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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
二章 魔族領編 王の資質

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混沌竜

二人は川を渡り向こう岸に着いた。

水量が減り浅瀬となった川は、子供の足でも容易に渡ることができた。


村の方を見るとまだ火は消えておらず、人々の騒ぎは収まっていない。

こちらには誰も気づいていないようだ。


洞窟の入口まで来て、洞窟の奥から風が吹いていることが分かり、この先に出口があることを知る。


風に交じって何か嫌な匂いがする。

アインは動物が腐ったような、腐臭を感じ眉をひそめる。


「なんか変なにおいがする」

「動物の死骸があるのかも」

ジルはもっと小さい頃、弟と探検したことを思い出す。

その時はこんなじめじめした感じではなかった。

何かが隠れていて、今にも飛び出して来るような不安に駆られる。


足場の悪い道を手探りで進んでいくと広い空間が現れた。


「なに、ここ?」

何かの祭壇のようなものがあり、反対側に人が一人寝れるような大きさの台座がある。


「。。。」

アインは警戒を緩めずに台座に近づく。


黒いしみが残っている。どう見ても血の跡にしか見えない。


「ジル、何かいるかもしれない。気を付けて」

アインの声にうなずき、辺りを警戒しながら周囲を調べる。


祭壇の裏、そこに誰かがいる。


「そこにいるのは誰?」


振り向いたその顔は、ジルの見知った顔だった。


「ロッシ。。。ロッシなの?」

5年前に行方知れずになった弟と同じ顔がそこに在った。


明かりを向けると、全体像が浮かび上がった。

その姿は、おとぎ話の妖精のような薄い羽をもち、全体が緑の光に覆われていた。

「おねえちゃん。。。」

「ロッシあなた、その姿。。。」


「僕ね、風の精霊になったんだよ」

「これでもう、渡りも空腹も気にしないで済むんだ」


「だからね。おねえちゃんもここで一緒に暮らそう」

ロッシの金色の目が光を帯びるとともに、ジルの思考力を奪う。

(そうなったら幸せだろうな)

ジルはロッシの見せる優しい夢に捕らえられ、その場から動けなくなった。

幸せな夢の中で、ジルは幸福に満たされる感覚に堕ちていった。


その頃、アインは台座の裏に凄惨な行為が行われた跡を見つけていた。

そこに人の白骨が山になっている。

未だ成長していない子供の骨もあった。

最近の物なのか骨に肉が付いたまま腐っているものもある。


アインはここで行われた、残虐な食事風景を思い浮かべ口が酸っぱくなった。


周囲を探索し終え、ジルと合流しようと彼女を探す。


すると、目をぼーっとさせて何かと対峙している彼女を見つけた。

アインはジルの前にいる何かを見てゾッとした。


「ジル!離れて!」

アインはジルを引きはがそうと駆け寄る。


「ア、イン?んぅぅぅ」

夢の中で幸せな時間を過ごしていたジルが、子供がむずがるようにいやいやをする。


「ジル!目を覚まして!」

アインは彼女の頬をたたき、目を覚まさせる。

「え!?なに。アイン?」


やっと正気を取り戻したジルがアインのことに気づく。

そして先ほど弟と再会したことを伝える。

「ほら、そこにロッシが」

「違うよ、僕にはそんなものは見えない。目の前にいるのは黒い瘴気を纏った竜だ」


ジルが目を凝らすと、そこには、大きさが人の大人ほどの黒い竜が居た。

瘴気が形をもった魔物で、全体的に黒い霧を竜の形に切り取った姿をしている。


「さっきまで、本当に弟がいたの。。。」

狼狽うろたえて、現実を受け入れられないジルを後ろに引っ張っていく。

「下がって!」


アインはいつものように「纏い」を使おうとしたが、うまくいかない。

あの人を近くに感じない。こんなことは初めてだ。

さらに集中して「纏い」を行おうとする。

すると髪が輝きだし、白いもやが体を纏う。


何とか纏うことができたが、やはり、あの人を近くに感じられない。

不安な気持ちのまま、目の前の竜に挑むしかない。

思い返すと、こうなったのは門をくぐってからだ。

あの時からずっと心細さが続いている。

でも、今はそれでも戦わなければ。


弱気を気合で振り払い、戦闘に気持ちを切り替える。

そんな時に、師匠と誰かに言われた言葉を思い出した。


ゴンザ「だれにも頼れないとき、自分で何とかしなければいけない時に思い出せ」

(生きることをあきらめるな)

絶対に死ぬもんか!!


