最終通告
アイシャと眷属の戦いが始まった。
迎撃に出た炎の竜の数は十数匹。
その大きさは、迷宮で戦った獄炎竜とそう変わらない。
実体というものがなく炎そのものが形をもつ。
ヴァルカが敵の正体に気付く。
「ご主人、こいつら火蜥蜴と同じ半物質だ。物理攻撃だけじゃダメージが足りないぞ」
「ならこっちも真似ればいいのよ!出来るわよね、エクサ?」
アイシャが鎧の疑似人格に問う。
『はい、マスター。ドール:ヴァルカの力をお借りします』
「え?勝手に?うくっ」
ヴァルカの不平を無視して力を引き出す。
炎装:業火の剣
手にした二本の剣から炎が噴き出し刀身が赤く染まる。
ごぉおおお
向かってきた炎竜を斬り伏せる。
かろうじて撃退したものの、ダメージは思ったほど与えられていない。
こちらも火、相手も火の同属性の場合、単純な力比べになる。
火力の低い方がダメージを負う。
物理ダメージが入る分、こちらが有利だが優位とは言えない。
『もっと火力が必要です。出力を上げてください』
「やってんだよ!くっそぉ。これでどうだぁ!」
ヴァルカがエクサに煽られて力をふり絞る。
炎が赤から青白くなり刀身もそれによって青く輝く。
2000度近くまで跳ね上がった刀剣が炎竜を両断する。
「やった!」
アイシャが歓喜して叫ぶ。
様子を見て一匹ずつ攻撃していた眷属が、戦法を変えてきた。
同時に数匹が波状攻撃を行う。
エクサの疑似人格はその攻撃パターンを予測し、的確に回避する。
『敵の攻撃行動を予測して表示します。指示通り動いてください』
「「できるかぁ!」」
回避しながら無茶な要求をしてくるエクサに、思わず突っ込みを入れる。
アイシャとヴァルカが同時に挙げた不平に、冷静な声が返答する。
『補助します。自認時間を延長しました』
急に周りの動きが遅く感じられ、敵の攻撃がゆっくり見える。
「これなら!」
アイシャはエクサに指示された軌道で剣をふるう。
敵の波状攻撃に合わせて、踊るように剣が振るわれると数匹の眷属が同時に落ちていった。
。。。
アイシャに投げられ、ものすごい勢いで星炎竜の元に飛ばされたアインは、目を回しながらも勢いが落ちてきたことを感じる。
両ひざを抱えて丸まっていた体を開き、スカイダイビングのように空を滑空する。
目を開くと目の前に巨大な竜の顔が見えた。
実際には、まだ距離は遠く声が届くとは思えないが、少年は剣を掲げて命令した。
「王命!我の声を届けよ!」
「了承。言紡げ 裁定者の黄金律」
しかし、力は発現せず、剣は応えてくれなかった。
「坊主、すまん。さっきので打ち止めだ。。。」
俺は自分のふがいなさを情けなく思った。
「なら、僕の力も使って!」
「っ?!」
俺は戸惑った。
転生者ではないアインの魂が耐えられるのか?
「白さん!迷ってる暇ないよ!そうしないとこの世が終わる!」
坊主は自力で黄金律の力を発現して見せた。
そこに賭けるしかない。
「わかった。もう一度だ!」
「王命!我の魂をもって我の声を届けよ!」
「了承。言紡げ!裁定者の黄金律!」
カシッ
少年の中で何かが砕けはじける音がした。
黄金の剣が二人の呼びかけに呼応して輝きだす。
少年の体が浮き、剣から光があふれる。
黄金の光柱が天に向かって伸びる。
その光は内側から力が溢れ、焔のように輪郭が揺らめく。
やがて、光の柱は巨大な流線型の剣の形へと変貌した。
光り輝く巨大な剣は、巨竜を凌駕しその存在を知らしめた。
突如現れたまばゆい光に、我を忘れていた星炎竜が正気を取り戻す。
そして、進行を停止した。
その場で対峙した王を竜が初めて認識する。
『我に何用か、当代の王よ』
今までとは違い理性の宿る目で星炎竜が問う。
「偉大なる調律者よ。僕の話を聞いてほしい。世界の浄化を待つ約束を新たに交わすことを許してください」
『ならん!』
にべもない。
その威圧だけで吹き飛びそうになる。
「どうして。。。」
『すでに時は満ちた。これは我の意思ではどうにもならん。世界を調律するために存在する我らは自動的であり、その衝動に逆らうことができない』
星炎竜の言うことは事実なのだろう。
世界はそれほどまでに壊れた。
「でも、僕らはまだ答えを見つけていません。ほんの少しでいいのです。時間をください!」
アインも引くことはしない。
『。。。1年だ』
「!」
『我の原理を歪ませる。その期間は1年。それ以降は、どんな言葉も受け入れぬ。たとえその剣の力であっても止めることはできぬと知れ」
そう言い残して、星炎竜の姿が消えていった。
巨大な竜の姿は、跡形もなくその場から無くなっていた。




