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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
三章 神祇創生

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魔術師の夢

「くっくっくっ。。。」

明り取りのない暗い自室で、クラークは悦に入った笑いをこぼしていた。


豪奢な机には、遠見の魔術が施された水晶玉があり、その上に四角く映像が浮かんでいる。

彼は遠く離れた戦場の様子を、グラスを片手に観戦していた。


そこに、スッと男が現れ、呆れた声を上げる。

「ずいぶん優雅な御身分ですな、兄弟子殿」


五賢人の一員の態度としてはいかがなものかと、ジンライが皮肉を込めて言う。


「私の出番はまだこれからですから。どうですか?」

グラスを勧めるクラークに「いただこう」と受け取る。


熟成を重ねたと思われる琥珀色の酒を注ぎ、ふたたび映像に目をやる。


「しかし、あの町中で展開した映像は何だ?わざわざ、全員に見せなくても。。。」

ジンライが見たのは町中に写った戦場の様子だ。

わざわざ、魔族領にまで出向き、全ての町に魔術師全員で設置していた。


「あの娘の希望でしたからね。ここまで来れた礼のようなものです」

クラークは、アリーシャの面差しを思い浮かべ笑みをこぼす。


「おお!」


目の前の映像では、魔術の極致と呼ばれる魔法が展開されている。

クラークは、それを興奮しながら鑑賞している。


ジンライがつぶやく。

「爺さんたちノリノリじゃねーか。。。」

本人たちが、本気で世界を救う気が有るのか疑わしく思う。


「我々魔術師は、望みもしない人類の管理などを押し付けられてましたからね。それがなければ、どれだけの高みにたどり着けたか。。。」

魔術師は、もともと魔導の求道者であり、学徒として在ることを望む者の集まりだ。

それが必要なことであったとしても、今の役割を受け入れることに不満を持つものも多い。


「あそこで行われていることは、いわばストレス解消も含んでますからね。千年の研鑽を、あの場で披露することも、あの方々の目的なんでしょう。。。うらやましい」

クラークの言葉の最後に本音が漏れる。


ジンライが、あきれながらグラスを傾ける。


「あんたの出番が後だって言うのは、何か理由があるのかい?」

自分が知っている計画には、クラークが干渉する段取りはなかったはずだ。


「。。。もうここまで来れば、話しても良いでしょう。あの方たちの魔法は完全ではないんですよ」

「ほぉ。。。」

ジンライの目が細くなる。


「誤解しないでもらいたいのですが、私も、この世界を救う礎となることに不満はありません。むしろ、私こそが救う事のできる唯一の存在ですから」

「。。。」

ジンライの目が、酒に酔ったものを見る目になる。


「あの方たちの希望が潰えたときに、私の魔術が真の意味を持つのです」

「爺さんたちは捨て駒だと?」

「いいえ、違います。彼らの魔術をさらに引き上げることで、救世が完成されるのです」

話しているうちに、クラークの目は狂気とも違う熱のこもった光を帯びていた。


「。。。まあ、いいさ。俺は傍観すると決めた身だ。あんたの好きなようにすればいい」

そうして、二人は戦場の映像に意識を集中するのだった。


。。。


さて、どんなもんが飛び出してくるんだか?


俺は、鎧の次の攻撃に備え、戦場を移動した。

坊主たちがいる方向に攻撃が向かないように、ゆっくりと反時計回りに移動する。


どうやら、俺の場合は、歩くだけで環境に負担を与えることはないようだ。

理(ことわり)を曲げているのか、精霊に干渉させない何かがあるのか不明だが、気にする必要がなくなったのは気持ち的に楽だ。


鎧がこちらの意図を察し方向を変えた。

そして、攻撃態勢に移る。


とにかく、受け止めて相殺すればいいんだよな。

そう思って身構えた俺が見たのは、今まで見たことのないような巨大な魔法だった。


。。。


ホークが腕まくりをして、正面に備えた戦闘球に入ろうとする。

そこは、人が一人立てるくらいの、小さく丸いドーム状の空間で、ここで魔術を放つと鎧がそれを倍増して敵に放つ。

「よし、早速、儂らの力を示そうぞ」

「お主は、さっきやったじゃろうが。最期じゃ最期」

ルイがホークの勇み足を止める。


「なら最初は儂が行くぞ」

ヤフーがしれっと球状の入口に飛び込んだ。


「「おい!」」

二人の文句を余所に、敵の姿を目の前に捕らえる。


ドームの中から外部の状況を見ることができた。


ヤフーが呪文を詠唱すると、水の精霊が集まり始めた。

水魔法を得意とするヤフーの攻撃が始まる。


「水裂きて塵と化し、風縛りて檻を成す。その身を核とし、散華せよ!」

呪文の詠唱が始まると、鎧を構成する魔鋼が鳴動しだす。


「爆鳴気突風《ハイドロ・エアロゾル》・爆轟(・デトネーション)!!!」

敵の周りの空気に漂う水分を、気体爆薬に変化させる魔法だ。

力ある言葉により巨大な鎧の前方に、さらに巨大な魔法陣が展開された。


戦獣が、周りの空気にオゾン臭をかぎ取り、風を起こして拡散させようとしている。

しかしこの魔法の範囲は、その程度では収まらない。


ピシィと、何かが割れるような音に続きドガァァン!という大地を揺るがす音が起こる。

爆発の輝きが何度も起こり、連鎖爆破がしばらくの間続いた。


爆発の範囲を絞らなかったせいで、半径十数キロの空気が燃え尽き、真空状態になった空間を埋めようと突風が吹き荒れた。


「いきなり、やり過ぎじゃないのか?。。。。」

ホークの頬がぴくぴくと引きつっている。


「小手調べとしては、こんなもんじゃろ」

ヤフーが少し不満げにドームから出る。


「?」

二人が外部の映像を覗く。


風に巻き上げられた砂が晴れると、そこには同じ姿のままの白い獣が立っていた。


「ふぉっほっほ!なかなかやるのぉ。あの爆発にびくともせんか!」

「さすがじゃな、これなら手加減など無用ということだ」

「ふんっ」


三賢者と呼ばれる老人が、三者三様に歓喜に震える。

これまで、理論の組み上げのみだった魔術を、実践で使える機会など無かった。

魔術師の夢でしかなかった、大魔法を繰り出す機会に恵まれた事を少年のように喜んだ。


その相手が、最初の一発で辟易としているとは、まったく気付くことなく、老人たちは盛り上がるのだった。


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