追記:梟の憂鬱
「おい!、そっちいったぞ!」
「了解、毒の芳香」
サーニャの毒により、群がる小さな虫型の魔物:迷路蟲がぼとぼとと落ちる。
この虫は迷宮の暗闇に潜み、闇を深く見せ方向感覚を狂わせる。
迷宮探索者にとって厄介な魔物だ。
「しかし、俺たちは奴らの監視をするはずなのに、何で掃除屋みたいなことしてるんだ?」
ザジが、不平を漏らす。
「見失ってしまったからな。こちらから探索魔法を使うわけにもいかない以上手探りで探すしかないだろ」
ジンライがまあまあとザジを宥める。
「まあ、他にやることも無いし、なっ!と」
ザジが話しながら、陰から現れた魔物を始末する。
「それにしても、この迷宮、魔物が多くない?」
どこから、入り込んだか分からないが、角を曲がる度に遭遇する魔物に辟易する。
「あぁー、なんか、すまん」
なぜか、ジンライがすまなそうな顔で謝る。
「なんで、班長が謝るのさ」
サーニャがきょとんとする。
「いや、昔から迷宮とは相性が悪くてな。俺が入ると、魔物は寄ってくるはトラップには引っかかるわで、一緒にいる奴に迷惑かけてたもんでな」
「まさかぁ。たまたまでしょ」
サーニャは、はははと受け流す。
この時、冗談かと思って軽く流していたが、後で事実だと知ることになる。
数刻後
「。。。なんで、階層主にこう何度も遭遇するんだ?」
「愚痴ってないで、手を動かして!」
「。。。」
巨大な鬼を前に、4人の戦闘技術が発揮される。
「金剛鱗粉」
サーニャの技は狭い空間での戦闘に向かないため、補佐に徹している。
この粉は鉄鋼虫という魔物の繭を粉状にしたもので、散布すると体の周囲に漂い、一時的に物理強度を上げる。
散開し、ザジが糸を使い鬼を拘束する。
「っし!」
地を這うように、両腕から糸が水流のように迫り鬼の体に巻き付く。
「がぁ!」
鬼は、それを、一瞬の気合で引きちぎる。
「。。。」
一瞬の隙を突き、アルフレッドの魔法剣が鬼の腕を一閃する。
ロングソードで断つには太すぎる腕を、重さを付与した重撃により両断した。
「ぐがぁああああ!」
腕を落された鬼は、その男が接近したことに気づき、残った左腕を振るう。
鬼の近くまで接近したジンライは、迫る巨大な腕を避けようともせずに、掌を腹部に当てた。
ヴゥン
鬼の一撃に周囲に漂った粉が衝撃を吸収する。
それと同時にジンライの技が完成する。
「火水爆掌」
ドバァン!。。。
鈍い音が余韻を残し、水蒸気が立ち込め視界が曇る。
その後に残ったものは、腹部が吹き飛ばされた鬼の死骸だった。
炎と水の相反する魔力を混合し、相殺せずに掌で水蒸気爆発させた。
この技は、繊細な魔力操作と体術の両方が使いこなせなければ発動しない。
この大男が、見た目の豪胆さからは想像つかないほど、魔術の扱いに長けている事が分かる。
「ふぅ」
「なあ、これで何層目だ?」
「今日だけで三層だな」
「。。。」
迷宮の主なトラップは粗方引っかかり、無効化された。
階層主も、これで3匹討伐している。
しかし、例の一行は見つかっていない。
「どう考えても、俺たちが先行してないか?!」
ザジはここまでの不満をぶちまけた。
「それなら、また戻るとするか」
皆がため息をつく。
アイン達一行は、疾爪が通った道を運よく通り、魔物の遭遇は最小限に済んでいた。
彼らがアインを探しに戻った後に、入れ替わりでアイン一行がボス部屋に入る。
「あれ?また先に進める」
「俺たちの前に通ったパーティがいるみたいだな」
カイルの見立ては正しい。
階層主との戦闘を回避できて、こちらとしてはありがたい限りだ。
「先に通った奴らに感謝して通らせてもらおうか」
「助かるねぇ」
そうして、奇しくも黒梟との共同作業で迷宮は攻略されるのだった。




