吠えた。
整列したまま周囲を見回していたベフゾドは、背後を見て、わずかにあごを開き、驚嘆した。
ベンチには、数十人の生徒が座っていた。『3年A組』という白いバッジをつけた男子は全員、ひょろひょろで、痩せこけていて、簡単に折れそうに見えた。その隣のベンチには、『3年B組』のバッジをつけた生徒たちが座っていて、そのバッジをつけた男子は全員、ジョジョみたいな体格だった。
3年D組の男子たちは…正直、悪くなかった。リュウタとジンは、純粋な筋肉と長身の骨格で、とんでもなく鍛え上げられていた。カイトは筋肉がなく、ただ本当に太っているだけだった。リュウ、キンジ、アヤトは細身だった。そして、まともで現実的な体つきをしていたのはベフゾドだけだった。引き締まっているが、しっかり鍛えられていて運動神経がよさそうで、シャツの下には、腹筋の輪郭がまったくない、平らなお腹があった。
ピーーーーーッ!ヤマダが笛を吹き、3年D組にランニング開始の合図を出した。クラスはゆっくりと走り出した。走り方は、みんなそれぞれ違っていた。百パーセント萌えで、大きな胸を持ち、雑誌の表紙から抜け出してきたようなモモカから、跳ね回るカイトのお腹まで。
10周は拷問のようだった。元キックボクシングのグランドマスターであるベフゾドでさえ、その暑さには耐えられそうになかった。想像を絶するほど汗をかきながらも、彼は3位でついていき、わずかに息を切らしていた。ジンとリュウタは10周を楽々と走り切ったが、息継ぎの音は一回ごとに前よりも大きくなっていった。
ヤマダは、ジンとリュウタに向かって純粋な畏敬の念で叫びはじめ、口に手を当てた。「素晴らしい!」
クラスはようやく、懸垂の前の短い休憩に入った。
数分後…
ベフゾドはベンチに座り、ペットボトルの水を丸ごと飲み干して、後ろにもたれかかり、灼熱の太陽のせいで激しく息を切らしていた。『クソ…なんで…こんなに…暑いんだ…?』彼は心の中で呟いた。
「信じられん!」
ベフゾドは、どこかからヤマダの怒号が聞こえたのに気づいた。
ベフゾドがゆっくりと立ち上がって声のほうを見ると、3年D組全員が、リュウタとジンが二人とも腕立て伏せ100回の大台に達するのを見守っていた。
『はあぁ!?なんなんだよ、クソ!?物理的にありえねえだろ!』ベフゾドは信じられない思いで心の中で叫び、口をぽかんと開け、衝撃で目を細めた。彼は、畏敬と魅了が入り混じった気持ちで、リュウタとジンをじっと見つめた。
「ふふ~、これぞ本物の男ね~」キキョウは面白そうに言い、頬をうっすら染めて、唇を指でとんとんと叩いた。
「見せびらかしね」ミカサは苛立ちながら鼻の付け根をつまみ、ゆっくりと息を吐いた。
「統計的に、世界中で連続100回の腕立て伏せができる人は、たった0.05%しかいないのよ!」モモカは眼鏡を優しく押し上げ、あの伝説の不透明な光を生み出しながら言った。手には、3年D組の運動記録をつけているタブレットを持っている。
「二人とも、かっこいい!」シズカは星のように輝く瞳で二人を見上げ、燃えるように熱い頬を両手で押さえた。
次はキンジの番だった。彼は腕立て伏せを5回しかできなかった。ぎりぎりで。そしてクラスメイトたちの、感心しない冷たい視線で迎えられた。「な、なんだよ!できる分はやったんだぞ!」彼は防御するように両手を上げた。クラス全員が目を回したが、ベフゾドだけは、完全に無表情で頬をかいていた。
