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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
三章 神祇創生

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救う覚悟

植物の蔓で覆われた穴倉にその少女はいた。

「何時まで、こんなところにいるつもりだ」


ローブの男が鬱陶し気に少女に声をかける。

少女の目に光はなく、男の声にも反応しない。


「ちっ。まあいい、時が来れば働いてもらうぞ。お前は我らの供物なのだからな」

何を言っても反応のない少女に一瞥をくれて男は立ち去る。


四肢から伸びた蔓が、この穴倉を覆う蔓につながっている。

ここは、巨大な花人の首の奥に造られた空間。

零落の花姫《フローラ・デプロラタ 》と呼ばれる巨大な混成人(アマルガム)。

それは、いくつもの街や村を飲み込み、全長100mもの巨体に成長していた。


。。。


痛い。苦しい。助けて。パパ、ママ。

やめてくれ!俺を飲み込むな。。足があああ。

やめてぇ!この子だけは、助けて!だめぇ!いやぁぁぁぁあ!


幾十、幾百の声が聞こえた。

私の中に溶け込んでくる。

怒り、恐怖、歓喜、絶望。

いくつもの感情がスープのように混ざりあい、私はそれを飲む。


痛い。


最後に残るのは、いつもこれだ。


痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。


私は、何?

自分の事を思い出すことが出来ない。

残ったのは、たった一つの願い。


助けて。。。。アイン。。。


。。。


谷底の廃村は今や、数百の混成人(アマルガム)に埋め尽くされていた。

そのうちの半分は、零落の花姫《フローラ・デプロラタ 》の傀儡だ。

花の苗を埋め込まれた者は、本来の能力とは別に生命の力を本体から借り受ける。

どれだけ傷つこうとも回復してしまう。


国王軍が街や村の奪還に手こずっているのは、この再生能力に寄るところが大きい。

回復は自身に使うことも他者へも可能で、敵の常に回復しながらの進行に手を焼いていた。


「もうすぐ見えてきますよ!アイン様!」

ファラの手につかまり、谷底の村への抜け穴を探す。


洞穴の入り口が見えた。

「あそこ!」

アインは大きな声でファラに伝える。

ファラは降下し、後に続く仲間たちもそれに続く。


ここに来るまでに、上空から破壊された町や村を見た。

建物は瓦礫と化し、人の姿はなく、まさに壊滅状態だった。

昔立ち寄った街も見る影もなく破壊されていた。


ジルが自分の意思でそんなことをするはずはない。

そう信じて、あの男に操られていたとしても、この惨状を容易に許すことはできなかった。


洞窟の入り口に到着した。


そこで、今後の作戦をおさらいする。


カイルが全体の流れを説明する。

「エラランたちが正面から軍を率いて戦端を開く。俺たちは抜け穴から村に侵入し、タイミングを見て後方から強襲する。浮足立った敵の隙をついて、あのデカいのに取り付く」


皆が神妙な顔で聞く。

「奴に取り付いたら、頭部まで向かう。アインの話ではそこに本体がいるはずだ。そのあとは。。。」

カイルが言いにくそうに少年を見る。


アインは静かに目を閉じる。

「分かってるよ。ジルは僕がこの手で止める。それしか救う道がないなら。。。」

(。。。)


「アイン。。。無理しないで」

ミリーが気遣わしげに声をかける。


「大丈夫。ミリ姉ぇ。。僕は、大丈夫だから。。。」

その声はかすれ、聞くものに不安を抱かせるものだった。


仲間たちはそんな少年にかける言葉もなく、ただ見守る事しかできなかった。


。。。そして時間が来た。


谷の向こう側から大勢の鬨(とき)の声が聞こえる。


「行くぞ」

カイルの合図で洞窟に侵入する。

洞窟を抜けると、そこに人影はなく谷の入り口の方では戦いの音が響いていた。


「気付かれずに済みそうだな」

「こっちに高い建物があったはず」

アインは昔の記憶を頼りに2階建ての建物を探し、案内する。


その建物は今も形を残していた。

二階へと上がり様子を伺う。


アインは知らない事だが、この建物はジルが夜に連れられていた場所だ。

大き目のベッドとシーツ以外の物がなく物悲しく目に映る。


「戦闘が始まって時間が立ってないようだ、しばらく様子を見たほうがよさそうだな」


零落の花姫は村の中央に陣取り、混成人(アマルガム)の集団の最後尾を守っていた。

本体は戦闘に参加していないようだが、花の苗を植え付けられた僕(しもべ)が戦っていた。


エラランが率いる軍の中央にはアインの影武者として、髪を短く見えるようにまとめたアイシャがいた。


自分も参加したいのを必死に抑えて大人しく座っている。


「姫さん、うまくやってるようだな。おっそろそろ動き出したか。ばあさんいけるか?」

戦闘が膠着状態に入り、巨大な花人がついに動き出した。


「どれ、久しぶりに本気を出すかのぉ」

やれやれと、腰を上げミリーに付き添われて階下に向かう。


「俺たちも行くぞ」

「うん」

カイルの言葉に、アインが返し、リタがうなずく。


外に出たアインは、老魔術師が取り行った魔術の発動を見る。

それは、かつて千鬼の主(サウザンドマスター)と呼ばれた彼女の扱う最大級の魔法であり、土系魔法の完成系とも言われる大魔法。


「出でよ、土塊の戦士たち!主の命により戦いの地へと赴くことを許す。益荒男共よその形在り続ける限り戦え!」


「千の挙兵《サウザンドライジングアーミー》!」


地面から、河原から、土と石から出来た土塊の兵士が現れる。

その数は千体。


彼女の異名そのままに、すさまじい数のゴーレムが後方から教団の暴徒へ襲い掛かる。

急に現れた、本隊を越える数の挟撃に、混成人(アマルガム)の兵団は徐々に数を減らし、零落の花姫への道が開いた。


「いまだ!いくよ!」

アインが合図して走り出す。

両脇をカイルとリタが固める。

3人は猛禽類のような素早さで零落の花姫にとりついた。


「待ってて、ジル」


アインはそう呟き、覚悟を決めた。


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