三人目
身を潜めている間、アインは戦場を把握するために、座禅を組んで瞑想していた。
それにより、アインは全体の状況を感じ取ることが出来た。
そして、白と魔術師の戦いが停滞していること、それは、白がこちらの戦いを気にしてのことだと気付く。
白に指示を出し、その後、カイルとリタの戦いを見守る。
ついに、その時が来たと感じたアインは、瞑想を解き気配を殺して準備をする。
岩陰に隠れると、その岩を足場にしようとゴウライが現れる。
間髪入れずに、準備していた蹴りを放った!
「翠狼牙!!」
「!!!」
虚を突かれ、ゴウライが驚きに目を見開く。
狼の咢が男をかみ砕こうとしたその時、足場にしていた岩が粉々に砕けた。
ゴウライは体勢不利と見るや、砕踏崩地を使った。
男の体が、崩れた岩と一緒に地面へ倒れる。
必殺の一撃を躱されたアインが、バランスを崩し地面に体を打ち付けた。
「ぐぁ!!」
痛みに耐えてすぐに起き上がるアイン。
その時には、ゴウライが少年を見下ろしていた。
勝機を得たゴウライが何故かアインを見るだけで、攻撃を加えようとしない。
背後に殺気を感じたゴウライが視線を送り、今まさに攻撃する寸前だったカイルとリタを牽制する。
お互いに攻撃をするタイミングを逃し、時が止まる。
「小僧。何故あの力を使わん?」
ゴウライの言わんとするところ、それは黄金律の力のことだ。
「あれは、あの力は人に向けて使うものじゃない。。。」
アインの言葉に、ゴウライが獰猛な顔をで言葉を重ねる。
「笑止!力の在りようは、その力の大きさに依らない。目の前の脅威を排除するためなら行使をためらう理由は無かろう。今この場でお前にとっての脅威は何だ?!世界を救うと願うなら、その力を見せてみろ!」
ここでアインが命を落としたならば、すべてが無駄になる。
この男はそれを知り、あえてこの力を使えと言う。
人の身で、世界の理すら変える力に、どう抗うのか。
正気とは思えない男の言葉に狂気を感じた。
だが、ここで命を落とすわけにはいかない。
「貴方が望んだことだ、僕を恨まないでほしい」
「黄金律の理よ!我に仮初めの剣を与えよ!
我の理念に立ちふさがる脅威を、打倒す力を!
顕現せよ!
罪なき者への断罪の剣!
無辜の断頭刃!」
アインが心に浮かび上がる言葉を唱える。
言葉が容を作り、黄金と黒の風が巻く。
風が集まり、元の遺物とは似ても似つかない禍々しい姿の剣が現れた。
黄金と黒が混じり合い、燃える炎を切り取ったような鋭利な刀身。
それは、見る者に触れたものを切り裂くことこそが、存在理由だと知らしめる。
その剣を手にしたアインは、あまりの禍々しさに自らの行為を後悔した。
目の前の男が叫ぶ。
「そうだ!それでいい!その力貰い受けるぞ!!!」
ゴウライが両手の指で印を結ぶと、一度形を成した剣が再び風へ戻る。
その風がゴウライの組んだ印へ吸い込まれた。
すると、ゴウライの容姿に変化が起こる。
きれいに剃髪された頭皮から、黄金の髪が流れるように生え、眉毛も金色で生えそろった。
「あんた、その姿。。。まさか、あんたも王候補だったのか?」
カイルが声を震わせて男に尋ねた。
「アイン!!!」
リタが叫ぶ。
ゴウライの姿が変わると、アインが力を失ったように倒れこんだ。
男は一瞥したのみで、少年に興味がなくなった様に笑いだした。
「ふ、ふふ、ふはははははぁ!これが、黄金律の力か!素晴らしい、素晴らしいぞ!」
その時、強烈な突風がその場に流れ込んだ。
はるか先で行われている巨人同士の戦いが、ここにも影響を及ぼしていた。
カイルとリタは、この風に紛れてアインを回収した。
ゴウライの興味は自身が奪った力に向いている。
一度引いて体勢を立て直すには好機と言えた。
3人が、風と砂塵に紛れ距離を取る間も、ゴウライの笑い声が耳に残った。