次はベフゾドの番だった。彼は手のひらの埃を払い、汗で握力が落ちないようにシャツで拭うと、鉄棒に飛びついた。一回目の腕立て。二回目。三回目…十回目、十一回目…二十回目…二十一回!ベフゾドは頑張りすぎて真っ赤になっていたが、下に降りて体育の成績100点を獲得し、シズカの隣に歩み寄ると、激しく息を切らして膝に手をついた。
「すっごくかっこよかったよ!」シズカは、うれしそうな丸い茶色の瞳と、元気いっぱいの両手の親指を立てて彼を迎え、歯を見せて満面の笑みで笑った。
「――ありがとう」ベフゾドは、激しい息切れの合間に答え、お返しに親指を立ててみせた。目はうれしそうな三日月の形になっている。
キーンコーンカーンコーン――次の授業、地理を告げるチャイムが鳴った。
ベフゾドは体育館の更衣室で素早く着替え、教室に戻り、ドアを開けて、リュックを机の横に掛けた。
授業が始まってから15分ほどが経った。そして、それは、まあ…それなりに面白かった。
「はい、みんな、地球上の大陸を全部言ってみて!」カナエ先生は、教壇にもたれかかって、熱意を込めて言った。
モモカが立ち上がり、眼鏡をくいっと押し上げた。「南アメリカ、北アメリカ、ユーラシア、アジア、南極、アフリカ、オーストラリアです!」彼女は優しい声で列挙した。
「正解よ、モモカさん!明日のテストに10点プラスね!」カナエ先生は何度か手を叩いてから、ベフゾドのほうを向いた。「シャフカトフくん、『R』で始まる国を一つ言ってみて!」
ベフゾドは頬を手のひらに預けて先生の話を興味深く聞いていたので、すぐに立ち上がり、やわらかい声で答えた。「ロシア」
「よろしい!では次、アヤトくん、『C』が入っている国を言ってみて!」カナエ先生は、三列目の一番後ろの席を、チョークで熱意たっぷりに指した。
「どうでもいい」アヤトは、『感情のない』、静かで虚ろな声で言い、全員に、気まずさと痛々しさで息を吐かせた。「パンゲアを分けて何になる?この地球はすべて俺のものだというのに」
「だって、石鹸すら使いこなせなくて、やっとのことでシャワーを浴びるようなやつが、世界なんて操れるわけないだろ?」ベフゾドは、からかうような笑みを浮かべながら、アヤトに向かって眉をひょこひょこ動かして、声に出して言った。
アヤトはたちまち顔を赤くし、落ち着きを失いはじめ、声を裏返らせながら、必死にベフゾドを指さした。「だ、黙れ!貴様など、ただの駒に過ぎん!」
ベフゾドはすぐさま、からかうような、遊ぶような声で甘く囁き、身を乗り出した。「あはは、うちのかわい子ちゃんが真っ赤になってる~。ほっぺた、つまんであげようか?~」
たちまちクラス全員が、おおっぴらに笑うか、口を覆うか、くすくす笑っていた。ただ一人だけは、目を見開き、恐怖に満ちた顔でベフゾドを見つめ、歯を食いしばって、身を守るように歯をむき出しにしていた。
『あいつ、動じもしなかった…』リュウは、リュックで顔を隠そうとしながら心の中で呟いた。『あいつは容赦のない怪物だ!クラスの闇の黒幕を、組織的に解体しやがった!危険なライバルだ、なんとしても避けなければ!』
アヤトは黙り込み、目を暗くして、拳を握りしめながら席に座った。
カナエ先生は、笑いすぎて出た涙を拭い、姿勢を正して咳払いをした。その様子は、彼女の教師人生の中でも、今がいちばん上機嫌だった。「はい、はい、みんな、席に着いて!続けるわよ!」
35分後…
キーンコーンカーンコーン――
ついに昼休みになると、ベフゾドはガラケーを開いてYouTubeを見ようとしたが、マリナからのメッセージに気づいた。
[SubMarina]: ゾディクちゃん、私のことは心配しないでね、今日はママが自分で家まで連れて帰ってくれるって!
