ゴーレム討伐
ズゥーン ズゥーン
ロックゴーレムの頭が丘の向こうに見える。
まだ相当の距離があるはずで、どれだけ巨大かが想像できる。
「この辺の牧草も、今年は使えんなぁ」
牛飼いが嘆く。
「そろそろ行くぞ。野郎ども!気合入れてけ!」
「うぉぉぉ!」
全員がロックゴーレムに向かって走り出した。
「え?、ちょっと」
リタは作戦をまだ聞いておらず焦る。
男たちは作戦も何もなく、ただロックゴーレムに突っ込んでいった。
「うぉぉぉ」
そして、その巨大な脚で蹴散らされる。
「うわぁぁぁ」
後方でその戦いぶりを見ていたリタは頭を抱える。
男たちはただがむしゃらに突っ込んでは、撃退されるを繰り返す。
「あーこれ、子供の玉蹴りと同じだわ。。。」
昔見たボール遊びをしてる子供を思い出し頭痛がしてくる。
ただボールを追って右往左往するだけの子供と同じく、男たちに統制は無かった。
本人たちは真剣だが、突っ込んでは蹴散らされるシーンを遠くから見てると、大人にじゃれてる子供のように見えて微笑ましい。
1回目の攻撃が何の成果もあげずに戻ってきた男たちは、未だ戦意をなくさずもう一度攻撃を行った。
2回目もゴーレムに蹴り飛ばされる。
3回目に拳で弾き飛ばされる。
もう黙ってみてられなくなったリタは、あきれてガルフに言った。
「これいつまで続けるのさ?」
「勝つまでに決まってるじゃねーか!」
「あんたたち、こんなことで、勝てたことあるのかい?」
「。。。」
全員が黙り込む。
「勝ったこともあったぞ。。。ずいぶん前になるが」
ガルフが目を逸らしながら言う。
「昔は、軍司さんがいたからなあ」
誰かが愚痴をこぼす。
「軍司?」
リタが聞き返すとその男が答えた。
城から軍司が派遣されていたのだと言う。
「赤目のカーラって女の軍司さんだったんだが、これが頭の切れるお人でなあ。わしらは、その人の言う通り動いただけでゴーレムを倒せたんだわ」
「。。。へえ」
知っている名前が出て驚いたが、納得した。きっと配置換えを願って火守になったんだな。
この連中を指揮するのは難儀だわと心の中で同情した。
「とにかく、このまま突っ込んでるだけじゃいつまでも終わらないんだから、作戦を立てましょう」
「えぇー」
不服そうな声を上げる男どもを睨みつけ黙らせるリタ。
「いいかい?いいよね?」
「。。。はい」
リタの提案で、まずこの辺の地形を把握するため、牛飼いに地図を描かせた。
丘を中心に牧草地が広がり、北側には山肌が崩れた所がある。
「ここの崖みたいなのは何?」
山にくぼみが出来ており、崖崩れの跡のような場所に気付く。
「そこは昔、ゴーレムが崩した坑道があったとこだな。今じゃ復旧も出来なくて放置してるはずだ」
「これ、使えそうね。。」
リタは皆に説明した。
この鉱山跡にゴーレムをおびき寄せて、崖崩れを起こして動きを止める。
「ここの鉱山抗は残ってるの?」
「ああ、まだ穴は残ったままなはずだ」
この穴を崩すことで崖崩れを起こせないかと考えた。
「おおい、発破屋。どうだ、崩せそうか?」
別の抗夫ができそうだと答える。
「よし、じゃあ作戦を言うわよ。まず、ゴーレムをこの場所までおびき寄せる。ここに来たらがけ崩れを起こしてゴーレムの動きを止める。動きを封じたゴーレムを全員でタコ殴りにする」
雑な作戦だが、これならこの連中にも理解できそうだ。
「崖を崩すタイミングはどうするんだ?」
「それは、あたしに任せて。あれを使うから」
ガルフはその言葉の意味を理解した。
「じゃあ、始めるよ。みんな準備に入って」
『応!』
各自が持ち場に着く。
ゴーレムをおびき出す組。
坑道を爆破する組。
崖下で待機する組。
それぞれが、動き出した。
おびき出し組がゴーレムに近づき挑発すると、ゴーレムが追ってきた。
手近の岩や地面を蹴りながら崖下に近づく。
崖下まで十分引き付けて、リタは風の宝珠に力のある言葉をかける。
「疾風加速陣」
二つのつむじ風が並び発射準備が整う。
「そぉぉぉれぇぇぇ!!」
ナイフを全身のばねを使った全力のフォームで投げる。
風魔法で加速した、鋼の砲弾と化したナイフがゴーレムの頭に命中した。
どっかぁぁぁん
「まだまだぁ!いっくよぉお!」
繰り返し投擲を行うリタ。
ゴーレムはその衝撃に耐えられずにバランスを崩して倒れる。
坑道で爆破準備をしていたドワーフたちが、その揺れを感じて爆破を行う。
いそいで、避難する坑夫たち。
時間差で発動する火と風の宝珠を使った魔法が炸裂する。
どぐがぁぁぁぁぁぁぁん!
坑道が爆破され連鎖的に崖が崩れていく。
ゴーレムは大量の岩と土砂に潰され、身動きができなくなった。
「いくぞ!野郎ども!」
崖下で待機していたガルフの号令で一斉にゴーレムに襲い掛かった。
ゴーレムに群がるドワーフたちによって、その体はどんどん形が崩れていった。
「あったぞ!」
ドワーフの一人が叫ぶ。
黄色に輝く巨大な地の精霊核が見つかった。
それを一気に砕くと、ゴーレムの体が崩れ始め、ただの岩山になっていった。
『おぉぉぉぉぉぉ』
全員が雄たけびを上げ勝利を喜んだ。
「ふう、やれやれ」
リタは、ひと段落した面持ちで腰を下ろすのだった。




