隠された扉
「この辺です」
ミリーが迷宮の入口を指さす。
カーラの痕跡を追ってたどり着いたのは地下迷宮への入り口だった。
「まさか、こんなところに潜んでいたとはな」
エラランは苦々しく吐き出す。
早速、兵を集めましょうと言うエラランを止めてカイルが言う。
「カーラの無事を確かめてからのほうがいい。それに、中には信者だけとは限らない。捕らわれた人がいるなら人質にされる可能性もある」
アインもその考えに同意して、まずは少人数で様子を見ることになった。
「アイン様はお残りください。斥候は他のものにお任せを」
エラランが引き留めるが、アインは引かなかった。
世界の危機への情報があるなら自分が行かないわけにはいかない。
エラランもその強い意志と眼差しにうなずくしかなかった。
「姫。。。」
エラランに声を掛けられ、びくっとするアイシャ。
「もう、お止めはしません。アイン様をお守り下さい」
珍しく小言を聞かずに済んで、「任せなさい」と胸を張るアイシャ。
そして、一行は地下迷宮の入り口に入っていった。
「でもさぁ。ここで潜伏できるような場所なんてあったっかねぇ?」
リタは探索時のことを思い返すが、地下都市以外に隠れられそうな場所がない。
「隠れ通路があるのかもしれないな。まだすべてを調べたわけじゃないだろ?」
カイルがその可能性を示唆した時にミリーが何かを発見した。
「これ。。。水鏡の宝珠だ」
小さな浅葱色の石が落ちていた。
ミリーがそれを見て言う。
「カーラさんの残したものだと思います。。。追憶の水鏡よ、彼のものの記憶を示せ」
ミリーの呪文により球形の魔法陣が一行を包み込む。
ダネフの祠と同じ記憶継承の魔法だ。
全員の頭の中に、カーラが見たもののイメージが映り込む。
「あれは?」
ナージャが男の持つ魔術具に目を止める。
チリーン
鈴の音が聞こえると記憶が途切れた。
「あの鈴には見覚えがある。隠者の呼び鈴。特別な入口を開く魔術具じゃ。本来は招いたものしか入れんのじゃがな。。。あった」
ナージャは目を凝らし魔力の流れを追う。
なにも無い空間を指さした。
「この辺りの空間が歪んでおる。小僧の剣でこじ開けられるじゃろ」
アインはうなずき、剣を呼び出す。
「剣よ、在れ」
そして、俺に「白さん、お願い」と頼む。
俺は剣に乗り移り、坊主の言葉を待つ。
「王命、隠されし扉を開け!」
「了承。暴き出せ、裁定者の黄金律」
剣が輝きだし、少年が剣を振ると空間が切り裂かれる。
切り裂かれた空間の先に扉が現れた。
アインが扉を開くと周囲の景色が変わる。
そこは、アイン達が発見した地下都市に見紛うばかりの街が佇んでいた。
あたりに人はおらず、警戒されている様子がない。
それよりも人の気配がない。
すぐに、見つからないように近くの家の様子をうかがう。
誰もいないことに違和感を感じつつ、空き家に入る。
「罠ってことはないよな」
カイルが周囲を警戒する。
「あの鈴が無ければ入ってくることは出来んからな。侵入されるとは思っておらんのじゃろ。ミリーや、カーラ殿の反応はあるか?」
ナージャが先ほどから宝珠を握りこみ集中している弟子に聞く。
「。。。はい、あの一番高い建物の方向に反応があります」
ミリーが先のとがった屋根を持つ鐘楼の方角を指す。
「なら、手分けして情報を集めながら向かうか。ばあさんは俺と、リタとミリー、アインはアイシャ嬢ちゃんと向かってくれ」
カイルがメンバーを振り分ける。
全員がうなずき、行動を開始した。
。。。
アイシャと二人になったアインは少し緊張していた。
出会った頃から、彼女の直情的な性格に苦手意識があり、何を言われるかとびくびくしている。
そんな少年の様子を見て、はぁとため息をつくアイシャ。
「別に何も言わないわよ。これでも、あんたのこと認めてるんだから。。。」
出会ったばかりのころ、王候補として対抗心が強く、意識的に強く当たった。
その時の印象は大人の言うことをきくだけの、良い子にしか見えずイライラしたのを覚えている。
それが、仲間を信頼して託すことだと知ったのは、いくつかの冒険を一緒に過ごしてからだ。
王様に彼が決まった時も納得してしまった。
私は大人たちに反発するだけで、彼らと共に支えあってゆく気持ちがなかった。
諦めて城を去ろうとした。でも彼は引き留めてくれた。
その時、あたしも仲間になれるかもしれないと、そう思った。
それから数年、彼だけを見てきた気がする。
アイシャは思い出して、頬を赤く染める。
(だめだ、こんなのあたしのキャラじゃない)
気を取り直して、アイシャは先に進む。
少年に顔を見られないように。。。
「さあ、あたしについてきなさい!」
「おい、待っててばぁ」
相変わらず身勝手だなぁ、と勘違いして少年は少女の後を足早についていった。




