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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
二章 魔族領編 王の資質

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蛇の夫婦

その夫婦には子供が出来なかった。

夫婦はあらゆる方法を試したが、どれも効果はなく、最後にたどり着いたのが魔薬だった。


「。。。魔薬」

少女はその薬の恐ろしさを知っていた。


土の精霊を宿した魔族の体から抽出したその薬は、特殊な調合によって子供を授かる秘薬として出回っていた。

闇マーケットで取引されていたそれを、どうにか手に入れた夫婦はそれがどういうものかを知らずに使った。


魔薬を使った瞬間から、二人の体が作り変えられていく、そんな感覚があり夫婦はこれならと子作りに期待した。


そして、数か月の後、妻は子供を身ごもることになる。

夫婦はその幸運を喜び、生まれてくる子を待ちわびた。


しかし、悲劇が起こる。


生まれてきた子を見た時に全てを後悔することになる。

その子は頭だけが人のままだが、その姿は蛇だった。

手も足もなく、首から上だけが赤子のままの生き物を見て妻は卒倒し、夫は愕然とした。


その場で殺そうかとも思ったが、実の我が子を手にかけることができず、この森に捨てることを決めた。


魔族領までの長い道のりを経て、森の入り口まで来た。

そこに子供を置いて、夫婦は逃げるように帰っていった。


それから一度も子供に会っていない。

乳飲み子をこんな危険な森に捨て置けばどうなるか、分かり切った事だ。


そして1年が経過した後、妻の体に異変が起こる。

魔物化モンストル・フォームによる形状変化が起こり始めた。

初めは目の虹彩が爬虫類のようになり、そして体に鱗のようなものが出始める。

続いて夫にも同じような変化が起こる。

夫婦はそれを子供を欲っした末に非道を行った罰だと受け取り、村を離れることにした。

行く当てなどない夫婦はかつて、自ら子供を捨てた森に向かう。


そこには、当然子供の姿は無く自らの行いを後悔した。


もし、あの子が万が一生きていたのなら、帰る場所がいるはずだ。

夫婦は贖罪と一縷の希望をもって家を建てた。


それがどんなに身勝手な思いだとしても、子供に会いたい一心で暮らし続けた。

そして、十年の時が過ぎ、夫婦の形状変化は最終段階になる。

妻と夫の能力は、幻惑と魅了。

この森に来る子供に術を掛けて、親子のふりを繰り返してきた。

しかし最後には術が解けてしまう。

その度に化け物と拒絶された夫婦は、子供を殺し次の子供を待つ。


何年も子供を待つ生活に耐えられず、この夫婦のどこかが狂ってしまっていた。


落ち着いて話を聞いていた少女は、最後の犠牲者が自分であることに気づき戦慄する。


「わたしも、殺すんですか?。。。」


男は落ち着いた声で言う。

「。。。いや、君は私たちの姿を見ても恐れないでくれた。。。このまま、立ち去るなら何もしない」

「。。。あなた」


男はその顔を苦しみで歪め、懺悔する。

「もう止めにしたいんだ。こんな生活を続けて何になるというんだ。。。子供は帰ってこない。。。」


「。。。」


「君、魔術を使えるんだよな」

「はい。。。」


「この家に、結界を張ってくれないだろうか」

「。。。」


「私たちには、いずれ終わりが来るだろう。その時までもう誰も傷つけたくないんだ。私たちの過ちを償いたい」


「わかりました」

少女は了承する。


「少し待って」

妻がスッと離れて少女に近づく。

「もう一度だけ貴女を抱かせて」


「。。。はい」

すこし躊躇ためらったが、そのままじっとして身を任せた。


「ありがとう。。。」

女は涙を流して優しく抱擁し「ごめんなさい」と言って離れた。


少女は立ち上がり、あの木のそばまで歩く。

振り返ると、寄り添いながら、こちらに目を向けている夫婦が見える。


その家に向けて結界を張る。

寄せぬ迷宮(フォース・ラビリンス)


力ある言葉を発すると、どこからか霧が出てきてその家を包み込む。

少女は、夫婦が見えなくなるまで、そこにたたずんでいた。


数日間ではあるが、そこは少女の家だった。

その間の夫婦との生活は嘘だったかもしれないが、少女が過去に失った優しく温かな時間を思い出させてくれた。


「。。。さようなら、父さん、母さん。。。ありがとう」

少女は、偽りの家族に感謝の言葉を述べて、先を急いだ。


沼があった。

その水鏡で自分の姿を確認する。

あの赤毛の子はそこには居らず、黒髪の美しい少女が映っている。


ミリーは自分の姿を確かめ、旅を急ぐのだった。


後にミリーは時々あの家を思い出す。

白い滝のように咲いた花を咲かせる木。

その近くの家で、家族3人で暮らす夢を見続ける夫婦。

彼らはまだそこにいるのだろうか。

少女にとってあの時の生活は、優しい思い出の一つとなり心に残った。


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