少年王の旅立ち
第二章 魔族領編の最終回です。
少年王となったアインが旅立ちを決意し、世界を救う冒険へと出発します。
「よし」
旅の準備を終えてアインが気合を入れる。
(。。。それにしても)
「え?なに白さん」
(いやな、最初のころに比べたら立派になったなぁと思ってな)
「ふふっ、そうだね」
冒険を始めた時は革袋を加工した皮鎧とも言えない貫頭衣と、獣の毛皮を加工しただけのフードをつけた見すぼらしい姿だった。
今、鏡の前にいるのは、精霊の宿った木の繊維を細かく織り込んで編み上げた布にミスリル製のプレートを急所に配置したブリガンダイン風の上着に、ウールチュニックと丈夫な革製のミディアムブーツに、ぴったりとしたズボン(ホーズ) を履いている。
そこに、有翼族の簿羽が織り込まれたフード付きのマント(ケープ) を重ね着したその姿は小さくとも一人前の冒険者だ。
小さいながら動きやすく加工されたその服は、幼い少年の体力を奪わず防御力も高い。
肩にかけるポーチを首から掛け、背嚢を背負い仲間たちの元へ歩く。
部屋の外に、アイシャがいた。
「行くのね」
「うん、後はよろしくね」
「安心しなさい。あたしが居ればこの城は大丈夫よ。それより、無事に帰ってきなさいよね」
「?。。。心配してくれるの?」
意外な言葉を聞いて少年が聞き返す。
「しししし、し、心配なんかじゃないわよ!王様がいなくなったら。代行のあたしが困るってだけよ!」
顔を真っ赤にして言い訳する少女に、ニカァっとした笑顔を返すアイン。
。。。
仲間たちの待つ城門前には、執政官やカーラの姿があった。
「どうしても、行かれるんですな」
最後まで出発に反対していたエラランが名残惜しそうに口を開く。
「うん、僕がどこまでやれるか分からないけど、じっとしていられないんだ」
少年の決意は固い。
カーラの報告にあった教団の話を聞いては、放ってはおけない。
大崩壊を早めるために、村人を攫い、攫われた村人は二度と戻っては来ない。
そんな暴挙を許すことは出来ないと、教団を止める旅に出る事を決意した。
そして、その旅の途中で、大崩壊を防ぐ手掛かりが見つかるかもしれない。
細い糸にぶら下がる程の小さな希望だが、少年は歩き出すことを選んだ。
「もう、お止めはしません。ですが、無理をしませんように」
「そうだよ、王様。あたしが時々様子見てるからね。無理なんかしたらすぐわかるんだから」
ファラが会話に割り込む。
「うん、分かったよファラ。魔眼の使い方を教えてくれてありがとう」
「いいって、いいって」
手をひらひらさせて立ち去るファラを見て、頭を抱えるエララン。
「申し訳ありません、アイン様。次にお会いするまでに、話し方を直しておきますので」
気にしないでと、少年は、はははと笑う。
カイルがゴージに挨拶をしている。
「若いの、アイン様を頼むぞ」
「ああ、任せてくれ。あんたにも世話になったな。もう少し腕を上げてから再挑戦するよ」
ゴージは、がはは、と豪快に笑い待ってるぞという。
先程から、ミリーの落ち着きがない。
「どうしたの?」
リタが気にして聞く。
「お師匠様が見当たらないんです」
。。。
エラランは門の陰に隠れるように居るナージャに声をかける。
「行かれますか」
「ああ、あの子たちだけでは心配じゃからな。これがわしの最期の旅になろうて」
「また、お会いできますよ」
「そうじゃな、その頃にはきっと。。。」
エラランは老婆が言おうとした言葉を聞く事無く、歩き出すナージャを見送った。
「あ」
ミリーが歩いて来る師匠に気付く。
「なんじゃ、わしを置いていくつもりか? 近頃の若者は老人に対するいたわりが足りんのぉ」
軽口をたたく老婆を、ミリーがほっとしたような顔で出迎える。
旅の仲間が揃い、新たな旅に出る。
アインは皆の顔を見て、みんなが居る事に安心した。
門が開く。
城門の前には、城下町の人たちが列を成して少年王の見送りに集まっていた。
歓声が上がり、人々が口々に少年王を称える。
集まった一人一人の顔を見て、少年は改めて心に誓う。
人々が作る道は希望への願い。
そこを通り未来を創るために少年は歩みだす。
「ねえ、白さん」
(ん?)
アインは、いつかどこかで聞いた言葉を思い出して声に出す。
「行こう。僕らの新たな冒険へ!」
(ああ!)
少年王は次の冒険へ、その一歩を踏み出した。
いつも読んでくれてありがとうございます。
今回で二章が完了となります。
次回から、本編に載せられなかったエピソードを、何本か出したいと思いますのでお楽しみを。




