戦士たち
ガタッ
クラークが椅子から腰を浮かす。
「なんだ。。。あれは」
戦場を映す画面の片隅に、そこにいるはずのない人物を見た彼は、言葉を失った。
「どういうことですか?」
傍らで、一緒に見ていたジンライに問いかけるが、彼の困惑した様子に一層混乱する。
「分かりませんね。我が兄ながら想像を超えた行動力だ」
呆れたような、感心したようなセリフを言うジンライに苛立ちを覚える。
「わかっているのですか?これが、世界を救うための戦いだと。。。」
「知った上でしょうね。この時しか無いと。事戦いにおいて時を見誤ることの無い男ですから」
ジンライの物言いはあくまで他人事だ。
「あなたは、止めないのですか?」
「言ったでしょう。私は傍観すると、それに、私が止めに入って止まるような兄ではありませんよ」
不毛な会話を続けることに、嫌気がさしたのかクラークは席を立った。
ジンライが、防御陣を何重にも重ねたローブを羽織り、杖を手にしたクラークに声をかけた。
「あなたで兄を止めることが出来ますか?」
戦闘経験のないクラークでは、歯が立たないことを言外に匂わせる。
「彼を止めに行くのではありません。こうなっては、あの少年が生きている内に計画を完遂するしかありません」
少年の命など、どうでもいいと言いたげに足早に転移陣へと向かう。
「予定を早めるだけです。すでに舞台は整っているのですから。。。」
自分に言い聞かせるように呟くクラークを、見送るジンライ。
「それにしても。。。」
元々、無茶な計画だと思っていたが、ここに来てどう転ぶかわからなくなった。
兄の目的が、自分を負かした強者の打倒だとしたら、それは叶えられないだろう。
少年に直接会って、これまで感じていた違和感の正体を知った。
今あの少年の中に、打倒すべき相手がいないことを兄は知らない。
「クククっ」
自らの命に関わることだと知りながらも、この状況を楽しむ自分がいることに、笑いが込み上げてくる。
「演者は揃った。観客としてはより華やかなエンディングをみせてもらいたいものだ」
主人のいなくなった椅子に、どっかと座り込み、事の成り行きを楽しむジンライだった。
。。。
目の前に現れた人物を、三人は信じられない思いで迎えることになった。
初めに声をかけたのはカイルだった。
「あんた、一体何しに来たんだ?協力をしたいわけじゃないんだろ?」
男の隠そうともしない、あからさまな殺気に三人は警戒を強める。
「もちろんだ、借りを返しに来た」
「この世界が無くなるかもしれないんだぞ?そんなことしてどうなるんだ?」
諭そうと試みるが、男が聞き入れないことは知った上でのことだ。
カイルも戦士として、強者に挑みたい気持ちはわかる。強くなればなるほど、それは渇望にも近い感情となる。
「それに、今のこいつは、あんたの思っている強さの半分だ。残りの半分は、あそこで戦ってるからな」
ゴウライの興味が移るように言葉を選んだが、それにも動じない。
「ふん、それは本質を見誤っているぞ。剣士よ」
男は視線をアインに向けたまま、己の目的を話す。
「あそこにあるのは影だ。あの力の源は、確かにその小僧の中にある。理を改変し新たな世界を受け入れる事ができるのは、この世界に生まれたものの意思でしかない。その膨大な意思の力。俺はそれに挑みたいのだ」
カイルが自分が見誤っていたことに気づいた。
白の存在がアインに力を与えていた、その考えは間違いで、アイン自身の力が白によって引き出され、超常的な変化をもたらした。
ゴウライは数度の手合わせで、感覚的にそれを知った。
打倒すべき真の相手は、アインであると。
カイルは、説得にもならない自分の言葉を引っ込めた。
「だとしても、見過ごすわけにいかないよ」
リタが感情をぶつけて言い放つ。
「あたしら三人が相手だ」
彼女の怒気を孕んだその言葉に、カイルも覚悟ができた。
「アイン、俺たちで奴を止める。そして世界を救おうぜ!」
「カイル兄ぃ、リタ姉ぇ。。。わかった。この戦い、勝とう!」
アインはここで戦うことに意味を見出せなかったが、仲間の言葉で吹っ切れた。
道理や理屈の入り込む余地のない戦いがある、それは勝たなければ意味がないということを少年は知った。
「「「「いざ!尋常に勝負!」」」」
運命に引き寄せられ、いくつもの死闘を演じた戦士たちの戦いが、今始まった。




