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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
18/80

第二章 検索と実験と再会 8



    8



―それは、理不尽な目にオレは遭っているということじゃあないか! いや、理不尽を大きく通り越して不条理じゃあないか!

だが洋二は同時に、この数日間のフシギや矛盾が全部解かれたことも認識した。


飯田安奈に刺され、直後に落下したのに無事だったこと。

その後に直ぐ、立ち直り、逆襲できたこと。

その折に実行し、その後も何度かできた跳躍力を始めとする妙な身体能力。

なにより、ネット世界にまさに入り込めて、何でも直ぐに情報を集められ、逆に情報を改竄して、自分の恣意で操る能力。


それらに信夫と母親が訝しく思ったあの奇怪な反応もようやく理解できた。

現実世界の自分は自分にそっくりだが、自分ではないのだ。

自分はその自分そっくりな等身大1/1ロボットの運転を脳内でしているに過ぎないのだ。

それらの〈気付き〉は洋二には許容し難いことどもであった。

彼は認識したくなかったが、彼の頬にひとすじの涙が流れたことは事実であった。

そしてその頬の方が本当の自分であるのだ。

だが洋二はその頬を拭わなかった。

拭ってしまえば、その情けない己を認めてしまうことになるからだ。

代わり、彼は入力する。

『私はここで死を待つだけなのか』

【いや、ここにいる限りは生き続けることができる。何年でも、何十年でも。ここでは時が止まっているのではなく、恐ろしくゆっくり流れているだけなのだから。木曜から日曜の現実世界に比べ、この空間では10分も経っていないのだ】

『この複製生体は無機物ではできていないのは判る。有機ロボット、がいちばん近いのだろう。だがそれにしても脳内のこの私が死んだら、オーバーテクノロジーで出来た有機ロボットだということがバレるだろう』

【脳内にいるあなたの脳波を感じなくなり、死を確認したら、きみが言う有機ロボットという外側は溶解するようになっている】

『逆はそうなるのか?』

【質問の意図が理解できない】

『有機ロボットが何らかにより破壊され、脳内のこの私が外に放り出されたら、私は元の大きさに戻るのか?』

【password please】

―自力で外に出たら、死ぬ可能性が高い、というか、死ぬんだな。

『一度なんらかの措置で私を縮小化しただけでなく、恒常的に小さいサイズを保つために、この空間にはエーテルのようなもので満たす必要があるのではないか。いや、実際に満たされている』

【password please】

『では、次に私のこの刃物傷によるケガと骨折は治療可能なのか?これはクレゼンサ、あなた方のテクノロジーとは関係ない、現在科学レベルの見立てだ、答えられないハズがない』

【治療可能だ。だがこの空間にはそれを為す装備と技術がない】

洋二は深呼吸ができた。

―無理矢理この脳内から出て、だが、その時の場所はウデのいい外科医がいる場所で、緊急手術をしてもらえば、大丈夫ということだろうか。だが、実際の大きさに戻る確証はないし、第一、そんな名医がいる状況をどうやって作り出すのか。

―いや、そもそもこの空間内から出た瞬間に間違いなく死ぬ。ネット内であれだけムチャな力を奮えるのに、こういった〈同類〉の存在を今までネットも報道も公にしていないということは、その能力の抑止力になっているんじゃあないか。

―つまり能力の悪用すれば、毒をこの空間に注入されるか、エーテル(らしきものの)濃度を上げるかして殺される。そんな直接的な方法でなくとも、いかにネット内で神の如く振舞ってもじしんの身体は取り戻せない、ということじゃあないか。

洋二はその疑心暗鬼こそが、抑止力になっていると思いついた。

いちばん凡庸な落としどころだが、〈様子を見る〉しか現在の自分にはできないと判断したのだった。

『インターネットを自由にアクセスする権利はこの複製生体を使って行うことは許されるのか」

【当然許される。そうでないとこの機能はついていない】

『俗に云う悪用してもいいのか』

【質問の意図がよく判りません】

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