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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
三章 神祇創生

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157/212

洞

「教主様、後方から伏兵が現れました。我々は挟撃されています。いかがいたしましょう?」

冷静に報告する女に苛立ちを隠さずローブの男が怒鳴り返す。

「いかがも何もあるか!すぐに、零落の花姫を動かせ!」


当初の目論見は、王国軍を狭い峡谷におびき寄せて、花姫の回復力をもって敵を殲滅するはずだった。

初めは上手くいっていたが、予想外に戦線は膠着し始めた。

それもそのはずで、信者は戦闘のプロではなく実践経験も乏しい。それを率いる前線の指揮官も所詮は素人だ。力で圧倒できてもそれが勝率に繋がらず、思っていたほどの戦果は上がっていなかった。


教団側は混成人(アマルガム)の圧倒的な強さに目が眩み、戦争の本質を見誤った。

一方、国王軍は目的がはっきりしており、それに向けての作業を着々と積み上げている。

前線での勝利ではなく、戦いを長引かせて渓谷から敵を引きはがし、アイン達の突入を支援するのが目的だ。


そして戦闘が膠着した時、背後に突然兵が現れた。


教主を含め前線で指揮していたものはパニックになった。

「どういうことだ。。あれだけの数の兵が通れるような道はなかったはずだ」


だが、すぐに教主は落ち着きを取り戻した。

たとえ数が多くとも、零落の花姫はそれを凌駕する。

何人来ようとも奴の餌でしかないと。


「零落の花姫に数人がとりついたようです」

女は冷静に報告した。


「。。。何?」

あれにとりついたとしても、吸収されるだけだというのに愚かな。

そう考えた教主は、はっと気付きガタッと席を立つ。

「王が直接来たのか?!前線に王が居たという報告だったな?」

「はい、そう報告されています」


女の報告に、男は舌打ちをする。

「ちっ、まんまとしてやられた、それは偽物だ。私は奴のところへ行く、ここは任せるぞ」

「はっ」


女の返事を待たずに、男はその場を後にした。


。。。


零落の花姫の足元まで来た、アイン、カイルそしてリタの3人は触手を捌くことに苦労していた。


「こりゃきりがないぞ!」「ひぃ。変なとこさわんな」

カイルとリタが苦戦している。

「リタ姉ぇ!少しの間、時間が欲しい!」

アインがリタに隙をつくれないか聞いた。


「わかった!」

そう答えたリタが螺旋の尖針(ヘリックス・ニードル)に風の宝珠をセットする。


「それ!」

掛け声とともに一本の針が地面に刺さる。

3人が集まり、そこを中心に風の結界が渦巻くと触手が弾かれた。

「俺たちじゃ、ここから先は足手まといだな」

「ここからは僕と白さんだけで行くよ」

アインはそう言い、言葉を唱える。


「わが身を守りたまえ、守護者の黄金律!」

纏っていた白霧の羽衣が金色に輝きだす。

金糸が織り込まれる様に姿を変えると、黄金の全身鎧に変化した。


守護者(ガーディアンズ・)の黄金律(ゴールデン・オーダー)


4年前では一部しか変化させることが出来なかったが、これまでの努力で全身を覆う鎧とすることができた。


(坊主、分かってると思うが時間がない、急ぐぞ!)

この形態を維持できる時間は10分。

それまでに決着をつけなければ。

「行きます!」


そう言葉を残して、アインが駆け出した。

迫る触手は少年の体に触れることができずはじかれる。

(行けそうだな)「うん!」


緑色の蔓が集まった巨大な足を脱兎のごとく駆け上がる少年。

一気に腰まで登ると、これ以上外側に足場が無いことに気付く。

ここからは内部から向かう必要がありそうだ。


「剣よ在れ」

アインが剣を呼び出し、零落の花姫の腹部を切り裂く。

人が通れるサイズの穴を開けて中に侵入した。

全体から見れば小さいせいか、それとも痛覚が無いのか零落の花姫は何の反応も示さない。


腹部から侵入したアインは、その光景を見て愕然とした。

この大きさを維持するためか、下半身に比べ上半身の蔓の密度が薄く、隙間だらけだった。

それは、これまでに犠牲になった人々の姿を露わにした。

無数に張り巡らされた蔓には、犠牲者の骨が絡まり大量の不気味なオブジェと化していた。


(行くぞ、坊主)

「。。。うん」

アインは、気落ちする自分を叱咤するように気合を入れて登り始めた。

骨の数は異常なほどあり、大きなものや小さなもの。まだ子供でしかない大きさもあった。

「これをジルが。。。」


やさしいあの少女が、このような残虐な結果を招いたなどと思いたくなかった。

そうして登っていくうちに、大きなこぶのようなものが見えてきた。


「白さん、あれ!」

(どうやら着いたみたいだな)

ここまで登ってきた感覚では首の部分にあたる。


「剣よ!」

アインは剣を手にして登る勢いそのままに一閃する。

その中は空洞になっていて少年は中に飛び込んだ。


大人の男数人が立って居られるくらいの空間があり、蔓で覆われている。

切り裂いた入り口はすぐに別の蔓で塞がれてしまった。


そこに、彼女がいた。


「。。。ジル」

四肢を失った少女が、壁に貼り付けられたような姿でうなだれていた。

最初に見たときは気付かなかったが、手足から延びた触手がこの部屋、そして巨大な花人を作り上げていた。


その姿に言葉を失う少年。

「ジ。。ルなの?」

声がかすれ上手く出せない。


声をかけても反応も示さない少女に近づこうと、歩き出そうとしたとき、あの男が現れた。

「困りますな、王よ。女性の部屋に入るときは事前に許可を取らないと」


入口がふさがったこの空洞に、どうやって入り込んだのか、男は不気味に笑いを含んだ声でそう言った。


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