世界の滅び
『。。。というわけだ』
「。。。」
王に事情を聞かせられた俺は、半分も理解できなかった。
「えぇと、要するに”えんとろぴー”?ってのがめちゃくちゃ増えて、世界が何も動かなくなるってことだよな。で、その原因になってるのが魔法だと。ここまで合ってるか?」
『あぁ、それで正しいぞ』
「その、エントロピーの元凶になっているのが、魔法の力を振るった後の残りかすになった精霊だと」
『そうそう』
本来なら精霊が現象を起こした後は元の世界。。。精霊界としておくが。。。に勝手に戻っていくが、それが帰らずにこの世界に残ったままになってるということらしい。
「なあ、何でそいつらは、帰らないんだ?」
『それがな、帰るにはそれなりの待機時間が必要らしくて、すぐに帰れるもんでもないんだと』
観光客?。。。物見遊山でもしてるんか。
『なので、時間がたてばそいつらは戻ってたんだが、こっちの人間が頻繁に呼ぶもんだから、渋滞して帰れないのが出てきたんだ』
帰省ラッシュかよ。。。
『それが千年前の状況で、帰れなくなった精霊が仮の宿として普通の人に入り込んだのが、精霊化だ』
仮設住宅ってわけか。。。
「じゃあ、今もそれが続いているのか。ここの人たちは。。。」
『そうだ、精霊との交信力の高い人間が、ここに集まっているが、すべての普通人がこうなるのは時間の問題なんだ』
「もし、そうなったとしたら?」
『限界が近いってことになるんだろうな』
「。。。」
人間同士で争ってる場合じゃないってことか。
「もし、そうなら何で戦争なんか起こしたんだ?」
『。。。必要だったからだ』
あの時、魔術師ダネフはこう言った。
今、決断しなければ、魔物化どころではない。この世界が亡ぶ。。。と
『あの魔術師は本物の天才だった。魔物化の先に何があるのか、まだ誰も気付く以前から、冷徹に正確に予測していた』
このまま、世界が冷えきって、すべて取り返しがつかなくなる前に、竜たちが動き出すと。そうなれば、再び、文明が一つ消え去る。
『俺にはそれを否定する知識も、やり直す力もなかった。。。。だから決断したんだ』
戦争によって呼び出された大量の精霊と、今まで蓄積された精霊を一気に消費させる大魔法。その術を完成させるための戦争を。
世界魔法 事象の地平
この魔法は、精霊の消費と排斥を同時に行う。
中にいる精霊を消費し自らを構成すると同時に、外からの精霊をこれ以上この世界に入れないよう排除する。
それにより、危機は一旦避けられたかのようだった。
だが、これも時間稼ぎに過ぎない。
なぜなら、精霊の排斥は完璧ではなく、少しずつ世界が精霊を受け入れたからだ。
『これには、俺たち転生者も無関係ではないんだ』
王はその理由を教えてくれた。
『別の世界から精霊というエネルギーがやってくる理由がわかるか?』
「。。。いいや」
通常であれば、世界を渡り歩くエネルギーなど存在しない。
『転生者がこの世界にやってくるときに、精霊の通り道を作っているからさ』
「。。。」
転生者は本来ならば精霊界に生まれ変わるはずが、そこからはじき出されこの世界にやってくる。
その時に、エネルギーの通り道である因果の線が繋がれる。
これは、この魔法でも塞ぐことのできない道として残る。
そのため、微量ではあるが精霊がこの世界に入り込むことが出来た。
この世界にいる人々の、ほんの些細な願いを叶えるために、精霊がその道を通りやってくる。
たとえ、小さな力であっても精霊が入り込むことには違いはない。
ダネフの計算ではそれが限界を迎えるまでに千年。
その間に解決策を見つけるはずだった。
『まだ、方法は見つかってないんだな』
「ああ、それ以前に伝承が失伝している可能性があるかもな」
魔術師の間に何かがあったのか?
功績の偉大さに比べ、後の歴史にダネフの名前が上がらないのは、あまりにも不自然だ。
『そうか。。。ならお前達に賭けるしかないようだな』
「ちょ、ちょっと待ってくれ。そんな、世界の危機とか言われても、俺はそんなものを背負う余裕はないぞ」
『なら、なぜここに来たんだ?』
「坊主。。。俺と体を共有している子供がいる。この子の未来を知るためだ」
俺はここに来た本当の理由を話した。
『。。。一つの体に二つの魂か。さっきの子か?』
「ああ、そうだ」
『なら、すまんが、力になれない。俺はここに生まれ落ちてから、ずっと一人だったからな。お前が特殊すぎるんだよ』
すっぱりと言われた。
「。。。そうか」
『その子とお前が今後どうなるかは分からんが、ハッキリとこれだけは言える。このまま世界を放置していたら、そう遠くない未来に、お前たちは確実に死ぬということだ』
「。。。」
『すべての人々が同じ未来に向かうだろう。そして、それを変えられる可能性があるのが、お前だ』
王はそう宣告した。




