再会
ごぉおおおお
「!」
聖堂を監視していたアイン達一行は、屋根を突き抜けて伸びた炎の柱を見た。
「あれは。。。カーラ?!」
彼女に何かが起こったことは明白だ。
「突入!」
突入部隊の隊長に指示し、堂内の全員を拘束する。
ばきばきばきばき
炎の精霊と化したカーラを追うように、空いた穴から緑色の触手が這い出して来る。
聖堂の床、屋根を壊しながら、それは姿を現した。
巨大な木を思わせるその姿は、幹が緑色で上部は様々な花で彩られている。
よく見ると、幹ではなく茎や蔓が寄り集まって一つになっていた。
その巨大な茎が支えるのは、これも巨大な赤と白の花。
その周りに大小さまざまな花が咲き乱れ、遠くから見れば花束のようにも見えただろう。
一番大きなもので直径3mはあるかという巨大な花が持ち上がり、聖堂を壊しながら全身を現す。
茎や蔓によって象られたそれは、まるで女性の姿をしていた。
ぎゃぁぁああああ
ごぉああああああ
叫びと怒号が上がる。
その体に、混成人と魔族が絡め取られ次々と吸収されていく。
アイン達はかろうじて聖堂の残骸から抜け出し、その巨大な姿を見る。
「あれは!?。。。」
人々を取り込んで巨大化し続ける異様な光景に言葉を失う。
俺は頭頂部に咲く花を見て、既視感を覚えた。
(坊主、あれ、まさか。。。)
「。。。違うよ。そんなはずない!」
少年も気付いていたはずだが、全力で否定した。
優しい笑顔で見送ってくれた少女の姿を。。。
巨大な花人は街を破壊し続け、逃げ遅れた住人を取り込んでいく。
「ははははは!そうだ、零落の花姫よ全てを壊し奪うがいい!お前こそ私が求めた最高の供物だ!」
巨大な花の花弁につかまりながら、フードの男が叫ぶ。
ごぉ
上空でカーラが炎で花姫の進行を止めようとしている。
「カーラ!」
アインが叫ぶと彼女もこちらに気付いたようだ。
合流し半精霊の姿を解き、いつもの姿で報告する。
「坊ちゃん、祠はすでに破壊されたようです。真偽はわかりませんが、あの化け物にとりついている男がそう言ってました」
カイルがカーラに聞く。
「あれは、なんなんだ?」
「分からん、私が見たものの中にはいなかった。。。いや、影にいたあいつか。奴らは人を混成人に作り変えていました。あの化け物は、混成人を吸収して巨大化してます。お早く避難を」
アインは聞き入れなかった。
「だめだよ。街の人を逃がさなきゃ!それに。。。」
少年は言葉を続けることができなかった。
今目の前にある脅威が、王になることを勧めた少女とは思いたくなかった。
(。。。俺が、注意をそらす。その間にみんなを避難してくれ)
「白さん?」
少年の言葉を待たずに、俺は自分の姿を巨大化させた。
精霊を過剰に取り込んだあの状態なら、俺を見る事ができるんじゃないか。
目の前に急に現れた巨大な白い物体に花姫が反応した。
(よし!)
久しぶりだがうまくいった。さらに大きくなる。
身長は30mを超えた。
花姫は自分より大きい相手に向かって、蔓の触手を振るう。
触手は空を切り捕らえることができない苛立ちに、さらに数を増やして伸ばす。
「な?何をしている!」
フードの男が困惑する。
突然、制御を失ったように蔓をあらぬところへ伸ばし続ける僕を叱責するも言うことを聞かない。
「今のうちに避難を!」
アインの命令で入口へ避難を始める。
その場から移動できないアインは、事の推移を見守っている。
住民の避難が終わり、あたりには誰もいなくなった。
「白さん!もう大丈夫!皆避難したよ!」
(わかった!)
元の大きさに戻りながらも、倦怠感のようなものを感じた。
この体で自分がダメージを負っていたことに驚いた。
(あの化け物、普通じゃないぞ。精霊を取り込むことに特化してる)
「。。。」
「そこにいるのは王か!」
上空から男の声が聞こえた。
「お前が。。。お前が、みんなをこんな姿にしたのか?!」
少年の怒声が響く。
「そのとおりだ、幼き愚かな王!この世界を救うなどと吹聴してるらしいが愚かなことだ!貴様は何も救えない。この少女のようにな!」
「!?」
花の花弁。その隙間から四肢から蔓が伸び、巨大な体と一体化した少女の姿が見えた。
その姿を見てアインは叫んだ。
「ジルーーーーーーー!!!」
懐かしいその顔。
幼くやせ細っていた体は女性らしく成長しているが、あのジルだ。
意識を失っているように目をつぶる、その少女を知っている。
かつて少年に王となる事を望んだ優しい少女。
俺は少年の怒りに呼応するように力が満ちていった。
「ほほぉ。貴様の知り合いか!はははは、これはいい。まさに罪は身に返るというものだ。この少女は、最後まで抵抗していたぞ。抵抗し、抵抗し、そして終いには堕ちていった。この年で生娘でないことには驚いたがなぁ。堕ちてからは欲望に染まるのは早かったぞぉ!ははっはははははははは!」
男は狂ったようにまくしたてる。
「口を開くなぁあああああああ!」
口汚く少女を侮辱する男の言葉に、アインは初めて人に向けて殺意を持った。
「ここで、貴様とやりあうつもりはない。すでに勝敗は見えているのだよ。無謀にも追うというなら挑んでくるがよい!」
そういった男の手には隠者の鈴が握られていた。
「待て!」
アインの言葉を無視して、男は魔術具を発動した。
その巨大な姿が光の小さなブロックに包まれ、虚空へと消えていく。
「逃げるなぁああああ!ジルを、ジルをかえせぇえええええええ!」
少年の叫びはむなしく、こだました。




