奇跡の代償
「ぐぁぁぁぁあああああああ!」
奥の部屋から、叫び声が聞こえた。
「っ!!」
「な、なに?!」
それは、朝食を終えて、これから仕事に向かおうとした時だった。
「お父さん!」
ジルが奥の部屋に駆けていった。
ここは入らないように言いつけられて、アインはこの部屋を見たことがない。
ジルに続いて中に入ると、ベッドに大きな土の塊があった。
「これって。。。」
アインは自分が見たものが最初何か分からなかった。
人なのか?
ただの土が盛られただけに見えるその姿に呆然とする。
「ぐぉぁぁ」
そこから苦しむ人の声が聞こえる。
「お父さん。お父さん、しっかりして!」
ジルが声をかけるが、そこからは苦悶の声しか聞こえてこない。
これが、精霊化の末期。
アインは、人ならざる姿となったジルの父親を見て、何かを思いつく。
「ジル、どいて」
「え?」
父の容態の悪化に狼狽えるジルを落ち着かせて前に出る。
「僕にまかせて」
「。。。」
ジルはアインの決意を込めた目に気圧され、後ろに下がる。
アインは手を横たわる土の塊に当てて念じる。
黄金の髪が輝き出し、白い靄が土塊を包むように広がっていく。
「これって。。。」
ジルは何が起こっているか分からず、おろおろする。
少年が強く念じると輝きが増し、白い靄に包まれた土塊が輝きだす。
少年の額に玉の汗が浮き上がる。
それでも力を送ることをやめないでいると、
ボロリ
表面の土から徐々に崩れていった。
その範囲はどんどん広がり、人の体の部分が見えてくる。
最初に足が。次に腕がそして体全体が現れ、顔も人の形に戻ってきた。
周りに大量の土砂があふれ、その上に彫られたかのように人の姿が現れた。
「お、おとう。。さん」
ジルはその光景を信じられないというように見つめ、涙をこぼした。
肩で息をする少年。
「あいん。。。ありがとぉおおお」
ジルは涙でぐしゃぐしゃになった顔で、少年に感謝を伝えた。
。。。
その奇跡は瞬く間に村中に知れ渡った。
奇跡を起こす少年がいる。
村人はこぞってジルの家に押しかけ、少年に救いを請う。
重篤な者から優先的に助けることを約束し、少年はそれを実行に移した。
そして、少年の奇跡は村を救った。
もう助からないとあきらめていた村人は、涙を流し少年に感謝した。
村は明るさを取り戻したかに見えた。
。。。
アインが目を覚ますと、そこは暗い牢の中だった。
「え?ここは。。。どこ?」
思いもよらない光景に絶句する。
昨日、重篤で今にも渡りの日を迎えそうな村人の最後の患者を癒した。
その後、疲労困憊となったアインは倒れてしまい、そこから記憶がない。
「だれかー!いませんかー?!」
大声で叫び人を呼ぶ。
しばらくして、地下牢の入口に数人の人が現れた。
皆暗い目をして、すまなそうな顔で少年を見る。
「ここ、どこですか?なんで僕は牢に居るんです?」
村人たちは答えず。
「すまんな、坊主。お前には何人も救ってもらって感謝してるんだ。だけど、いずれお前はここから出ていくんだろ?その後、俺たちはその力を使うことができなくなるじゃないか」
アインは、その言葉に愕然とした。
「あの方はもっといい方法があるとおっしゃっていた。そのためにお前が必要だとも。。。この村のためだ。後生だから恨まんでくれ」
村人はそう言って地下牢から出て行った。
「そんな。。。出してよ。。。出せーーーー!!!!」
少年の叫びが牢にむなしくこだました。
その声を聴く者は誰もいなかった。




