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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
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第二章 検索と実験と再会 7



    7



『飯田安奈という女性に刃物で刺され、落下した私を助けてくれたのはあなたか?』

洋二には尋ねたいことがヤマほどあったが、未知なるものとのコミュニケーション、これでも最初の質疑は丹念に選んだ。

【そうだ。私たちが助けた】

直ぐにその答えは空間に浮かぶディスプレイに出された。

『まずはそのことに感謝する。ありがとう。私たちということは、複数名の団体とか組織なのか?』

【複数の人格である】

やはり早い。まずは相手の正体が知りたい。まずはそこからだ。

『他の天体から来られた、何らかの存在なのか?』

【password please】

『この地球上の何らかの政治・宗教・経済等に関係した団体とか組織なのか?』

【password please】

『地球の内外問わず、未来から来た存在か?』

【password please】

『異次元空間や平行世界、俗に云うパラレルワールドから来た存在か?』

【password please】

どうやら、洋二を助けた存在は自分らに関する情報を伝える気は無さそうだ。

―知りたいことは未だある。当面はこのものの正体は保留しよう。このもの、とは言い辛い。先の正体の可能性のどれかか、それでもない五番目の可能性もある。

そこで洋二は、〈シンクエ・クレゼンサ〉と名付けることにした。

イタリー語で〈五番目の存在〉という意味である。

『シンクエ・クレゼンサとあなた方を呼びたい。いいか?』

【かまわない、許可します】

『では、クレゼンサ、この〈29〉という表記は何を表しているか?』

【password please】

『私以外の〈同類〉を表しているのではないか?』

【password please】

『何を持って〈同類〉に仕立てようと決まるのか? 私のように、他人から危害を加えられて、死にそうな状態にいたものなのか?』

【いや、他人からの危害には限らない。事故の場合でもその範疇に入る。但し病死は入らない】

洋二は今、この未知のAIを裏をかいていたのだ。

自分以外にも〈同類〉いると認めさせたのだ。

そして、

―他に自分と同じ状態になった〈同類〉がいることが判明した。慈善事業めいた活動をしているとすると、善良な存在である可能性も高い。

そう考えて、死の第四の可能性を思い至った。

『自殺の場合はどうなのか?』

【password please】

―自殺者は助けられても再度実施するだけ、ということだろうか。

他人のことばかりを聴いている滑稽さにようやく洋二は気づいた。

『私のこの傷はどれくらいで全快するのか?腹部の殺傷と足の打撲の完治のことだ』

【判らない。治らないかもしれない】

―!

キーボードを弾く指が早くなる。

『この空間とベットは何らかの医療設備ではないのか』

【そうとも言える。だがこの部屋での時間の進み方は恐ろしく遅い。それで死を先延ばしにしている】

『私を助けたあの状況では、逆にものすごく早いスピードでこの部屋に収容したというワケか』

【時間を止めたり、遡行することはできない。どんなにテクノロジーが進化してもそれらは不可能なんだ。そんな技術が未来に存在するとしたら、現在や過去は存在しなくなるからだ】

『あの数秒の合間にクレゼンサ、きみは私に何をしたのか』

その質問にようやく洋二は辿り着いた。

【まずあなたを察知した】

―それでは自分は最初から、こんな〈超存在〉に見張られていワケではなかった、ということになる。

【アーキタイプをベースとしてあなたの複製生体を作成した】

―死に瀕したニンゲン用にアーキタイプが揃えられているようだ。

【あなたの全細胞を小型化した。だから細胞数は同じだ】

―小型化?

『小型化?今の私が小さくなっているのか?』

【そう言える。体長4㎝程だ】

―!

『ちょっと待ってくれよ、それはどういうことだ』

―それはどういうことだ! というより、ここはどこなんだ!

洋二としては、宇宙人の母艦かなんかに収容され、仮想現実の社会に放り込まれたようなことをなんとなく想像していた。

更に、複製生体の可能性のことも考えていたのだが、それも宇宙人の母艦から遠隔操作するようなヴィジョンとしてしか想定していなかった。

【今あなたはあなたソックリな複製生体の脳内に4㎝程に小型化され、安置されているのだ】

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