アインは竜に向かって飛び出した。

すぐに懐へ踏み込んで死角を奪う。

竜の視点は下にない。

そのため、顎下から縦回転の蹴りへ一気につなげた。


ぶわっふ


クリーンヒットしたはずの蹴りは、そのまま通り過ぎ瘴気を散らした。


実体がない?!


アインは目に見える部分に攻撃が通らないことに驚く。

「それなら!」

本体がどの程度の大きさかわからないが、体の中心をねらえば当たるはずだ。

回転速度を上げ、体の中心部、人であればみぞおちを狙って蹴りを叩きつける。


混沌竜は鋭い爪で反撃する。

アインはそれを掻い潜り一撃を放った。


「うっぐぅ」

今度は入った。しかし今の声は?

人の、子供の声に聞こえ攻撃をためらう。

そこに隙が生まれ、竜がブレスを吐きかけた。


「ぁぁぁああああ!」

「アイン!」

瘴気が体を包み、じりじりと焼けるような痛みが伝わる。

纏いによる防御がなければ、肌が溶ける痛さに耐えられなかっただろう。


「ロッシ、もうやめて。あなたロッシなんでしょ?!」

ジルが竜に語りかけるが攻撃をやめようとはしない。


「おぉぉおおねぇちゃちゃんんの、おぉぉとうとぉぉはぁぁ、ぼぉぉくだけだぁ!」

残響する言葉で竜が叫ぶ。


「!?」

竜が意味ある言葉を話したことにアインは動揺した。

この魔物は本当にジルの弟なの?

ジルの弟に大技を放つことはできない。


一進一退の攻防が続く中、決め手を欠きアインは焦る。

さっき、一瞬見えた精霊核。

黒くこの世のすべてを吸い込もうとする闇のような。

(あれをどうにかすれば。正確に一点を貫くことが出来ないか。)


記憶に残るあれなら。

アインは覚悟を決めて必殺の一撃を放つ準備をする。


「ジル!今から君の弟を解放する。でも失敗したらごめん!」

「アイン。。。お願い。。。」

アイン本人が初めて使う技。

足ではなく手刀により打ち出す衝撃波。


腕の魔力シリンダーを形成し魔力を充填する。

脚で放つのと同じタイミングを思い出しながら、しなやかに伸びた腕から手刀へ一気に波動を押し出す。


翠手鞭すいしゅべん!」


ぱぁん!


空気を穿つその音で成功を確信し、波動を黒い精霊核に叩き込む。


がきゃきぃ!


衝撃波を受けた石が体を形成している瘴気から吹き飛ばされる。

一気に瘴気の体が霧散し、少年の姿が現れる。

その姿はジルと同じ蔓のような髪で、顔は浸食されていない。


「ぐがぁぁぁぁ!」

「ロッシ!」

苦しみもがく弟に駆け寄るジル。

どうすればいいか分からずおろおろする。


「くっ がはっ!」

アインも技の反動に耐えられずに悶絶している。


「アイン!」

アインに駆け寄り癒しの魔法を使うジル。


「くっくっく、あっはっははは」

ロッシがそれを見て笑う。


「おねえちゃんも僕を見捨てるんだね」

「ロッシ、違う!」

「違うもんか、父さんと同じだ。僕を捨てるんだ!」

「何。。。それ。。。」

ロッシは今何と言った?

ジルは信じられない言葉を聞き呆然とした。

「今、なんて言ったの。。。」

「父さんが僕を捨てたんだ。あの時、母さんが消えた後に」

そして、黒い石から瘴気が噴き出した。


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