魔眼
エラランが魔術師評議会と連絡を取ろうと四苦八苦している中、アインは魔眼の使い方を有翼族のファラに教わっていた。
「簡単に言うと、魔眼っていうのは、精霊を宿した眼のことを言うんですよぉ」
ファラが軽い口調で解説する。
「あたしたち有翼族には、まれにその眼を持って生まれてくる子がいます。あたしの右目にも風の精霊が宿っていて、特別な能力を持ってます」
ファラの魔眼は『天眼』と言って、どんなに距離があろうと、対象を見ることが出来る千里眼の能力があるという。
「精霊の力を制御すると言う点で、使役人形の扱いと似てるんです。アイン様の灼煌眼は、間違いなく火の精霊が宿ってるので、私とは相性が悪いんです」
風と火の精霊は逆相のためそれは理解できる。
「それで、代わりと言っちゃあなんですが、姫さんのドールに手伝ってもらいます」
ヴァルカが説明を聞き尋ねる。
「それで、あたしは何をすればいいのさ?」
「最初はアイン様の左目の精霊と話して、力の解放を止めてもらいたいのよね。姫さんもいい?」
「手伝うって言っちゃったからね。好きにして」
アイシャも一応協力的だ。
今のアインは有翼族から借りた特別な眼帯をしていた。
魔眼の力を抑えるそれを身につけておけば、日常生活は問題なく過ごせる。
「じゃあアイン様、眼帯を取ってください」
「う、うん」
不安な顔で眼帯に手をかける。
目の前にはイグナ・ヴァルカがいる。
眼の覆いを取ると久しぶりに顔全体で風を感じることができた。
閉じた目をゆっくり開ける。
視界がぶれる。
バァァァアアアアアア!
火線がヴァルカに迫る。
その炎を難なく片手で受け止めてヴァルカが口を開く。
「ああ、確かにこりゃあ、火の上位精霊だね。ちょっと待ってな」
ヴァルカの瞳が赤く輝く。
徐々に火線の勢いがなくなり、絞られるように細くなり、そして消えた。
「あ、出なくなった」
「話はついたよ」
ヴァルカが言った。
アインの左目に宿った精霊は、獄炎竜と少年との違いが分からずに力を放出し続けていた。
獄炎竜の無限ともいえる火の精霊力があれば問題はないが、人間ではいずれ底をついてしまう。
うまく調整するためには、魔力の調整弁をより繊細に制御する必要がある。
ヴァルカの説明を受けて、修行の方向性が決まった。
「まずは、最小限の力で魔眼の力を引き出せるようにしましょう。そこから、徐々に出力を上げていくやり方で進めます。基本的な能力を安定して使えるようにすること。普段から暴走しないように注意する事。この2つを重点的にやっていきましょう」
ファラは今後の修行についてまとめた。
灼煌眼は伝説に謳われる竜が持っていただけあり、その能力についてはどの記録にも無い。
どのような能力が秘められているか、それは、アイン自身が見つけるしかなかった。
こうして、ファラ、アイシャ、ヴァルカとの魔眼の制御を目的とした修行が始まった。
。。。
キン ガン どっしゃあ
剣戟の音が、訓練場に鳴り響く。
「どうした若いの、もうへばったか?」
ゴージが大きな斧を軽々と抱えて声をかける。
「まだ、まだぁ!」
地面から立ち上がり、カイルが斬りかかる。
カイルも若くして相当の修羅場をくぐってきており、達人と呼ばれる領域に手が届く技量を持つ。
しかし、この土穴族の戦士は子供を相手にするかのようにあしらう。
それなりに、自信を持っていたカイルのプライドは音もなく崩れていた。
ギン! ガシャン
数合の後、剣を弾き飛ばされると「参った」とカイルが手を挙げた。
「ふむ、若いが筋はいい。お前さん、ゴンザとも知り合いなんだってな?」
「ああ、知ってるのか?」
「あれは、わしの弟子じゃ」
「そうなのか?!」
通りで強いはずだ。
ゴンザはすでにマスタークラスのモンクだった。
このドワーフはそれ以上ということだ。
もしかすると、英傑の域に入っているのかもしれない。
時間つぶしに手合わせを願ったが、カイルが敵う相手ではなかった。
自らの慢心に恥じ入るカイルに、ゴージは言った。
「お前さんが良ければ、このまま修行をつけてやってもいいぞ。体力が残っていればじゃが」
肩で息をしていたカイルが気合を入れ直した。
「ありがてぇ。望むところだ」
再び、実践さながらの訓練が再開された。
。。。
城の一室を借りてミリーとリタが意見をぶつけている。
「このパターンだと、詠唱が間に合わないと思うんですよね」
「うーん、じゃあタイミングを測るために、いくつか合図を決めておこうか」
獄炎竜との戦いの際に、咄嗟に思いついた螺旋の針と魔術の合わせ技が、思っていた以上に強力だったため、研究しようということになった。
いくつかの魔法を試したところ、汎用性が高く応用によって様々な場面に使える事が分かった。
同系統の魔法であれば元の魔法に加えて効果は最大で4倍になる。
また、別系統との魔法の組み合わせでは、相殺されるものは別として魔法の威力を増幅させることができる。
工夫次第で、魔術師単体で発動するよりも様々な効果が得られる事が分かり、二人は夢中になって新しい戦法を編み出していった。
これにより、大魔術師でしか発現することが出来なかった魔法が使えるようになった。
この後、全系統の魔法同時使用という離れ業により、新たな魔術の構築まで可能になる。
。。。
各自着々と準備が進み、そして、王としてのお披露目の日を迎えた。




