魔術対戦
魔術師同士の戦いの火蓋が切られた。
同陣営での争い、特に大魔術師クラスの対戦は過去に例がない。
魔術師評議会が発足されて以来、史上初の戦いとなる。
先に仕掛けたのは意外にもナージャだった。
「土塊錬成!飛翔尖!」
無数の槍を生み出し上空のミリーに向けて飛ばした。
ミリーが片手を振ると、腕に纏った透明な衣がひらひらと舞い強風が起こる。
向かってくる土の槍は、風に翻弄されるように向きを変えられた。
「ふん、小癪な真似をするじゃないか」
ナージャは魔法の発動すらさせずに回避した少女に感心した。
風精霊の権能は回避に特に秀でている。
並の攻撃では捉えることは出来ないと判断したナージャは次の攻撃に移る。
「上空に居られたんじゃ厄介だね。どれ」
ナージャはそう言って地面に手をつくと、土精霊の権能で大地に杭のような塔をいくつも生み出した。
自らもその塔によって上空に持ち上がる。
「っ!」
ミリーは周りをいくつもの土の塔で囲まれ、威圧感を感じ距離をとろうとする。
「逃がさないよ!弾けろ!」
土の塔が一斉に土塊に変わり、四方からミリーに降りかかる。
「きゃぁあああ」
思わず声を上げて下方向に逃げる少女。
それをナージャは狙っていた。
「土竜洪!」
土砂から逃れ地面すれすれまで下降したミリーに土石流が襲い掛かる。
「旋風竜の咆哮!」
上空に向かって竜巻が土砂を巻き込みながら昇っていく。
竜巻が消え去った後に少女の姿が現れた。
ミリーは竜巻の中に身を隠したためにナージャの姿を見失っていた。
「師匠はどこ?」
あたりを探したが見つからない。
空が陰る。
ミリーが見上げると巨大な岩塊が空から降ってきた。
「星片の崩落」
ナージャが50mを越える超質量の岩塊を降らせた。
視界全部を覆う程の巨大な質量を前に、ミリーは慌てずに力ある言葉を唱える。
「幽火の光」
掌から青白い人魂のような炎の塊を放つ。
小さな炎が少女の元から離れ、ゆっくりと岩塊に向かっていく。
ミリーは急いでその場を離れようと地上に向かった。
ナージャはその魔法を知らなかった。
落ちてくる岩塊に比べて、余りにも小さいその炎に一体どのような意味があるのか。
だが、ミリーの慌てぶりを見て嫌な予感がした。
その小さな炎が岩塊に接触すると、閃光が起こりその場が一瞬白く染まった。
信じられないことに、頼りなく浮いていた炎の塊は一瞬にして、巨大な岩塊を溶かし分裂させた。
それはミリーの専修魔法だった。
空気分子を電離してプラズマ状態にし、接触した瞬間に3万度の高熱を発生させる。
瞬間的に発生した超高熱によって、巨大な岩塊が形を維持する事が出来なくなった。
灼熱に溶けた岩塊の欠片が周囲に降り注ぐ。
このままでは周囲の木に燃え広がってしまう。
ミリーは逃げると同時にこの集落全体を風の結界で覆っていた。
少女は落下した岩が森に落ちずに済んでほっとする。
「。。。」
ミリーの専修魔法にも驚かされたが、戦闘中も周囲への配慮を行う余裕にナージャが舌を巻く。
今、目の前にいる魔術師は、ナージャの長い経験でも会ったことのない強敵だと修正した。
ぞくっ
ミリーはそれまでと師匠の纏う雰囲気が変わったことに気付く。
ここからが本番だ。
師匠の本気が見られる。
その思いは、恐怖よりもそれを引き出した自分への誇らしさが勝った。
気を引き締めて戦いに臨むミリー。
一方、地上でそれを見ていた俺やアイン、その他の面々は口を開けて出鱈目な戦いぶりに唖然としていた。
「なあ、あの二人が本気になったら、大陸全土を滅ぼせるんじゃないか?。。。」
「つくづく魔術師ってのはとんでもないね」
カイルとリタが観客になりきって感想を述べる。
「呑気なこと言ってないで、加勢とかできないの?」
アイシャが無茶なことを言うが、誰もそれに答えない。
「ミリ姉ぇ。。。」
(。。。)
戦いは前哨戦を終えたばかり。
ここからどのような展開になるか、その場にいる誰もが想像できずにいた。




