土と風と
「土傀錬成 千の挙兵 無限陣」
ナージャが最も得意とするゴーレム錬成による物量戦術に切り替えた。
ぼごっ ぼごっ ぼごっ
ぼごっ ぼごっ ぼごっ ぼごっ ぼごっ
錬成された土の兵士が、地面から無尽蔵に溢れだした。
「やはりそう来ますか」
ミリーが予想した通り、圧倒的な物量で押し切る作戦だ。
押し切られれば魔術を行使する余裕はないだろう。
だが、彼女は対策を考えていた。
「我、風精の主が命ず。大気に潜む精霊よ。水気、風気、雷気を司るもの共よ。集いて舞い踊り、その力を解き放て!」
「来たれ暴嵐!」
黒雲が集まり渦を巻く。
雨が大地を叩く。
雷鳴が鳴り響く。
突風が吹き荒ぶ。
「さあ、みんな!宴の始まりよ!」
ミリーが魔力に感化され高揚した声を上げる。
少女が呼んだ嵐が、土人形を吹き飛ばす。
雨で脆くなった体に稲妻が浴びせられる。
無限に生み出される兵士は、土塊になり空の彼方へ吹き飛ばされた。
「あはははははは!もっと、もっとよ!塵に還りなさい!」
少女の常ならぬ言動に不穏なものを感じる。
極大魔法:来たれ暴嵐
その魔力制御は精緻を極め、成功したとしても精霊からのキックバックにより精神を侵される。
今、彼女は精霊たちが自由を謳歌する歓喜に触れ、その力に酔いしれている。
「何かミリーの様子がおかしくない?」
リタは少女が理性を失っている事に気付く。
「婆さんが何か始めるぞ」
カイルの声に、皆がナージャに注目する。
兵士を前衛と後衛に分け、前衛部隊が全体を守るよう陣形を組みなおした。
風に吹き飛ばされないように一人一人が繋がりフォローする。
後衛は生み出される新たな兵士を守るように盾で強風をしのぐ。
兵団の数が元に戻りつつあり、次の変化が起こった。
「集結し組みあがれ!我、土の精霊の主が命ず。錬成し形を成せ!巨人よこの地に現れよ!」
「土傀錬成:大巨人!」
土塊の兵士が折り重なり、巨大な土の塊となる。
土の塊にさらに兵士が加わり、徐々に形を取り始める。
人を模したそのゴーレムの全長は100mに達した。
零落の花姫とほぼ同じ大きさだが、それは圧倒的な質量を有していた。
2つほど山向こうにいた旅人は、急な嵐と雷鳴にもかかわらず、なぜかこちらに被害がない事に困惑していた。
嵐の中心地である、かつての村の跡がある方向を見ると、巨大な影を目にする。
「。。。山が、動く?」
ごごごごごごごぉぉぉぉぉ
その巨大な人形は、嵐をものともせずにそこに立ち続けた。
ナージャはここまでの流れを読み切っていた。
物量を向かわせればミリーはそれに対処するであろうことを。
そして、それにより魔法による精神侵害が起こる事を予想し、そのタイミングで超質量兵器を顕現させた。
どんな嵐でも山を持ち上げることができないように、この巨人も破壊されることはない。
術者は正気を失っており次の対処をすぐに行う余裕はない。
「勝たせてもらうぞ。バカ弟子。。。」
ナージャが勝利を宣言し、ミリーに巨人を差し向けた。




