鍛冶職人
リタが一行とはぐれてからすでに一か月程経っていた。
王城の場所は万が一の時のため、全員が火守役のカーラから聞いている。
「天空城を目指してください。王城は西側ではどこからでも天空城を目指せば辿りつけます」
白磁の門で光に包まれると、街道のど真ん中に一人で立っていた。
それから、一人で王城を目指すことになる。
旅の途中で立ち寄った村は、魔族の村、古代種の村と様々で、村によって違う対応に迫られた。
普通人は古代種の村ではそうでもないが、魔族の村では嫌われた。
それは恐怖心からのもののように見えた。
リタは持ち前のコミュニケーション能力の高さから、どの村の住人とも心を通わせることが出来た。
村に立ち寄るたびに、情報収集を続けたが王城には何の動きもないらしい。
しばらく前に、お触れが出されると噂が出たが、それもなかったと。
まだ誰も、王城にたどり着いていない。
そう判断したリタは仲間の探索を続けた。
目的地が一緒なのが唯一の手がかりとして、どこかで合流するため王城への旅を続けた。
この村にもたまたま立ち寄っただけだが、リタはここで転機を迎えることになる。
。。。
鍛冶の手伝いを始めてから1週間、リタはすっかり鍛冶職人としての技術が身についていた。
もともと研ぎや加工は自前で行える手先の器用さを持っていたが、才能のようなものを感じる。
親方の指導のもと、みるみる技術を上達させ、たった数日でいっぱしの鍛冶職人並みの仕事ができるようになっていた。
かーん、かーん
「おう、出来たぞ。研ぎは任せる」
「あいよ」
二人の呼吸もぴったりで、作業効率が跳ね上がった。
これまで、溜まっていた仕事もだいぶ捌けて余裕ができた。
空いた時間にリタはレンジャーとしての腕がなまらないように、訓練を欠かさない。
親方は、奥にこもって「うーん、これじゃない」と何かを研究して考え事をすることが多くなった。
そんな日が続いたある日。
「おーい、ガルフいるか?」
奥に引っ込んでいた親方が出てくる。
「よお、牛飼いの。どうした?」
「どうやら、あれが出たようだぞ」
「本当か!?」
牛飼いが言うには、牛たちが怯えて外に出たがらないそうだ。
様子がおかしいので、他にも聞いたところ、全ての家畜が怯えて動かないらしい。
また、鉱山へ行っていた鉱夫も全員が引き揚げていて、何事か聞いたところ、ものすごい揺れが起こって作業どころではなかったらしい。
「どうやら、奴が現れたようだな。。。」
「やつって、なんなのさ?」
リタが聞く。
「ロックゴーレムだよ。野生のな」
ここには、数年毎に巨大なロックゴーレムが現れるらしい。
全長は20mを超えるものが多く、せっかく掘った鉱山や畑が破壊されて大変な被害が出る。
だが、この魔物は災厄ばかりではなく、村に富をもたらすこともある。
その体には希少な金属が含まれていることがあり、討伐できれば相当の利益を得ることができた。
そのため、この村ではロックゴーレムの到来を歓迎する者も多い。
ガルフもその一人で、希少金属目当てに討伐隊に参加することもあった。
「おお、腕が鳴るぜ」
「あんまり牧草地を壊さないでくれよ」
牛飼いの懸念ももっともだ。
村はお祭り騒ぎで大人も子供も、戦いに備えて動き回っている。
高齢の村長の代わりに、ガルフが指揮を執る。
「男衆は武器を取れ!女子供は家から出るなよ!」
「あたしも行っていいかい?」
リタが挙手して尋ねる。
村人がざわつく。
「おい、ガルフ、大丈夫なのか?」
「。。。」
ガルフは考えてから承諾した。
「ついてくるのは構わんが、お前さんは前衛じゃないだろ。後方で俺たちの戦いを見てるならいいぞ」
「ああ、それでかまわないよ」
リタも了解する。
「よぉし。野郎ども!準備が出来次第出発するぞ!」
『おおぅ!』
総勢30人弱の男どもが鬨の声を上げた。




