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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
三章 神祇創生

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儀式

部屋の中は薄暗く、どれだけの広さがあるかも分からない。

微かな明かりを頼りに周りを見ると、人々が重なり蠢いている。

先に入った者は、もどかし気に衣服を脱ぎ始め、近くにいた者が脱いだ服を持ち去る。

ほとんどの者が裸体を晒す中、カーラは呆然と立ちすくんでいた。

(なんだ。。。これは)


近くに寄ってくる信者を躱しながら、カーラは精神の宝珠を取り出し気配を消す魔法を使った。


路傍の石(アンインタレスト)


姿は見えても気配がなく注目を引かなくなる。

信者はカーラに関心をなくし、他の場所へと歩いて行った。


「ふぅ」

落ち着いて観察を始めるカーラ。


周りにはお互いに肌を合わせる男女があふれている。

女一人に数人の男が群がる者たち。

男も女も構わず行為に浸る者。

数人を同時に相手にする者。

まだ子供に見える年の少年少女もいる。


そこにいる者の表情は、一様に快楽に溺れて正気を失っていた。


一緒に入ってきた男女はすでに狂乱の最中だ。

目をそらすカーラの耳に男の声が響く。


中央の壇上に男がいる。

「よくぞ参った、新たな供物となる者たちよ。今宵は零落の花姫《フローラ・デプロラタ 》もおいでだ。存分に楽しむがよい」


男の言葉は信者に届いているのか、周りは己の快楽に夢中で何の反応も示さない。

ただ、その行為はより激しいものになっていった。


男がその手に持つグラスに入った琥珀色の液体に信者が群がる。

グラスを受け取った信者が、それを口にするとさらなる欲望に目を光らせる。

男であれ女であれ、その液体を一口飲んだものはより強い快楽を求め始めた。

ふたたび男の元に戻ったグラスは、なぜかその量を減らさずにその手にあった。


狂宴の中、一人だけ理性を保つカーラは自分の方がおかしいのではと錯覚してくる。


そしてその時が来る。


きゃぁあああああ!


誰かの叫び声が聞こえた。

声の方を見るとそこには巨大なムカデのような魔物がいた。

よく見ると、頭部が人間だ。

信者が人とムカデの形を合わせたような姿へと変わっていた。

ムカデ男が信者を咀嚼している。


混成人間(アマルガム)


(こんな方法で人を化け物へと変えていったのか!)

カーラは人としての一線を越えた行為に怒りが沸いた。


一人、また一人と異形の化け物へと変化していくものや、まるで存在が無くなるように薄まり消えていくもの。

それを見て恍惚な表情で見守るもの。

まだ理性があり、思い出したように恐怖で悲鳴を上げるもの。


快楽と羨望、絶望と恐怖が汚泥のように混ざりあう。


覚醒したばかりの混成人間(アマルガム)が、生きている信者に襲いかかる。

正気を失っているのか、はらわたを抉り出され臓物を食われながら、その信者は笑っていた。


何人かの少年少女は隅に固まって震えている。

そちらに向かおうとカーラが歩き出すと、奥の暗闇から緑色の触手が延び、彼らをからめとる。

数人の少年が悲鳴を上げることもできずに、勢いよく闇に消えていった。


「っ!」


暗闇に何かいる。


最初からあの一角だけ不気味なほど静かだった。

誰も近寄ることはなくそこだけが触れてはいけない何かがあるように。


宴が終わりに近づくにつれ、人の形をした信者がいなくなっていった。

覚醒したものや、消えていったもの。

贄となり混成人間(アマルガム)の餌食となったもの。

そして暗闇に潜むもの。


どれだけ存在を希薄にしても、カーラに注目が集まり始めた。


「こんなところにネズミが混じっていたか」

壇上の男が面白そうにカーラを見る。


「くっ」

取り押さえようとカーラの周りに混成人間(アマルガム)がわらわらと集まってくる。


カーラは宝珠を取り出し手のひらに乗せた。

地、水、火、風

基本の四精霊を宿す石が、手のひらから浮かび円を描く。

「錬成宝珠(リファイン・ジェム)!金」

4つの石が集まり新たな石へ変化する。


出来上がった黄金の宝珠を手に握りしめ力ある言葉を唱える。


「生成(クリエイト)ジュエルソード!」


宝珠の形状が変わり長剣へ変化した。

カーラは混成人間(アマルガム)を、手にした剣で薙ぎ払い壇上の男に迫った。


男の喉元に剣先を突きつけ、「お前が黒幕だな」と問う。

剣を突き付けられても恐れることなく、男が言う。

「いかにも、私がこの教団の最上位だ。それでどうする?」

「殺しはせん。貴様には聞きたいことがある。ダネフの祠を知っているな?」


カーラの言葉にむっとしたような顔になる。

「そんなものは、とっくに壊した」

男はそう言うが、カーラは嘘をつくなと剣を構えなおす。

「あの祠には何重にも魔術保護されていて、我々でも破壊はおろか傷も残せなかったんだぞ。壊すなど無理だ」

男がカーラの言葉に鼻で笑う。

「壊したのは私ではない。先生だ」


その言葉が言い終わる前に、カーラに緑色の触手が延びる。

とっさに手にした剣で斬り払う。


「ちっ」

触手を避け飛び退き、男から距離をとらざるを得なくなったカーラは舌打ちした。

男を守るように触手が壁を作り蠢く。


周りで手を出せずにいた混成人間(アマルガム)達がカーラに襲い掛かる。

「ここまでか。。。」

カーラは懐から丸薬を取り出した。

それを口にした彼女の体から炎の力が溢れてくる。


「火の聖霊よ我に力を!」


半精霊と化したカーラが周囲の敵を焼き尽くす。


それは闘技大会で見た魔薬に似た物だが効能が違っていた。

魔薬は人を無理やり精霊化するものだが、カーラの使うそれは内なる精霊に体を預けるものだ。


カーラは火の精霊と化し飛び上がった。

地下室の天井を突き破り聖堂の屋根まで炎が上がる。


「突入!」

どこかで号令が起こり、一斉に城の兵がなだれ込む。

カーラの合図を待っていたアイン達は聖堂の周囲に兵を配置していた。


何事かと驚く住人。


兵は次々と信者を拘束していく。

アイン達はカーラと合流するために城の兵と共に聖堂へ入っていった。



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