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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
三章 神祇創生

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淑女のたしなみ

アイン達は数日の間、城に逗留することになった。

すぐにでも出発したいという少年を、エラランが引き止めた。

「場所はハッキリしているのですから、城でお待ちください。調査隊の報告を待ってからでもよろしいでしょう」


冒険者として過ごした日々が長く、城での生活が窮屈に感じる。

そう思って、中庭の噴水近くのベンチに座ろうとすると、同じように憂鬱そうな顔で座っているミリーを見つけた。


「はぁ。。。」

「ミリー姉ぇも?」

白いドレスに身を包み、黒髪をアップした17歳の少女は大人の女性のような艶やかさを纏い、普段とは違った雰囲気で少年をドキッとさせた。


「うん、ここだとメイド長が、『城には城にふさわしい御召し物がございます』って言ってすぐ着替えさせたがるんだもん」

素材が良いせいか、着せ替え人形のように着替えさせられることの多いミリーは辟易としている。


美しく成長した少女に、少年は年上の女性に対する憧れに近い、むずむずした感情を抱くようになっていた。


「やっぱりいつもの服のほうが落ち着くなぁ」

足を投げ出して伸びをする少女に、いつもの義姉の姿を見てくすくす笑う。


「なぁに?」

ミリーが笑うアインを見て、すねたように問い質す。

「ミリー姉ぇは変わらないね」

義姉の伸びやかな性格を好ましく思う。


「アインだって、旅してる時の方がらしいわよ」

そう言って二人で笑い合う。


その姿を、遠くから赤いドレスを着た少女が眺めていた。


。。。


城にいる間は人の目がある所以外では、厳しくマナーの指導が入った。

冒険者にとっては魔物と戦うよりも、こちらの方が難題だ。

ナージャ以外は公の席での作法などに接する機会などなく、皆苦戦していた。


「はぁ、情けないのお。魔術以外も教えておくんじゃったわい」

4人全員が情けない顔で老婆を見る。


「大体、冒険者がこんな作法覚えて何になるって言うんだよ」

カイルが相当飽き飽きしてきたのかナージャに不平を漏らす。


「何を言っとる。冒険者もランクが上がれば公の席での会合も多くなるぞ。わしの知ってる上位ランカーは皆最低限のマナーくらいは熟(こな)してたもんじゃ」

老婆の言葉にぐうの音も出ず引き下がる。

それに比べ、アイシャの作法は完璧だった。


所作の一つ一つが見られることを意識しており、指先一つ動かすにも優雅さが溢れている。


ちらっ


アイシャがミリーを見つめ、食事に奮闘する様を、いたずらが成功して勝ち誇った子供のような目で見る。


「?」


ミリーは、それに気付いて不思議に思うが、アイシャはすぐに視線をそらしてしまう。


それからというものの、ミリーが作法に失敗する所に、何故かアイシャが現れては完璧な振る舞いを披露していった。


ミリーが大浴場でポツンとお湯に浸かっている。

少女は顔の半分までお湯の中に入って、落ち込んでいた。


(あの子と比べて、私ったらどうしてガサツなのかしら。。。年上なのに情けない。。。)

積み重ねた年月を魔術の修行と冒険に捧げてきた身だ。その日々が劣っていることにはならないだろう。しかし、女性としての矜持(プライド)がへし折られるのは耐えがたかった。


「ねぇ。ご一緒してもいいかしら」

声をかけられた。


びくっと反射的に振り返ると、そこに金髪の少女が居た。


「あ、あの、えーと。どうぞ。私はもう出ますから」

ミリーはどぎまぎして浴室を出ようとする。


「あなたと話がしたかったの。。。ダメ?」

アイシャが小さい声で語りかける。


「え?」

いつもの尊大な雰囲気とは違い、何かを聞きたそうに、もじもじした姿は年相応の少女に見えた。


「。。。」

静々と湯船に入るアイシャを見て、ミリーもゆっくり浸かり直す姿勢を取る。


「。。。」

「。。。」

しばらくの間、お湯の心地よさに身を任せ無言で過ごす二人。


「。。。あなた、アインとはずっと一緒なのよね。。。」

「え?ええ。小さい時からね」

アイシャが聞きたいことってアインの事?

「仲いいわよね。。。あなたたち」

「?」

それは、ずっと一緒なのだから当然だ。

仲たがいしていたらパーティなど組むことは出来ない。


「その。。。ミリー、さんはアインのことどう思ってるの。。。」

「?。。。どうって?」

普段の物言いがハッキリしているだけに、アイシャの聞きたいことが分からない。


「その。。。すす、す、好き合ってるというか。こ、こ、恋人のようにとか」

「へ?」

ミリーは、思いもよらない質問に間抜けな声を出した。


アイシャの方を見ると、顔を真っ赤にして下を向いている。

(あ、そういうことか)

やっとわかったという顔をしてミリーが答える。

「アインと私はそういうのじゃないわよ。姉弟(きょうだい)というか、ほっとけない感じ」

「そうなの?でも、彼一番心を許してる様に見えた」

無邪気に笑い合う二人を見て、胸の奥がチクッとした。

それが何なのか知るには、アイシャは幼かった。


「家族だからね」

ミリーは一緒に過ごした時間と関係をそう言い表した。


「家族かぁ。。。いいなぁ」

アイシャが寂しそうにつぶやく。


そうか、この子は孤児だったころからずっと一人だったんだ。

城の大人たちは、王候補としてしか見てなかったのだろう。

「アイシャちゃん。。。あなたも一緒だよ」


「え?」

「みんなで世界を救う仲間で、家族なんだから」

ミリーはそう言った。


「っ!」

金髪の少女は黒髪の少女を見つめ、その瞳から大粒の涙を流した。

「うん、うれしい」

アイシャが素直な言葉を口にする。そして、すっきりしたような顔で浴場を去っていった。


「そっかぁ、あの子。アインの事を。。。」

姉として弟の相手にふさわしいかと考えるが、止めた。

なる様にしかならないよねと、放り出したい気分だった。

それと同時に、弟としてしか見えていなかった少年のことを思い出す。


トゥクン


「あれ?」

なにか胸のつかえを感じたような。

少女は湯船に浸かりながら、頭に?マークをいくつも浮かべていた。



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