四大聖竜
アインは目の前の大きな扉を開けた。
中は通路になっていて長い廊下が続いている。
「よいしょっと」
倒れこんでいる4人を扉の向こうに運び込んだ。
そして扉を閉めると、体を守っていた赤く丸い結界が消える。
不思議なことに扉一つ隔てただけなのに、先ほどいた場所ほどの熱は無く、むしろ涼しく感じた。
神殿のように静かな空間でほっと一息入れる。
「う、うう」
カイルが気が付いた。
「ここは。。。」
「あ、気が付いたんだ。よかった」
他の皆も一人、また一人と意識を取り戻す。
「なんか、記憶が飛んでるな。アイン、何があったんだ?」
「覚えてないの?」
「ええ、何か衝撃を受けた気がしたんですが気を失ってしまって。。。」
ミリーもその時のことを覚えていないようだ。
「カイルが倒れて。。。えーと」
「。。。」
リタも記憶が無く、いつもやかましいアイシャはずっと黙っている。
「皆、それ以上は思い出そうとせんことじゃ。これ以上はためにならん」
ナージャが、そう釘を刺し、一旦この話は無かったことにする。
「小僧、こっちへ」
皆が装備の点検や軽い食事を取る事になって、アインは老婆に呼ばれた。
柱の陰に連れ込まれ、あの後何が起こったか報告を求められる。
「それで、わしが気を失ってからどうなった」
「うん、あの竜と話した」
「会話をしたのか?!あれと。。。」
「一言二言だけどね。それで王の場所を教えてもらって、ここに連れてきてもらったんだ」
「なんと。。。」
老婆は言葉にならず驚き続けている。
「ねえ、あれは何だったの?」
アインは根本的なことが分からず問い質す。
尋常な存在では無いことは理解できるが、なぜ、ナージャがそれほどまで驚くのか。
「お主は四大聖竜の話を聞いたことが無いようじゃな」
「四大聖竜?」
「そうじゃな。では、話して聞かせよう」
それは、この世界の始まりの物語だった。
この世界の成り立ちは、本当のところはだれも知らない。
だが、今の文明以前にも、高度な文明が存在していたことが研究で分かっている。
その痕跡はいくつもあり、文明が滅んでは繁栄するのを繰り返して来たのだという。
「四大聖竜は、この世界を管理する存在と言われておる」
伝説では天空竜 、星炎竜、 滄海竜 、大陸竜 の四柱が存在すると言われてきた。
その役割はこうだ。
天空竜は世界の果てまで見通す目で世の乱れを監視し、星炎竜はその炎で世界に終焉をもたらす。
滄海竜は全ての穢れを洗い流し、大陸竜 が命を芽吹かせ世界を再生する。
これらの竜が破壊と再生を繰り返すことで、この世界は成り立っていると。
「わしもこの目で見るまでは、ただのおとぎ話と思うておった。。。だが実際に見ることになるとはのお。。。」
「。。。あの、星炎竜さん、王様のこと知っている風だった。。。」
「どこまでも、掴みどころのない男じゃったんだな。。。」
その王と、これから会うことになるのか。
カイルが、呼びに来た。
「おぉい。そろそろ出発するから食事を取ってくれ」
ナージャと戻り、携帯食料を食べて腹を満たすと、歩き出す元気が出てきた。
「ねぇ。あんたどこまで覚えてるのよ」
アイシャが、こっそり聞いて来た。
どうやら、僅かに記憶があるらしい。
「ん-アイシャが暴走しかけたことくらいかな」
アインが意地悪くからかう。
「ぐぅ」
アイシャはぐうの音も出ないような顔で睨むが、アインはしれっと流した。
長い廊下を進む。
途中で枝分かれしている道があり、アイシャたちはそこから来るはずだったという。
その道を確認したところ途中で回廊が崩れ、道がふさがっていた。
「帰りに修繕しておくのが良いじゃろうな。あちらの道は封印しよう」
かつての土穴族が、あの迷宮を作った理由がよくわかった。
星炎竜の寝床を偶然発見し、慌てて塞いだのだろう。
大いなる者の眠りを妨げないように厳重なトラップまで仕掛けて。
アイン達は長い廊下を歩きその部屋の前で立ち止まる。
ここはかつての宝物庫であり、託宣の間とも呼ばれる部屋だとアイシャが言う。
ここで、王の言葉を聞くことが王候補の最初の役目らしい。
だが、今まで一度もその声を聞いたものは無く、儀式的な要素が強かった。
本当に王と話が出来るのか疑わしい。
しかし、そこに王の愛剣があり、それは王の魂が宿ると言われてきた事は事実だ。
どんな結果になろうと、そこに希望を見出すしかない。
俺と、坊主のこれからを占うために必要なことだ。
この旅の目的地にようやくたどり着いた。
少年はここで、この世界の存亡と自らの使命を知ることになる。




