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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
二章 魔族領編 王の資質

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深淵

全員が散開した。


ナージャは所定の位置につき、魔術の準備を行うため、その場に魔方陣を描き始めた。


他の者は轟土竜ガイアドラコを探し山を走り回った。

魔法の発動は一度きり。

その一度で魔物を一網打尽にする。

そのためにも、魔物の数を正確に把握し誘導する必要がある。


ナージャがつなげた思念パスで念話を使い全員が報告を上げる。


リタ(こっちに3匹、いや4匹発見)

カイル(こっちは3匹だ)

ミリー(2匹いました)

アイン(5匹いたよ)


(よし、こちらの準備は整った。作戦開始じゃ)

ナージャの掛け声で一斉に動き出した。

轟土竜の性質を利用して誘導する。


ナージャはやつらが、破壊出来るものに執着することに気づいた。

最初に放った石の壁を、執拗に破壊していた習性から思いついた作戦だ。


魔術の使えないカイルとリタに石の宝珠を渡し、あらかじめ術を発動しておく。

最後の言葉を発するだけでその場に石の壁が現れる。


轟土竜の群れを石の壁で誘導し、合流地点を目指す。


皆の誘導が功を奏し、すべての轟土竜が一か所に集まった。


奈落アビス!」


ナージャが力ある言葉を発し、魔法が完成した。


虚空に黒い穴がぽっかりと開く。

どの方向からも穴にしか見えない。

それは黒い深淵を覗かせすべてのものを吸い込んだ。


その魔法は、転送門の研究の際に偶然発見された。

そしてそれを発動した術者もろとも、村一つを吸い込みその村はこの世界から消えた。

駆け付けた大魔術師数人がかりで、魔法の被害を抑えることしかできなかった。

一度発動すると術者が死に絶えるまで、すべてを吸い込む禁忌の魔法と言われている。


すぉぉぉぉぉ


周辺の空気や土砂、あらゆるものをその穴が吸い込んだ。

そこに集まっていた、轟土竜もろとも。


ナージャの額に汗が玉となって浮かぶ。

かつて大魔術師と呼ばれた彼女であっても、この魔法の制御は困難なようだ。

最後の一匹が穴に飲み込まれた直後、術の発動を中断した。


幽体離脱ソウル・イジェクト


身体機能を一時的に止める効果のある魔法を発動した。

穴はそこになく、周囲の土砂が吸い込まれた跡が残った。


「ぶはぁぁ」

ミリーが抱き支えていた老婆が急に息を吹き返した。


「ろ、老体に。。。は、堪えるわ。。。い」

「師匠しっかり」

「後は任せたぞ、わしは。。。寝る」

弟子にすべてを任せて、老婆は寝息を立てていた。


再び、召喚門が輝きだし光に包まれた。

強力な戦力を失い、若者だけで次の試練を乗り越えることになった。


。。。


今度の部屋は荒涼とした山だ。

「ミリー、ここって。。。」

「気が付きましたか。。。」


ミリーとリタは見覚えのある景色に既視感を覚える。


温泉街があった活火山にそっくりだ。

近くに魔物の姿はなく、おそらくこちらから手を出さなければ襲ってくることはなさそうだ。


「すこし、休もう」

すでに昼を過ぎている時間だ。

体力を回復してから探索に移ることにした。


「この先に何があるんだろう」

「ん-、そうだな。これだけ厳重に侵入者を排除しようというんだから、目的はあるんだろうが。。。」

「すごい、お宝とか?」

少年は目を輝かせて期待する。


「そういう感じじゃないんだよな」

カイルは冒険者としての経験から違和感を感じていた。


なにかの報奨を得るための資格を試すなら、これほど厳重なトラップは必要ない。

召喚門によって召喚された魔物はどれも最強クラスで、そんなものを用意する製作者側のリスクも相当なものだ。

まるで、ここから先は絶対に通ることは許さないという強い意図を感じる。

この連戦は、体力と気力を奪うと同時に心を折るには十分すぎる。


自分たちの進む道が本当に正しいのか、ここを進む事を後悔する時が来るのではないかと皆思い始めていた。


「どう転んでも、ここに踏み込んだ以上前に進むしかないんだ。今は生き残って帰ることを考えよう」

カイルの言葉に全員がうなずいた。


食事も終えて、軽く仮眠もとれた。

相変わらず老婆は眠ったままだ。

万全とは言えないが、戦いに備えることはできた。


「進むぞ」

リタを先頭に老婆を背負ったカイルが続く。

その後にアインとミリーがついていく。


山道を進むうちに、何かが焦げたような据えたにおいがし始めた。

「ここで待ってて」

リタがレンジャーの隠形スキルを使い、斥候として先に向かう。


しばらくすると、青い顔をしたリタが戻ってきた。

「最悪」


「。。。なにが居たんだ?」

獄炎竜インフェルノドラコ

竜種の中で、最も獰猛で最も強いとされる竜だ。


カイルが天を仰いで嘆いた。

「。。。この流れだから予想はしてたが。。。」

「たしか、最後に噂になったのって20年くらい前だって話よね」


実際には、獄炎竜に戦いを挑んで勝てたという話は聞かない。

そいつに会ったら、死を覚悟しろと冒険者の間には質の悪い冗談もある。


ナージャを欠いた状態で挑むにはリスクが高すぎる。

「こっちに向かってきそうか?」

「いや、気づかれていないはずだよ」


まずは作戦を皆で考えることになった。


。。。


紅い鱗を持つ竜は、すでに小さきものが近くにいることに気が付いていた。

不遜にも戦いを挑もうと考えているのならば、焼き殺してくれようと。

長く生きたその竜は思考を持ち、戦いを楽しむということを知っていた。

戦いによる弱者の絶望を目にすることに、退屈を紛らわす愉悦を覚えた。

(我を楽しませてくれよ。愚かなものどもよ)

その竜は戦いの時を待ち、これから戦う者たちの死に抗う様を想像してほくそ笑んでいた。


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