ヴァルカ覚醒、魔人インフェルノ
ずぅううん。ずぅううん。と巨人の足音が山々に鳴り響く。
嵐は止まず雨は滝のように降り続け、風はさらに強さを増している。
にもかかわらず、巨人は雨も風も稲妻も、ものともせずゆっくりと近付いてくる。
「あはははははははははははははは」
ミリーは精霊に感化され狂ったように笑い続けている。
白目をむいて、正気を失っていることは一目瞭然だ。
「まずいぞ、あれ」
カイルがそれを見て焦る。
俺はこの状況を何とかできないか考えた。
(。。。坊主、剣を出してくれ。みんなに話したいことがある)
「白さんが話したいことがあるって」
皆が注目したところで話し始める。
「アイシャ嬢ちゃんと精霊の姉ちゃん。今から話すことに協力してくれ」
俺が話し終えると、ヴァルカが顔を引きつらせて拒絶した。
「無理、無理、無理、無理、無理、絶対無理だって!あんた何考えてんのさ!?」
「。。。」
アイシャは黙って考え込んでいる。
「今、他に方法は残ってないのよね?」
アイシャの問いに俺は答える。
「あの巨人に対抗する方法は俺たちには無い。ミリーがあの状態じゃ積みだ。やれるかどうかわからないが、これしかない」
アイシャがビッと指をさしてヴァルカに命令する。
「ヴァルカ!命令よ。協力しなさい」
「ご主じぃん。。。」
半泣きで不平を漏らすヴァルカ。
作戦は決まった。
「よっしゃ。いっちょやったるか。行くぞ!みんな!」
カイルが気合を入れ、掛け声をかける。
それを合図に皆がそれぞれの行動に移った。
。。。
ナージャは、彼らが何かをしようとしていることに気付いていた。
しかし、それがどんなものだろうと戦況を覆すまでには至らないと気にも留めない。
勝利は確定している。
奴らが足掻いたところで、どうにもなるまいと考えたその時。。。
巨人の目の前に巨大な炎の柱が現れる。
その柱の中に何かの影が見える。
「な、何っ!?」
そのあとに現れたその姿に、ナージャは驚きの声を上げた。
。。。
「坊主、やれ!」
「うん!灼煌の魔眼!」
アインの左目が赤く変化し、魔眼が発動する。
その視線の先にあるのは、ヴァルカだ。
アインの左目から火線が伸びてヴァルカに直撃した。
「ぐっ!」
ヴァルカが苦悶の表情になり声を上げる。
「いいぞ!やれ!」
俺はその火線を通り、ヴァルカに侵入する。
「ん、あっ」
何やら艶っぽい声を上げるヴァルカ。
(やるぞ!意識を保てよ。ヴァルカ!)
俺は、体を大きくする。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
ヴァルカが苦しみか、快感か分からない声を上げて耐える。
「あぁぁぁぁぁああああああああああ!」
炎の柱が一気に吹き上がり、巨人の足を止める。
炎から現れたその姿は、巨人と同じ大きさの火の精霊。
インフェルノ・ギガス:ヴァルカ
その姿は、普段のヴァルカの姿のまま露出部分が炎となり、内部から炎の力が吹き出している。
土の巨人に対抗すべく、俺とヴァルカが合体し巨大化した姿だ。
俺が最初に覚えた権能は、実体の無いコケ脅しでしかなかった。
一方、ドールであるヴァルカには実体があり、掛け合わせることで何かが起こるんじゃないかと考えた。
もちろん一か八かだ。
ヴァルカは当然嫌がったが選択肢はない。
これが成功したら、ミリーをアイン、カイル、リタの3人で何とかするという作戦だ。
そして、俺たちはその賭けに勝った。
(おっしゃぁあああ!うまくいったぞ!)
「まじかぁ。これ、なんか気持ち悪いんだけど」
思惑通りで喜ぶ俺と、複雑な思いのヴァルカ。
(これで、五分五分だ!いっけぇええ)
「うぉりゃぁぁぁ」
掛け声を上げて巨人に挑んだ炎の魔人だったが。。。。
ずどっべぇどっがぁぁぁぁん
盛大にすっころんだ。
(な!?なにしてんだよ?!)
「あたしは、右足出そうとしたんだよ!」
(あたしは、左足。。。)
(ん?)
「ん?」
もう一人いる?
(うぃ)
「まさか、灼煌眼の中にいた子か?!あんた付いてきちゃったの!?」
ヴァルカがそいつのことに気付く。
(なんか、こっちにいた)
体の中に3人の意識が入り込んだみたいだ。
(いやぁ、こういうの想定外っていうんだな)
俺は、見通しの甘さをごまかした。
「あんた、何、他人事みたいに言ってんのよ!うわぁ、あぶなっ!」
俺たちの混乱をよそに、巨人が攻撃してくる。
頭を踏みつけられるところを、寸前に転がって回避した。
(とにかくバラバラに動いてちゃだめだ。皆心を一つにして。。。)
「テキトーなこと言ってんじゃないわよ!あたしが体を動かすから、あんたたちはジッとしてて!」
俺の言葉を遮り、ヴァルカが宣言する。
(お、おう)
(あぃ)
俺たちはその言葉に従い傍観に徹することにした。




