連戦
巨大鎧の両腕が持ち上がり、掌をこちらに向けた。
何をするつもりか、身構えた俺は周囲に漂うツンとした匂いに気付いた。
これって、オゾンか?まずい!!!!
気付いた時には、すでに爆発が始まっていた。
ぴしっ!カッ!どぅおん!
連鎖的に起こる爆発で発生した、光と水蒸気が視界を奪う。
白い霧の奥で光が明滅する。
空気中の水分を一瞬で気化爆薬に変えられた。
避けようにも身を隠す事もできない。
くっそーー!!
自棄になって、今は獣の咢となった口を大きく開け、爆発の光を食べた。
ぱく
その瞬間に魔法は消失し、魔術の源ごと、この世界から消え去った。
これが。。。俺(黄金律)の力か。。。
魔法(精霊)の対消滅を体験した俺は、すぐさま行動に移った。
こうなったら、喰いまくってやる!!!
ばく、ばく、ばく、ばく、ばく、ばく、ばく、ばく、ばく、ばく、ばく、ばく
爆発が起こるタイミングで、周囲の爆発光を片端から喰らった。
その結果、俺の体に爆発の衝撃は届かずに済んだ。
しばらく続けると、徐々に白い霧も晴れたが、真空へ流れ込む風が砂を巻き上げる。
それも収まると、何とか人心地つける状態になった。
おそらく、気化爆薬による酸欠と、バックドラフトを狙った広域爆散魔法だろうが、生憎こちらは呼吸を必要としない上に、物理耐性のある半物質の体だ。
とはいえ、あの爆発に巻き込まれては、さすがに無事では済まなかっただろう。
初めから、えげつない魔法を使う敵に辟易しつつ、次のターンを待つ。
。。。
そんな時、鎧の中では、次に誰が戦闘球に入るかで揉めていた。
「ええい、次は儂の番じゃろう!最初の一発は魔術じゃなかろうが!ノーカンじゃ、ノーカン!」
「お主、そう言って譲らんつもりだな。儂だって実践したい魔法のストックが山ほどあるんじゃ。ここは譲れん!」
ホークとルイが不毛な言い争いを続けている。
「どちらでもええから、早よぅせい。向こうはお待ちかねじゃぞ」
あくびをして観察球を見ていたヤフーが二人を急かす。
「今の爆発で、風の精霊が良い感じに集まってきおった。ここは儂に譲ってもらうぞ」
「ぐぬぬ。。。」
ルイの主張を、しぶしぶのんだホークが席に戻る。
風魔術の得意なルイが戦闘球に入る。
すぐさま、魔法の詠唱を唱え始める。
「廻れ大気、紡げ螺旋の風よ。微塵の刃金となり、歳月を耐えし岩をも砕き、触るるものことごとく、砂塵と化せ」
詠唱が進むにつれ、鎧の前に竜巻が現れ始めた。
回転速度が上がるにつれ、細く長く収束していく。
「旋風風塵刃・蝕!!!」
力ある言葉と共に術が完成した。
竜巻を鎧がむんずと掴むと、こん棒の様に振り始めた。
風の高速回転により、風蝕効果を持つ武器となった竜巻を自在に操る。
一本の棒にも見えるそれは、無数の塵を含んだ風の刃だ。
その一撃を白い獣に浴びせた。
白い獣が両手の爪を伸ばして対抗する。
ギャリギャリギャリ
火花を散らして耐えるが、すぐに獣が後退する。
実体の無い風の凶刃を、そのまま受け続けることはできぬと判断したのだろう。
「さあ、どうする!白き獣よ!」
ルイが闘いの狂熱に浮かされ吠えた。
。。。
敵が竜巻を両手で持ち振り下ろしてきた。
すぐに、爪を伸ばして応戦するも、接触した瞬間に耐えることができないことに気付いた。
その場を飛び退き、距離を取る。
恐らく、鎧の手から竜巻を制御する魔力を流してる。
あの風の棒を搔い潜って、懐まで潜り込むことができれば。。。
操っている魔術師は格闘戦になれてはいまい。
そこに勝機を見出した俺は、鎧の正面に向かって走り出した。
竜巻が目の前に迫るが、直前で身を低くして、鎧の視野の外へ瞬時に移動する。
一瞬、俺を見失ったために、焦った鎧の隙をついて竜巻を持つ両手を狙って蹴りを打ち込んだ。。。が。
打ち込む寸前に、竜巻の形がしなるように変化し、俺の体に襲い掛かった。
ざっ!すぎゃぎゃぎゃぎゃぁぁぁああ!
「ぐっ!」
体をえぐられる痛みに、一瞬視界が白くなる
戦闘球の中でルイが、高笑いを上げる。
「ひゃははははあ!狙いはよかったが、この術に抜かりはない!敵が近くに寄れば自動で敵を追うように組み立てておるでな!」
老魔術師はご満悦だ。
俺は、深手を負うも一瞬で回復し再び距離を取った。
傷を負えば、その個所から対消滅が起こる。
体をえぐられる度に、相手の使う魔力(精霊)が霧散していく。
なるほど、どちらか一方が叩きのめされても、精霊を消滅させる流れは変わらないというわけか。
痛みを同等に受けるのは厄介だな。
結果に違いはなくとも痛いのは嫌だ。
どうにか無効化したい。
敵の動きからして、狙いは悪くなかったのだろう。
手元に攻撃が入るのを嫌がったのが証拠だ。
あの魔法の、自動防御を避けて腕に一撃を与える方法がないものか。。。
再び、正面から鎧に駆ける。
「まだわからんか、学習せんやつめ」
ルイが、同じ行動をとる敵を哀れんだ目で見る。
先ほどとまったく同じ行動。タイミングも同じ。
ただ違うことは俺が手元を狙わずに、その場の地面をひっくり返したことだ。
突然現れた土砂の壁に、竜巻の自動防御が追い付かない。
見当違いの場所に攻撃をする、そのすきをついて鎧の手元を攻撃した。
制御を失った竜巻が手元から離れる。
勝機!
殺傷能力を失った竜巻を喰らう。
竜巻はまるで生きた蛇のようによじれ、俺に飲み込まれていった。
戦闘球のなかでルイが地団駄を踏んでいる。
「あんなの、ずるじゃ!いんちきじゃぁ!」
「ほれ、ほれ。交代じゃ交代」
ホークがほくほくした顔で戦闘球ににじりよった。




