救世機:ルデラ・エクス・マキナ
「うわぁ。おおっきい」
(直に見ると、あきれるくらいデカいな。。。)
大陸の中央、荒野砂漠と呼ばれる場所に俺たちはいた。
やせ細った大地に草木は無く、乾いた風が砂を舞い上げている。
そこは、荒野と砂漠だけの人が寄り付かない不毛の地。
被害を最小限にするため、戦闘はここで行われることになっていた。
アインと俺たちは、まず、白磁の門に向かい、そこから荒野砂漠へ向かった。
白磁の門では懐かしい顔ぶれと出会う。
「頑張れよ。アイン」
「うん、何とかしてみせるよ」
たくましく成長した村長の息子、サムとの再会を果たす。
友との邂逅も束の間、俺達はすぐに出立した。
移動はアイシャのエクサで空から向かい、アインと護衛のカイル、リタが同乗することになった。
エラランが最後まで兵を伴うよう粘っていたが、今回は即断即行が必要とされるため却下となった。
丘陵地帯を越え、荒野砂漠に入ると、例の鎧の姿が見えてきた。
まだ、かなりの距離があるが、その頭頂部は雲を突き抜けるほどの高さがあった。
それを目にした一同が、口を開けてぽかんとする。
「。。。聞いてたより、ずっとデカくなってないか」
カイルが、かすれた声でつぶやく。
リタも嫌な汗をぬぐいながら言う。
「あいつらが言っていた通りってことね。。。」
使者としてやって来た、ジンライの言葉を思い出す。
。。。
「演算機?あの魔導鎧がですか?」
エラランが困惑するのも無理はない、あれは、どう見ても戦闘兵器に分類される。
「ああ、そうだ」
ジンライが首肯して、詳しい説明を始めた。
「この世界が、精霊に満たされることで崩壊につながることは知っての通りだ。それを防ぐなら、精霊を消し去れば良いと誰でも考える」
ジンライは、その場にいる聴衆を見まわし、異論がないことを確認する。
「そして、我々、評議会が、その方法にたどり着くのも時間はかからなかった」
彼らは、言い伝えや文献をもとに、王の力、黄金律の存在を知る。
その力は、魔物化(精霊化)を抑え無効化する事ができた。
「しかし、対処法があっても、実現は限りなく不可能であることも予想していた。何しろ、この世界中に蔓延した精霊を消し去るんだ、蟻が山火事を消すようなものだ」
それは、その通りだ。
いくら、遺物の力で理を曲げようとも、この世界の住人ではない精霊に、如何ほどの効果も無いだろう。
「そこで、編み出されたのが、世界魔法:払暁の導き手であり、あのバカでかい鎧がそれだ」
ジンライの表情に呆れが混じったのは、気のせいではないだろう。
「君らが指摘したように、世界そのものに干渉する程の巨大な魔術の行使は、人の範疇を越える魔力制御が必要になる」
魔術は、その巨大さ、複雑さにより難易度が跳ね上がる。
「我々の指導者は、そこを逆手に取り、人が制御出来ないなら、人が制御出来る形に収めればいいと考えた」
「それは、どういうことですか?」
その場の半数近くが、話についていけなくなっていた。
「要するに、魔術のままで扱えないなら、扱いやすい道具にすればいいという発想だ」
つまり、魔術で人が自動車の部品を一つ一つ操るのではなく、自動車を作って運転だけを人が行うってことか。。。
「あの鎧の核になっているのは、過去に使用された鎧の模造品だ。それを、何処かの遺跡から、引っ張り出してきた機構に組み込んだ」
ジンライが勿体ぶったそぶりで一呼吸置いてから言う。
「あれは、周囲の精霊を喰らい、巨大化する」
おおっ
という声が上がり、エラランが疑問を投げかける。
「それでは、あの巨体は、精霊を捕食し続けた結果なんですか!?」
「結果というには早いと思うがね。まだまだ大きくなるはずだ」
予想外の回答に一同が驚く。
「まだ、デカくなるのか。。。」
だれかが、ため息とともにこぼす。
「しかし、あれはモノとして存在するには、大きすぎんか? 立って歩いていること自体が信じられん」
技術に明るい土穴族のゴージが、唸りながら疑問を口にする。
「専門ではないので、詳しくは知らんが捕食した精霊は、魔鉱という物質に変換され内部で部品に加工されるらしい。それは、物質と魔力の中間の性質を持つため、重量がほぼ無いということだ」
ジンライが、思い出しながら説明する。
それは、質量を持つ点以外は、光の性質に近いと言える。
見ることも出来て、質量もあるが重さが無いに等しい。
その性質故、自重で崩壊することもなく、歩くこともできる。
「では、あそこにあるのは幻影ということですか?」
「いや、あれは確かに物体としてあそこに存在している。実際に行って確かめてみればいい」
ジンライの冗談とも本気ともとれる発言に、皆がたじろいだ。
「それで、演算機の説明がまだだけど」
アインの鋭い指摘に、ジンライがニヤッと笑う。
「本来、魔術演算は魔法が発動し、その後、術者が無意識に行うものだが、あの魔法は演算を別の方法で行う」
「それは?」
「敵との戦闘だ」
「?」
「捕食した精霊は魔鋼になり、魔鋼はそのまま魔術として消費できる。魔術師は無制限に最大規模の魔術を発動することが可能だ。減った魔力は精霊を捕食して補う。これを繰り返し自らを維持させる」
敵との戦闘行為が魔術継続のカギになる。
知的解決を放棄して、自らの継続維持のために暴力を組み込んだ野蛮な魔術。
精霊を捕食し魔力に変換し、戦闘に消費する。
戦闘が続く限り、この流れは止まらない。
最後まで戦いを続け、打ち倒したとき精霊の存在は、この世界からいなくなる。
「これが、魔術師評議会の打ち出した答え。救世機:ルデラ・エクス・マキナ の正体だ」
聞き終わった全員が言葉を失う。
話を聞き終わった俺は、卒倒できない自分の体を憎んだ。
そいつを打ち倒す相手って、俺じゃねーか?!




