切り札
久しぶりに顔を見せたアインを、エラランが出迎えた。
「お戻りになりましたか、王よ」
「心配かけてごめん。状況を教えて」
立ち直ったアインだが、憔悴した体をアイシャに支えられていた。
それを、気づかぬよう努める一同。
「はい、魔術師共が動き出しました。これをご覧ください」
見せられた一枚の絵には鎧のようなものが描かれていた。
「ファラ殿が、天眼で遠見したものを書き写したものです。ここをご覧ください」
エラランが指さしたもの、それは地面に散乱した瓦礫の跡だった。
「これって。。。」
「そうです、何処かの村の残骸です。家の大きさと見比べると、この鎧の大きさはあの星炎竜と同じか、それ以上と推察されます」
千年前、前王がその身と同化した鎧よりも、はるかに大きい。
「この鎧は、レッド・リバーを越え、荒野砂漠に向かっています」
昔、アイン達が立ち寄ったオアシスのある場所だ。
「これは、何なの?」
「分かりません。分かりませんが、その件で魔術師評議会から使節が来ております。お戻りになられたのが、今でよかった。お会いになられますか?」
「うん、会うよ」
アインが了承し、エラランが謁見の間へと案内する。
謁見の間へ連れられて行くと、そこには4人のローブ姿の男女がいた。
「!」
見覚えのある顔を見たアインが警戒する。
「この人たちって。。。」
「お初にお目にかかる。と言っても、こちらからは初めてではないし、あの者の顔は見知っていると思いますが」
きれいに髪を後ろに流した、大柄な男が挨拶をする。
何処か見覚えのある風貌に、アインが警戒心を強める。
隣で、「よっ」と気軽に片手を上げるザジを、カイルが忌々し気に睨む。
「ぬけぬけと」
「私はジンライ。こちらからサーニャ、ザジ、アルフレッドです。我々は、貴方方を監視していた諜報部の者です」
「監視?それだけじゃないよね?」
リタがイライラして口をはさむ。
「白磁の門の事、忘れてないんだけど」
リタの一言で、その場が険悪な雰囲気になる。
あの襲撃事件で、何人もの人が犠牲になった。
アインの祖父母も、その時、命を落としている。
それを意に介さず、ジンライと名乗るリーダー格の男が話を続ける。
「我々も、任務だったのでね。それよりも、有用な情報を携えた使節だということを忘れないでいただこう」
「。。。皆、まずは話を聞こう」
アインが、皆を取り成しその場を収めた。
「。。。」
ジンライは、監視という形ではあるが、数年を見守ってきた少年の成長ぶりに感心していた。
「早速だが、この世界の崩壊について、そちらもすでに承知の上で話を進めさせてもらうが、よろしいか?」
「ええ、それで構いません」
エラランが話を促す。
ジンライが頷き、続きを話し出す。
「我々、魔術師評議会もその事実を掴み、以前から対策を研究していた。我々には世界を救う手立てがある。本日はそれを共有するためにこちらに参った」
「それは、ナージャ。。。先生からも聞いた。しかし、そのやり方については未知数だと。方法が見つかったというの?」
アインが、ナージャの話した内容を、一言一句正確に伝えた。
「方向性は今言われた通りだ。その方法についてだが。。。王に協力してもらう」
皆の視線が、アインに集まった。
。。。
「ありゃぁ?なんか、踏み潰してしもうたかのぉ?」
「こいつは、下方の視界が悪すぎじゃ」
「まったくじゃ、設計班に文句を言ってやらねば」
村々を踏み潰しながら、まっすぐに巨大な鎧が歩き続ける。
すでに、住民の避難が完了しているとは言え、その暴挙には目に余るものがあった。
それに乗り込んだ三賢者が、口々にここが甘い、ここが使いにくいと、ダメ出しを口にする。
巨大な鎧が歩く度に、製造精度の問題で、体の一部が剥離している。
人類が手にしたその巨大な兵器が、世界を救うための最後の切り札だった。
異邦なる機械
かつて世界を救った、その機械を模して完成したその鎧の名は。。。
遺瓦礫の機械鎧
世界を救うガラクタが、戦いの地へ向けて、はた迷惑な歩みを続けていた 。




