書き換えられた記憶
ザァーザザー。。。ザー
目の前にダネフの幻影が居る。
だが、最初の祠の時とは様子が違い、ノイズが混じり姿が安定しない。
ダネフ自身はそれに気付く様子はなく普通に語り掛けてくる。
「よく来た、。。王の系。。連なるものとその仲間達」
「魔術師ダネ。。と申す」
「そちらの御仁は当。。剣の主ですかな?」
所々ノイズで聞き取れないが、幻影は最初の祠と全く同じ反応で言葉を返した。
そして、解除魔術の継承が始まった。
やはり、魔術師以外の者にはただの光の明滅にしか感じない。
「。。。!これは。。。」
ナージャが慌てる。
「お師匠様、最初の魔術式と合いません。これは別の魔法でしょうか?」
ミリーもその異常さに気付く。
魔術式の構造はパズルのピースのようなもので、形が合わなければパズルが完成しないように魔術も発動しない。
今ナージャたちが見ている術式は、どれも最初のものに組み込めない、出鱈目なもののように見えた。
「。。。暗号圧縮されとる。フン、師匠を舐めおって」
ナージャが鼻を鳴らし、解析を始めた。
「ミリーもよく見ておくんじゃ。高度な魔術を秘匿するための技術だが、その解法にこそ魔術師の技量が問われる。良い機会じゃ」
ナージャが解析術式を展開する。
周りに数個の魔法陣が現れ、それぞれが暗号圧縮された魔術式を解析する。
次々に光が集まり、一つの術式が完成する。
「ふーむ。どうやら、解除魔術を上書きして他の魔術に書き換えているようじゃな」
ナージャは完成した魔術式を見てそう判断した。
「途中まで解除術式と同じですね。バイパスして、そこから別の何かに変化させているようですが。。。」
ミリーが真剣に術式を追い、内容を読み取る。
「これも未完成のままじゃな」
「これって、アインのおかあさんがしたんですか? 信じられない。。。」
ミリーがこう言うのも無理はない。
かつての天才の遺した記憶を書き換え、さらに解除術式を別の目的のために上書きするなど、こんなことのできる魔術師がいたとは。
「わざわざ、記憶を書き換えてまでワシらに伝えようとしたんじゃ。考えがあっての事じゃろう。。。のうダネフや、以前訪れた魔術師の記憶は残っておるかの?」
ダネフの幻影はうなずき、全員にイメージを見せる。
若い女の魔術師と男が映っている。
女の方はアリーシャだが、男の方は見たことが無い。
父のダンではなく、もっと若い少年と言っていい歳に見える。
「誰だろう?」
アインは記憶を辿るが見覚えが無い。
もし、この場に教団関係者が居れば、その面影に思い当たっただろう。
それは、教主と呼ばれていた男の少年時代の姿だった。
。。。
暗い部屋に、教主と呼ばれる男がいる。
いつものローブを脱ぎ、一糸まとわぬ姿で女性の像にしなだれかかっていた。
「先生。あなたの願いは僕が必ず成し遂げて見せます。だから、見ていてくださいね。。。先生。。。はぁ、はぁ」
男は欲望のままに、女性の像を舐り快楽をむさぼる。
男の体液で汚れたその像の面影は、どこかアリーシャに似ていた。




