思いと共に
「ロッシ!」
避難していたジルが戦いの終わりに気づき戻ってきた。
倒れている弟を抱き起こす。
「お。ねぇちゃ。。ん」
ロッシが意識を取り戻し、姉を見て微笑む。
「お姉ちゃん。。。ただいま。。。ぼくね、夢を見てたんだ。みんなが居なくなって一人ぼっちになって。誰にも声が届かなくて。。。寂しかった」
徐々に存在が薄くなっていく。
「ロッシ、あなた。。。」
「ああ、次に生まれるなら風の精霊になりたいなぁ。そうしたら、おねぇちゃんの近くでずっと見守っていてあげるのに。。。」
その思いが届いたのか、ロッシの体が翠の光に包まれ、そして、羽の生えた妖精のように変わった。
「ああ、これで、ずっと一緒だね。。。おねぇ。。。ちゃん」
すうっとロッシの体が透明になり消えてゆく。
「やだ!行かないで!せっかく会えたのに。。。また一人にしないで!」
穏やかな表情で消えゆこうとする弟の声は優かった。
「大丈夫。。姿が消えても。。。ずっと一緒にいるよ。だから、泣かないで。。。」
ロッシの姿が完全に消えて周りに溶け込む。
「ロッシーーーー!!!」
ジルは涙を流して弟の名前を呼んだ。
ふわっと優しい風がジルの頬を撫でるように凪いだ。
アインは、泣き崩れるジルに掛ける言葉が無く、その様子を見守ることしか出来なかった。
どのくらい経っただろう、ジルが振り返って礼を言う。
「アイン。。。ありがとう。あの子を解放してくれて。。。」
そう言うジルは目を真っ赤にして吹っ切れたような顔で微笑む。
「行きましょう。出口はこの先よ」
アインはこれまで見ることのなかった彼女の強さを見て、頼もしく思うのだった。
洞窟を進むと登り坂になり、勾配もきつくなってきた。
岩に手をつきながら登り続けると、外の匂いを感じる。
「もう少し」
ジルが先を進み出口に到達する。
洞窟を抜けたその先は、月明かりに照らされた高原だった。
「ここから先、天空城を目指せば街道に出れるはず。これを持って行って」
ジルは、アインと最初に会った時に拾った精霊核の欠片を渡す。
「ごめんね、最初に返すつもりだったのに遅れてしまって」
「そんな」
アインは受け取るつもりは無かったが、ジルが無理やり手に持たせた。
「街道を進めば、街があるわ。街に行ったら旅に必要なものをこれで揃えるの。これなら十日以上の食料も揃えられるはず。決して騙されて取られないようにね」
「ジル。本当のお姉ちゃんみたいだ」
アインは。泣きそうになっていた。
思い切って言ってみた。
「ジルもぼくと一緒に行こう」
ジルは首を振って答える。
「いいえ。私は村に残る。こんな村だけど、私の故郷だもの」
「。。。そっか」
故郷を焼かれ戻る所のない少年と、苦しい生活が待つ場所に戻る少女。
どちらが幸せなのかは本人次第なのだろう。
「アイン、立派な王様になってね。私たちのようなちっぽけな存在が、この世界にいるって知っていてくれる。。。あなたなら、きっと救い上げてくれるって信じられる」
「うん、忘れない。ジルの事。。。ずっと」
少年は歩き出す、その足取りはこれまでのように何かに流されるのではなく、自ら道を切り開く決意に満ちていた。
少女はその後ろ姿が見えなくなるまで、その場でたたずんでいた。
ひゅぅぅ、さぁぁぁぁ
秋の風が、冬の到来を告げるような冷たさを運び、少女の髪がなびく。
もうすぐ氷の季節がやってくる。
消えてしまった弟と去っていった少年を思い、少女は寂しさを感じた。
ふわぁ
秋風とは違った柔らかな風が少女の頬を凪いで行った。
「ああ、あなたは。。姿は見えなくても一緒にいてくれるのね。。。」
冬が来てやがて春になる。
季節と共に変わっても風はいつもそこにいる。
その存在を感じることで、少女は明日を生きていけると思った。
お気づきの方もいるかと思いますが、某超有名漫画のある章のオマージュです。
映像化しないかなぁ。