ベフゾドは、唇に小さな愛情のこもった笑みを浮かべて返信を打った。
[Shavkatov_Play]: ok
そして、またYouTubeを見はじめた。
たいていの主人公なら、妹のことを心配したり、大げさに泣いたり、神経質になったりするだろう。でもベフゾドはそうしない。気にかけていないからではない。それどころか、彼はこの世の何よりもマリナを愛している。だが、マリナが他でもない彼に、ママが家まで送ってくれると言ったのだから、彼女は安全だと分かっているのだ。
数時間後…
キーンコーンカーンコーン――
ついに終業のチャイムが鳴ると、ベフゾドは教科書とノートとペンをバッグに突っ込み、クラスメイトたちに手を振って別れを告げ、歩き去った。
だが出口で、彼は目を見張るほど美しい少女を見かけた。濃い色の長い髪をツインテールに結い、明るく青い丸い瞳をしていて、甘やかされたお嬢様のオーラを放っている。彼女はベンチに座っていて、その足元では、高級なスーツにサングラスをかけた、身長300センチの黒髪のボディーガードが、彼女の靴を履き替えさせていた。
ベフゾドが彼女を無視して立ち去ろうとすると、いつの間にか目の前に現れたその少女に、行く手を塞がれた。彼女は告発するように人差し指を彼の胸に突きつけ、もう片方の手を腰に当て、眉をひそめ、怒りに満ちた目で身を乗り出した。「ちょっと、あなた!?この学校で一番美しくて、一番お金持ちで、一番カッコいい女の子にお辞儀もしないで、帰るつもりだったの!?」
ベフゾドは困惑して瞬きをし、彼女の手を無理やり胸から下ろさせた。「当たり前だろ。なんで俺が頭を下げ――」言葉の途中で、ボディーガードが彼の鼻に拳を叩き込んだ。ボディーガードはニヤリと笑い、ベフゾドは数歩よろめいて後ずさった。
「アオイ様に頭を下げない奴は、この俺が相手になる」ボディーガードは、傲慢な笑い声とともに宣言し、サディスティックにニヤついた。
ベフゾドは血の出る鼻を押さえながら、ボディーガードを見上げた。恐怖はなく、恥ずかしさの混じった純粋な怒りだけがあった。「てめぇらクソ共が…ぜぇぇったいに後悔するぞ…」
「ハハハハハハハハハ!」
アオイとタラスは、同時に大声で笑い出し、互いにもたれ合った。
「やれるものならやってみなさい、坊や!」アオイは傲慢に宣言し、咳払いをして両手を腰に当てた。「楽しみに待ってるわ、ちゃお~」
ボディーガードは、立ち去る前に、ふざけてベフゾドの肩を押した。
ベフゾドは、悲しげな眼差しと、見捨てられたような感覚と、死にたくなる衝動と、血の出る鼻と、自分の尊厳のために深く根づいた復讐心を抱えて、家路についていた。
たいていの主人公は、すぐさま戦いに飛び込んで、相手を叩きのめす。だがベフゾドは、それがまったくの無意味だと悟れるだけの賢さと、現実的な考えを、ずっと多く持っていた。『あいつがそんなに金持ちで…学校の敷地内で俺を殴ったってことは…訴えられるってことだ』彼はどこか必死な思いで心の中で呟き、あごを食いしばって、目に流れずにいる涙を溜めていた。
10分後…
ベフゾドは、9階建てのアパートに着くとほっと息を吐き、6階まで上がり、鍵を差し込んで、ゆっくりとドアを押し開けた。
彼は素早く靴を脱ぎ、服を着替え、血の出る鼻に二枚のコットンを当てて手当てをしながら、心の中でこう思った。『あのクソ野郎が折らなかっただけ、神に感謝だな』そして、自分のために夕食を作った。ボルシチだ。
食後は皿を洗い、冷たいシャワーを浴びた。シャワーから出ると、部屋着に着替えた。真っ白なTシャツと、黒い短パンだ。宿題を済ませ、立ち上がった。
彼はキッチンに歩いていき、ビールジョッキに大きなコーヒーを淹れると、ノートパソコンのところへ歩いていった。彼は一晩中、日本の法律をスクロールして調べ続け、将来アオイに対する法廷で使えるものを、すべて確認し、メモし、活用しようとしていた。決意と、恨みと、復讐心に満ちて。
つづく…




