闇は深く
お披露目も済んで、やっとこれから魔術師評議会と接触出来ると思っていたアインは、状況が全く進んでいないことに怒っていた。
「連絡が取れていないってどういうことですか?」
エラランは汗を拭きながら弁解した。
「連絡が取れていないのではなく、向こうから返事が来ないのです。我々としても手の打ちようが無く。。。」
世界の危機に対して動こうとしない評議会の考えを理解できず、少年は評議会に対して怒りを露わにした。
「いったい、何がしたいんだ?!僕の村を滅ぼしただけじゃ足りないって言うのか?この世界に関わることなのに。。。」
後の方は哀しみに声が震えていた。
その場にいたミリーは、自分を責められているような顔で「ごめんなさい」と言う。
それを聞いて、ハッとして少女から顔をそむけるアイン。
「ミリー姉ぇを責めてるわけじゃないんだ。気を悪くしたならごめん」
アインはミリーに配慮が足りなかったことを謝罪する。
「ううん。私が学舎の場所を知っていたらよかったんだけど。。。」
ミリーはアイン達と行動をすることによって、事実上、魔術師評議会からは抜けたことになり、学舎へは一度も行ったことが無い。
「婆さんが、教えてくれりゃー早いんだけどな」
カイルがフォローする。
この件でナージャは協力に消極的だった。
なぜか、学舎へ行くことを躊躇うナージャに食い下がるも、
「評議会は何らかの考えの元で動いている。それが分からん内はまかりならん」
と一歩も引かない。
それに、評議会の戦闘力を過小評価してはならないと。
今まで接触してきた疾爪のメンバー以上の強敵がごろごろいると。
少年は、それでも、何かやれないことが無いか。
焦燥感だけが膨らんでいった。
「それと、例の教団が動きを強めているようです」
カーラが報告する。
「教団ですか?」
初めて聞くその言葉の意味を聞くアイン。
「ええ、『竜濟教会』という終末思想を持った連中です。四大聖竜がもたらす滅びを受け入れることが救いだと標榜する団体の名です」
。。。
どことも分からない場所で、大勢の男女の荒い息遣いが重なる。
悲鳴にも嬌声にも聞こえる、その声の数は数人程度ではない。
ほの暗いその部屋には、かろうじて顔が判別できる程度の魔法の灯が焚かれ、裸の男女の影が重なり蠢いている。
中央には四大聖竜を象った彫像があり、その前に数人のローブに顔を隠した男女が祈りを捧げて居た。
その男女もローブの下には何もつけておらず、行為の跡が生々しく残る。
「教主様。王が現れました。いかがいたしましょう」
一人の女が、中央に座して祈りをささげる男に報告する。
祈りを捧げていた人々がどよめく。
「我らを裏切り姿を消したあの男に連なるものが、再び現れたというのか。。。」
「なんと、愚かな。王国の連中は再びあの惨劇を繰り返そうというのか」
口々に、王をなじる声が上がる。
「静まれ」
老齢かと思われた教主から、意外にも若い声が出た。
「王が降臨したとしても、我らの教義には関わりなき事よ。すべては四大聖竜の浄化の日に報われる。それを邪魔しようとするなら、たとえ王であろうと我らの敵よ」
琥珀色の瓶を掲げ、それを一口すする。その場にいる者全員に瓶がまわされる。
「さあ、より、まぐわい姦淫に溺れ堕落するのだ。背徳と退廃こそ我らが救い。その先にこそ、真の清浄なる世界へと導かれるであろう。竜の審判を受け入れぬ愚か者には、いずれ鉄槌が下るだろう」
その液体を口にした者は、正気を失ったように快楽に溺れ、その場は異常な光景となる。
しばらくすると、変化が現れた。
魔族特有の体の変化が進み、人の形状を保てなくなるものが出た。
ある者は存在が薄まり姿を失う。
またある者は、精霊化が進み人ではない何者かへ形を変える。
元の姿のまま、その場に残ったのは半数程度で、残りは人の姿をしていなかった。
「今回、祝福を受けて召された者、御使い となった者は23か。四大聖竜様にその身を捧げ、聖者となった者を讃えよ」
教主がそう言うと生き残った信者が口々に讃え始める。
「嗚呼、うらやましい。何時かは私も召されたいわ」
「早く、あなたのように、たくましく生まれ変わった姿になりたい。王国の民に救いを与えたいものだ」
消えずに、そこに残った者たちは意識があるのだろうか。
この場に普通人がいたとしたら、きっとその者をこう呼ぶだろう。
。。。化け物。。。と。。。




