追記:重なる影
新王の誕生と、祝福の黄金樹が現れたその日。
新たな王としてのセレモニーが終わり、俺はやっと剣から解放された。
「ぷーぷぷぷ。何その恰好」
アイシャが俺を見て盛大に笑い出した。
他の者には見えていないが、いつもの姿が保てないほど消耗しているのが分かる。
「あんた、子供の描いた落書きみたいになってるわよ」
少女が指を差して笑う。
「え、そうなの?」
見ることは出来ないアインが心配そうに聞く。
(ああ、黄金律の力を行使すると、こうなるみたいだ。前の時はそこまでじゃなかったんだがなぁ。それでも存在が薄くなるって言うか、力が吸い取られる感じはしたんだ)
今回は、その効果範囲が大規模だったせいもあって、姿の維持に影響が出たのだろう。
それにしても、落書きって。。。
鏡で見れないために想像することしか出来ない事がもどかしい。
まあ、このクソガキにしか見えないんだが。
「なっさけないわねぇ。これがあの剣の中身なんて知られたら恥じよ恥」
言いたい放題言われて、おもしろくない。
王の言葉を思い出す。あのおっさんは転生者二人で使うものって言ってたな。これがその訳か。。。二人分の魂じゃないと負担が大きいんだ。
これじゃあ、王命を聞き入れるのは1日に一度くらいだな。
しかも、その後は坊主の支援が出来なくなる。
使いどころを間違えると、酷い目に合いそうだ。
魔眼の事も合せて、この剣を使いこなすことも今後の課題となった。
。。。
新王の誕生を祝う宴は夜も続いていた。
自室として割り当てられた客室のバルコニーから、宴の灯を眺めるカイルが居た。
盃を片手に物思いにふけるような横顔に、男性を感じてドキリとする。
「何見てるの?」
リタは今感じた印象をごまかすように明るく声をかける。
普段の冒険者の恰好ではない正装のせいか、何故か緊張して言葉を待つ。
「ああ、俺たちこんな所まで来たんだなって思ってな」
思えば村を飛び出して何年も経っている。
初めは村に訪れた冒険者に憧れて、考え無しでここまでやってきた。
冒険者は決してきらびやかな職業でなく、初めの頃は何でもやった。
その中には、騙されて悪党の使いのようなこともあった。
やっと冒険者らしい依頼が熟せるようになると、あこがれは消えて日々の生活を支える事でいっぱいだった。
あの頃、そんな生活に嫌気がさし、ナージャの護衛を最後に村に帰るつもりだった。
そして出会った。
真っすぐな目をして、自分の運命に立ち向かう金髪の少年に。
初めは最後の人助けと思っていたが、この子が辿る道の先を見たくなった。
その選択が、今ここに自分たちを置いている。
「あいつと会って、あいつと居る事で、俺たちは一端の冒険者じゃ経験出来ないようなことをしてきた」
「うん」
リタがそっと寄り添う。
「俺はあいつと居ることで、昔憧れた冒険者に近付けてるって、そう感じるんだ」
目を輝かせて語るカイルを見て、リタは自分の気持ちに気付いた。
ああ、あたしはこんな目をしたこの人を放っておけなかったんだ。
そして、真っ直ぐなこの目が好きだったんだって。
「ねえ、カイル」
袖を引いて振り向かせるリタ。
「ん?」
振りむくとリタの顔が近づき、そっと口づけをする。
それと同時に花火が上がり、二人の影が重なる。
「っ。。。リタ」
「あたしは、いつまでも一緒だよ」
初めて見るその表情に相棒としてではない感情が沸き起こる。
再び花火が打ちあがり、その夜、二人の影は何時までも重なり合っていた。
。。。
朝になって、ミリーが戻ってこないリタを心配して、方々に聞いて回ったが、大人たちはにやにやした表情で応えるのみだったと、朝食の席で不平を漏らした。
カイルとリタが居心地悪く下を向いていたのは言うまでもない。




