物語のように
「やるじゃない!あんな、でくの坊、やっつけちゃえぇー!」
炎の中から現れたヴァルカの姿を見て、アイシャはご満悦だ。
次の瞬間、ヴァルカがずっこける。
周囲に飛び散る土と衝撃に、アイシャが巻き込まれ吹っ飛ばされた。
「あほぉぉぉおおおおおおお!!!!」
衝撃に飛ばされながらも、罵倒することは忘れないアイシャが土煙の中に消えていく。
ミリーの救出へと行動を映していたカイル達が振り返る。
「大丈夫なのか、あいつら?」
「あっちゃぁー」
「しろさーん。。。。」
初めから締まらない展開に、不安を覚えつつミリーの元に急ぐ三人。
「あははははははははははは」
相変わらず狂ったように笑い続けるミリーの足元まで来た。
「でも、どうやって正気にするの?」
アインが少女を心配して顔を曇らせる。
「ん-まあ、姫を目覚めさせるなら、王子のキスってのが定番だよな」
カイルがもっともらしく語り、頷きながら口元をニヤッとさせた。
「へっ?」
アインが間抜けな声を出すと、カイルとリタに両脇を固められる。
腕を持たれ、体ごと振り子のように振り回された。
「そぉら!行ってこーい!」
「むちゃくちゃだぁ!」
思いっきり放り投げられたアインは、ミリーの元へ一直線に向かっていった。
。。。
巨人になったヴァルカと土の巨人が、お互いがっぷりと両手を合わせ、相手を抑え込もうと力勝負に出ていた。
「ぐぐぅ。。。」
徐々に押され始めるヴァルカ。
質量の違いからか、力勝負では分が悪いようだ。
(押されてるぞ!頑張れ!フレーフレー、ヴァ・ル・カ!)
(ふれぇ、ふれぇ)
「やかましい!気が散るわ!」
ヴァルカが怒声を上げる。
手持無沙汰な俺たちは、やることがないのでヴァルカを応援したが、なぜか怒られた。
「白いのとちっこいの!あんたたち後ろから炎を噴き出せる?」
(お、炎で後押しするんだな。やってみるか)
(コクコク)
「こっちは気が抜けないから、あんたたちに頼むわ」
そうして、俺たちは背中に集中する。
(せーの!)
俺が炎を吹き出すイメージを思い浮かべる。
(そい)
気のぬけた掛け声で力を込めるもう一人の精霊。
ばしゅっ!ごごごぉぉぉぉぉぉおおおおおお!
すると、炎の魔人の肩甲骨の辺りから、炎が吹き出し翼のように広がった。
排出される炎に助けられ、徐々に体勢が戻っていく。
(このまま、巨人を押さえておいてくれよ。後はあいつら次第だ)
「了解!」
。。。
二人に放り投げられたアインだが、ミリーに届く前に失速するかと思われた。
しかし、ミリーの周りに渦巻く風が上昇気流となり、少年の体を宙に浮かせ少女の元へと運んだ。
「ミリ姉ぇ!」
アインが呼んでも返事はなく笑い続ける少女。
ミリーの腰に掴まり、よじ登るようにして顔を見る。
瞳孔は隠れ、白目をむいている。
「どうしたらいいんだ?」
アインはこの状況にパニック寸前になっていた。
(姫を目覚めさせるなら、王子のキスが定番だよな)
カイルの言葉が頭の中でリフレインする。
「もう、どうにでもなれ!」
アインはやけになって、ミリーに顔を近づけ、そして。。。
ジッとその美しい顔を見つめる。
いまさらながら、胸がどきどきしている。
(ごめん、ミリ姉ぇ)
少年が少女の唇にそっと口づけをすると、突風が止んだ。
暴嵐は去り、雷の音は遠くへ消えていった。
吹きすさんでいた風は穏やかな涼風へと変わり、いくつもの花弁が舞う。
「あーーーーーー!!!!」
地上で空を見上げたアイシャが二人に気付いて声を上げた。
唇が離れると、アインの目の前に真っ赤な顔をして、目を潤ませるミリーの顔があった。
「気が付いた?ミリ姉ぇ」
「。。。うん」
アインの言葉に下を向いて恥ずかしそうに答える少女。
すぅーっと地上に降りて離れる二人にカイルとリタが駆け寄る。
「もう大丈夫みたいね」
「やったな、アイン」
「ごめんなさい。ここから仕切り直します」
ミリーが気を取り直して前を向く。
「大丈夫?」
「ごめんね。でも、これは私がやらなきゃいけないことだから。。。」
ミリーの決意に、誰も異を唱えることはなかった。




