戦獣
少年王と会敵して、数時間にもなるが一行に動きがないことに、三賢者は痺れを切らしていた。
「いつになったら、始まるんじゃろうな。。。」
「向こうにも都合があるんじゃろ、途中で、あの赤いのから降りて歩いているようじゃな」
「お?何か始めたようじゃぞ」
3人は、下方の視界確保のために、急遽取り付けた、外部監視鏡に食いつくように頭を寄せた。
。。。
砂塵吹きすさぶ荒野に、少年の声が流れる。
その声が俺の心に直接届く。
「巡る魂の系譜に告ぐ。我が呼び声に応じ、その存在のすべてを捧げよ。
我が身を阻むあらゆる厄災を払う盾となり、仇なす敵を断ち裂く剣となれ。
御身の忠節に応え、我が授けるは朽ちざる信義。
今この時より、我らは魂の双子とならん! 」
体が熱い。
燃える様だ。
「魂を結ぶ!」
アインが力ある言葉を発した。
不確かだった霊体が、肉の体に作り変えられていく感じがした。
久しく感じることのなかった、生の強烈な感覚に途惑う。
その場にどこからか、霧が現れた。
白い霧が練乳をかき混ぜたように、どんどん集まり色濃くなる。
しばらくすると、空間から切り取られたように、人の輪郭をとり始める。
そして、霧に包まれた白い男が、纏った霧の尾を引くように現れた。
「白。。。さん?」
少年が、恐る恐る話しかける。
「。。。ああ、成功したようだな。意識もあるようだ」
俺は、自由意志が失われていないことを、坊主に知らせた。
「よかったぁ」
ほっと胸をなでおろすアイン。
アイシャから、教えられていた通りに、使役人形の契約を行ったがうまくいったようだ。
元通りに話せないかもしれない事を気にしていたのだろうか、少年は涙を浮かべて喜んだ。
「よう。初めましてだな」
カイルが軽く手を上げる。
俺も、それに応えてあいさつする。
「そうだな、実際に会うのは初めてだな」
「でも、やっぱ、真っ白なんだね。顔もないのも、ちょっと怖い。。。」
リタが、軽い口調で傷つくことを言う。
「やめて、落ち込むから。。。。」
「あ、ごめん」
いじけた俺を見て、慌てて取りなすリタ。
とにかく、これで、第一の準備は整った。
目の前に立ちはだかる巨大な鎧を見上げ、腰が砕けそうになる。
「。。。」
仲間の顔を見まわし、俺は、戦いに向けて気合を入れた。
「よし!気合入れ直していくぞ!」
俺が坊主から離れるということは、戦闘力、防御力はアイン本人の力のみに制限される。
無防備とまでは言わないが、これまでのような無茶はできないだろう。
だが、そこには俺が信頼する頼もしい仲間もいた。
「二人とも、ご主人を頼むぞ」
「任された」
カイルの真剣な返事を、背に受けて歩き出す。
「主人、王命を!」
「白さん、全てを託します」
アインが黄金の剣を両手で持ち、天を突くように持ち上げた。
「王命、黄金律の理よ、万象の根幹たる、始まりの大精霊に宿れ。
わが魂の双子に名を授けん!
顕現せよ、『白き救い手:オムニス』!」
「了承。我が名はオムニス。宿れ!裁定者の黄金律!」
坊主の声を受け、走り出す。
アインが手にした剣が粉塵に変わり、追い縋る様に、金色の粒が俺の体に纏わりつく。
「体よ!でかくなれ!」
俺は自らの権能を発揮した。
体が徐々に巨大化する。
金色の粒も、それに合わせて数を増やす。
体の大きさが急激に増大し、金色の粒が砂塵の様に体を覆い始める。
巨大化しながら駆ける。
そして、金色の砂嵐と化した俺は、敵の巨大鎧と対峙した。
徐々に、金色の砂塵が晴れていく。
砂嵐から現れた俺の姿は、人ならざる形状をしていた。
熊のような体躯と尖った顔。
兎のように長い耳は先端が鋭く、後ろに流れる様に揺れている。
その顔に見覚えのあるものは、雪族を連想しただろう。
北の霊山に住まう、今は亡きその部族の無念がそうさせたのか、鋭い目と牙が生えていた。
遺瓦礫の機械鎧と比べると、こちらの方が低いが、山脈級の巨大な体を持つ敵同士が睨みあう。
「ホォゥゥゥォォォォォオオオオオオ!!!!!」
6000mを越える巨大な体躯を持つ、その獣が、咆哮を上げた。




