劣勢
俺は現在の状況を考えて、戦いを組み立てる。
(とにかく、この場を離れないとカイル達を巻き込んでしまう)
この場では戦うことが出来ない。部屋の奥へと移動するため、目にもとまらぬ速さで移動する。
カカッ!
蹴り脚が床を砕き疾走音が反響する。
異邦なる機械の目は性格に俺を追いかける。
ヴゥン
羽虫のような音を響かせ、黒い鎧の体が浮き上がる。
高速で移動する俺を追尾するように移動し始める。
瞬時に先回りし、行く手を阻む。
「っ!」
あの図体で俺より早く動けることに驚嘆した。
剣を片手に立ちふさがる鎧を前に、細かく方向を変え斬撃の届かない範囲に避ける。
ブン!
斬撃が突風を起こすが、それが届く前に俺の体は移動している。
「いい子だから、ついてこいよ」
移動の最中も、あの爆発する光線は俺を狙い続けていた。
どどどどどどぉぉぉ!
「ひぃぃ」
脚を止めれば爆発に巻き込まれる。
俺は全速力で逃げ回った。
何度目かの方向転換の結果、なんとか戦場を変えることができた。
この部屋の空間が出鱈目に広かったことも幸いした。
移動を止め、黒い鎧と対峙する。
異邦なる機械も、それまでの大味な攻撃を止めて様子を見ている。
「さぁて、ここからが本番だ」
(勝算はあるの?)
「正直、五分五分ってとこだな」
(信じてるよ)
坊主の信頼が力になる。
ズン!
先に仕掛けたのは古代兵器の方だった。
踏み込むと同時に、剣を唐竹割りの様に振る。
間合いはまだ遠く見えるが、それにより起こる突風も計算に入れての一撃だ。
俺はその斬撃を大きく避けることになる。
右か左か、次に向かう先には。。。あの光線が待ち構えている。
それを察して、あえて俺は巨大な剣に向かって突進した。
狙いは打ち終わりの手元。
滑り込むように柄の真下に移動し、下から上へ翠脚鞭を打ち込んだ。
ぎゃりぎゃりぎゃり
真っすぐに振り下ろされた剣の柄に命中し、剣を持つ手が離れ巨大な剣が空に舞った。
そして、弧を描くように床に刺さる。
獲物を失った鎧は動じるはずもなく、即座に光線を放つ。
どっ!
俺は、翠脚鞭の反動を利用し駒のように回転しながら危険区域から逃れた。
俺たちの勝利条件は一つ。
あの鎧に触れて操者と入れ替わることだ。
そのためには、中間距離の攻撃手段を奪い、接触距離に持っていく必要があった。
この展開はまさに理想的と言えた。
「よしっ!」
早速、高速移動で鎧に近づく。
爆発する光線を避けながら、鎧に触れようとした。。。が。
そこには不可視の壁があった。
触れた部分から一瞬、様々な文様の描かれた結界が見えた。
全体が、赤い球形の障壁に包まれている。
俺はその結界に弾かれるように外に飛ばされた。
「やっぱり、あったか。そう簡単にはいかないな」
触れた手が燃えるように熱い。
おそらく炎の結界、ドール:イグナ・ヴァルカの加護だろう。
だが、それによって俺は確信を得た。
「チャンスは一度だけだな。。。」
(何をするの?)
「まあ、見てろって」
そう言うのも束の間。鎧が距離を詰めてきた。
そして俺はその鎧が手に剣を持っていることに気づいた。
「えぇぇぇ?!さっき、吹っ飛ばしたはずじゃ」
そう思い、剣が刺さっていた場所を横目でちらりと見る。
そこにあった剣は無くなっていた。
「いつの間に。。。小器用なことしやがって」
ミリーとリタが何時だったか話していたことを思い出した。
召喚魔法の応用で、自分の武器を呼び出すことが出来ると。
まさか、機械がそんな真似をするとは考えていなかった。
振出しに戻ったと感じた俺は、懐に飛び込むことが出来ずに逃げ回った。
古代兵器が剣を構えると刀身が割れて稲妻が走る。
黒い鎧が稲妻を纏った剣を俺たちに向けて振るった。
ばり、どがぁぁぁあああああああん!
雷撃がすぐ近くで炸裂する。
それは、俺の足を止めるには十分な威力だった。
「しまっ。。!」
それを見越してか、今度は黒い鎧が距離を詰めた。
剣が少年の体に届く。
巨大な剣が俺の体を横薙ぎに斬り払った。




