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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
二章 魔族領編 王の資質

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予感

王城の城下町では最近奇妙な噂が流行っていた。


「よお、聞いたかあの話」

「例のドラゴン殺しのことか?」

「そうそれだ。村に現れた迅雷竜フルミニ・ドラコを一撃で仕留めたって話だ」

「一撃!?大したもんだ。どんな屈強な野郎なんだそいつは」

「それがまだ年端も行かぬ子供だっていう話だ」

「はぁ?何を馬鹿なこと言ってるんだ。与太話でももう少し現実味があるぞ」

「それが、あながち嘘でもなさそうなんだ」


「その話、あたしにも聞かせておくれよ」

フードつきのローブをかぶった女が話に加わってきた。

顔の半分に火傷を負っており髪で隠している。


「お?ねぇちゃん、一緒に飲むか」

「ああ、それよりさっきの話の続きを聞かせて」


王城から西にひと月ほどの場所に『竜の巣』と呼ばれる場所がある。

今の時期にはそこに巣くう竜が活性化し、近くの村が襲われる事が度々あるそうだ。

西大陸の人間にとって、竜は触れてはならないものであり、襲われても通り過ぎるのを待つ天災のようなものだった。


ところが、その子供は果敢に立ち向かい一閃に斃したという。

「その村は竜信仰の強い村でな、子供を生贄にして救われると信じてたらしい。

それでその村にやってきたその子を生贄にしようとしたら、あっさり倒しちまった」


「そりゃすげえ」

「。。。」

「この話には続きがあってな、竜を倒した後村人にその子供がこういったんだそうだ」


『王として命じる!今後二度と子供を生贄にするなど愚かなことはするな』


「王?その子供、自分のことを王って言ったの?」

女が繰り返し確認した。


「ああ、そうらしいぜ。それで、フードを脱いで見せたら金髪だったって」

「。。。ありがとう。面白かったわ」

女はスッと消えるようにその場を離れた。


酒場を出た女は仲間に念話で連絡を入れた。

(噂の主はあの子に間違いなさそうだけど。。。)

(気になることがあるのか?)

(少し物言いが彼らしくないというか、以前は自分を王と語るような図太い性格には見えなかったのよね)

フードの端を上げて周りを警戒する女、サーニャは自分の持つ印象との違和感を伝える。


(本人ではないと?)

(そうは言わないよ。金髪でそこまでの戦闘力を持つ子供なんて、こんな所に何人もいると思えないね)

いくら魔族領であっても竜を一撃で倒す者などそうそういるはずもない。

(分かった。引き続き連中の動向を探ってくれ)

(了解)

「さてと」

女はそう言うと人ごみに消えていくのだった。


。。。


ぶっふぉ!


食事中のカイルが、今聞いた話で口の中のものを吹き出した。

「きったないなあ」

リタが白い目で見る。

皆は、街道沿いの休憩地点となる村の食事処にいた。


「竜を素手で倒した子供がいるって?!」

隣の席で話が盛り上がっていた数人の男に詳しい話を聞こうとした。

「ああ、知らねーのか?今、城下じゃその噂で持ちきりらしいぜ」

「なんでも金髪の王を名乗る子供が、数十頭の竜をばっさばっさとなぎ倒したって」


大分、話に尾ひれがついている感じだが、間違いない。。。アインだ。

男たちの話では西の山脈を越えた先。竜の巣の近くでそんな話が出たそうだ。

「そうか、わしらは南東の街道沿いに転送されたが、小僧だけ西側に飛ばされたようじゃな」ナージャが煙草をふかしながら話す。


「そんな、落ち着いてていいんですか?アインの話がやっと聞けたって言うのに」

ミリーはすぐにでも向かいたいと言い出す。

「まあ、落ち着け、どれ。。。」

ナージャは地図を取り出して机に広げる。

リタとカイルが食べかけの食事の皿を持ち上げる。


「今、わしらはここ、王城まであと数日の位置にいる。噂の出所は西の竜の巣のあたりじゃな」

そのあたりは街道は通っておらず、王城に向かうには大きく山を迂回する必要がある。

「氷の季節を迎える前に王城に着くには、街道を通っていたら間に合わんと考えたんじゃろうな」

その判断は正しいと老婆は言う。しかし。。。

「しかしじゃ、この竜の巣を突っ切ることになる」

ナージャはとんとんとその場所を指で叩く。

よほど自信があってのことか、それとも情報を持ってなかったのか。

「何にしても、この位置から王城を目指すのなら、この街道を通ることになる。わしらはここにある村に先回りして待つのが順当じゃな」


一行は少年と合流すべく、次の目的地を定めた。


。。。


王城では連日、城下から届く噂で大騒ぎになっていた。

お迎えするはずだった王候補の一人である事実を知るのは、王城の関係者だけだったからだ。

秘密裏にお迎えして大々的にお披露目する計画がすべて台無しになった。


執政官の一人、森人エルフの長の息子でもあるエラランは頭を抱えていた。

「お迎えするはずの王が、西の最果てに現れたというのは事実なのか?」


「城下の噂ではそのようです。今は真相を確かめるために配下の者を使って情報を集めています」と、もう一人の執政官の草人ハーフウッドのカルが答える。


「それにしても竜を素手で屠るとは、今度の候補はなかなかやるのお」

土穴族(ドワーフ)の執政官ゴージが、そのひげを撫でながら感心したように笑う。


「笑っている場合か!あああ、こんなこと親父殿の耳に入ったらなんて言われるか。。。」

「それよりさあ、早く見つけたほうがいいんじゃない?その王様候補ちゃん」

有翼族シルフの女執政官フアラがあけすけな物言いで話を振る。


キッとにらむエラランの視線をフアラが軽く受け流す。

「分かってるなら、協力したらどうなんだ?貴殿の一族が最も身が軽かろう」

「口も軽いけどねぇ」

そうだったと突っ伏すエララン。


城内のドタバタを見て少女がつぶやく。


「面白くないわね」


金髪の少女は傍らに火の精霊を仕えさせ、玉座に座りつまらなそうにしていた。

何かが変わるような、浮足立つような期待感に王城は包まれていた。


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